旭川医大・吉田学長の〝醜聞〟が一気に噴出
首都圏が新型コロナウイルスの猛威にさらされるより一足早く、北海道で新型コロナによる「医療崩壊」が起きていた事を知る人は多いだろう。ついには陸上自衛隊に支援を要請し、看護師らが災害派遣されたニュースは大々的に報じられた。冬が長い北海道では寒くなるのが首都圏より早く、流行が早めに来た可能性はある。
しかし、この災害が「人災」であると指摘する声も後を絶たず、ついにはその元凶とされる人物の暴言が〝文春砲〟され、国が調査に乗り出す事態になってしまったのである。
「北海道は昨年の第1波でも繁華街を抱える札幌等で感染が拡大し、鈴木直道知事は2月に道独自の緊急事態宣言を出し感染を収束に向かわせる等、その手腕を評価する声は高かった」と霞が関の官僚は振り返る。
菅政権とも近く、小池百合子都知事のように国と自治体のさや当てに走る事もない鈴木知事だけに、第3波の対応にも期待する声は大きかったが、うまくいかなかったのである。
地元病院理事長が文章で批判
その第3波の最も深刻な現場となったのは、知事がいる札幌から130㌔離れた旭川だ。昨年11月初旬、旭川市の慶友会吉田病院でクラスターが発生したのだ。「吉田病院に入院していたのは高齢で寝たきりの患者が多かった。重症化が懸念される事から、感染患者の受け入れを周辺の病院に依頼したが、これがうまくいかなかった」(医療担当記者)。
吉田病院に続いて他の医療機関や施設でもクラスターが発生する事態となり、旭川は一気に医療崩壊の状態に。そして自衛隊に派遣を要請するに至ったのだが、その裏で巻き起こっていたのが旭川の基幹病院の中でもトップに君臨する旭川医科大学病院への批判だった。
「12月1日、吉田病院のホームページに、吉田良子理事長の名前で痛烈な文章が掲載された(現在は削除)。クラスターが起きてからの関係機関の対応に疑問を呈する内容だったが、驚いたのは旭川市保健所、旭川市役所とともに旭川医大病院をやり玉に挙げていた事」(同)。
保健所に対しては転院調整が遅れた事、市役所に対しては自衛隊派遣要請を市長が却下した事を批判。旭川医大病院に対しては患者の受け入れを拒否した事やクラスターが発生したと同時に派遣医師を一斉に引き上げた事等を批判したのである。
「大学病院が派遣先から医師を引き上げる事例は、第1波の時にも首都圏で確認されていた。吉田病院の悔しい気持ちは分かるが、これだけの文書を公表するのはよほどの事だと、医師の間でも話題になっていた」と関西の整形外科医は驚く。
患者の受け入れ拒否についても「旭川医大病院は重症者を受け入れる事になっており、吉田病院の患者は中等症だったため断ったという説明だった。一応理屈は立つし、この問題は終わるかと思ったのだが……」(前出の記者)。
だが、問題は終わらなかった。吉田病院の〝告発〟を皮切りに、旭川医大病院に対する、というより旭川医大の吉田晃敏学長に対する不満の声が一気に噴出したのだ。
吉田学長は全国の医大でも異例の長さである14年に渡って学長を務める実力者。同大の1期生で、2007年に卒業生として初の学長になった。医大病院のトップは病院長だが、学長が病院長を任命するため、学長に権力が集中する構造だ。
「学長と病院長の関係等大学のガバナンスについては、塩崎恭久氏が厚労大臣時代、東京女子医大病院の問題を受けて改革をしようと手を付けたが、大学の自治の前にうまくいかなかった」と業界紙の記者は語る。
文春砲が学長の問題言動を報道
昨年12月中旬、吉田病院の患者受け入れ拒否を主導したのが〝権力者〟である吉田学長だという事を『週刊文春』が暴露した。
吉田学長の音声もネットで公開され、「コロナを完全になくすためには、あの病院が完全になくなるしかない」「吉田病院があるという事自体がぐじゅぐじゅ、ぐじゅぐじゅとコロナをまき散らして」等と吉田病院に対する敵意むき出しの発言が明らかになった。
「吉田病院は慶友会の名前からも分かる通り、慶應大出身の吉田威医師が1981年に設立した旭川の基幹病院の1つ。吉田医師が逝去後、妻の良子氏が理事長となっている。旭川医大病院から医師の派遣を受けており同大との繋がりは強いが、旭川医大出身の吉田学長からすれば〝外様〟の意識があるのかもしれない」と道内の医療関係者は推察する。
だが、そもそも吉田病院の患者受け入れは、厚生労働省のクラスター対策班や基幹5病院の病院長が集まって行われた話し合いで割り振りが決められたものだ。
旭川医大病院では患者1人を受け入れるという事になったが、古川博之病院長がそれを報告したところ、吉田学長が受け入れを拒否したのだ。
「〝文春砲〟は吉田病院の受け入れ拒否の際に古川病院長に対して『患者を入院させるなら、病院長をやめてください』と言い放った事も伝え、この発言については文部科学省が事実関係を確認する等、国の調査が行われる事になった」(全国紙記者)。吉田病院に対する「コロナをまき散らす」等の発言についても、同大は「音声の切り取られ方が吉田学長の意図とかけ離れたもの」等とするコメントを出して反論したが、後の祭り。
週刊文春は吉田学長が以前からパワハラの常習であった事、明らかに泥酔状態で学内の説明会に出席していた事も伝えた。
「この時の音声では、吉田学長が『にっくきNEC』と発言した後に、『あ、NTTだ』と言い間違えを訂正し、再び『にっくきNEC』と間違えている。旭川医大は電子カルテシステムの納入を巡りNTT東日本と法廷闘争となり、17年に札幌高等裁判所で逆転敗訴した経緯がある。その相手を間違えるなんて、さすがにしらふではないと思いたい」と同病院の関係者は嘆息をつく。
文春砲の数日後には、旭川医大病院が、母親がクラスターの発生している病院に勤める子どもの検診を断ったのは不当だとして、子どもの父親が吉田学長を相手取り損害賠償を求める訴えを旭川簡易裁判所に起こした事も明らかになった。母親は濃厚接触者ではなく、PCR検査でも陰性だったが、それを話しても受け入れてもらえなかったという。
「音声データが流出するという事は、明らかに同大関係者からのリークがあったという事。吉田病院のクラスターも収束し、ようやく地域医療の危機は一段落したところなのに、旭川医大内部のごたごたで再び注目されることになるとは……」と厚労省関係者も呆れ返る吉田学長問題。新型コロナウイルスは収束しても、醜聞の方は未だに収束の気配がない。
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