昨年船出した菅政権にあって内閣府副大臣を務める事になった三ッ林裕巳・衆議院議員。「日本の医療の未来を考える会」の国会議員団として、本誌にはたびたび登場していただいている。今回は内閣府副大臣として担当する事になったという日本学術会議の任命問題、北朝鮮による拉致問題、少子化対策、地方創生等について、どう取り組んでいくのか伺った。また、政府のコロナ対策についても話を聞いた。
——内閣府副大臣として、どのような仕事に取り組んでいるのでしょうか。
三ッ林 昨年の9月18日に菅義偉総理から内閣府副大臣に指名され、皇居で任命式があったのですが、総理からいただいた担務が40ほどあります。主なものを挙げると、まず北朝鮮による拉致問題。これは菅総理と加藤勝信官房長官と私という体制で進めていく事になります。それから日本学術会議の問題も、任命責任のところは、菅総理と加藤官房長官と私がやります。内閣委員会で官房長官が出られない時には、私が答弁する事になっています。日本学術会議を今後どうしていくかについては、井上信治科学技術政策担当大臣が担当し、任命問題に加えて私がサポートしていますが、国会での答弁の機会が多かったのは任命問題の方です。それと、健康医療戦略、科学技術・イノベーション。私が医師という事もあって、そういったところを担当する事になりました。内閣官房に健康・医療戦略室がありますが、井上大臣の下、室長を務めているのが和泉洋人総理補佐官で、私が担当の副大臣です。それから地方創生も担務の1つです。坂本哲志地方創生担当大臣の下で仕事をする事になります。直近の大きな施策としては、3次補正で決まった1.5兆円の地方創生臨時交付金があります。感染症対策として使い勝手の良い交付金と言われていますが、その担当になります。あとは少子化対策。これも坂本大臣がトップで、私が副大臣を務めています。少子化対策には不妊治療もありますし、待機児童対策等もやらなくてはいけません。子ども・子育て支援も担当です。
——担当する仕事が40というのは大変ですね。
三ッ林 40の担務と言っても、仕事を手伝ってくれる役所の人もいるわけです。また、1つ1つを丁寧に確認しながらやっていきたいと思います。今日は、PKOで南スーダンに派遣する自衛隊員の出発式という仕事がありました。自衛隊の派遣ではありますが、PKOについては防衛省ではなく内閣府が担当しているので、私が派遣される自衛隊員の思いを大切に激励をさせていただきました。現在、議員会館の事務所に秘書がいますが、内閣府の方にも担当の秘書官がいます。スケジュール管理をする方もいて、そこで調整してもらっています。集中出版主催の『日本の医療の未来を考える会』は毎月行こうと思っているのですが、先月は残念ながら調整が付きませんでした。
日本学術会議の任命問題
——担当されている仕事に関して詳しく伺います。日本学術会議の任命問題についてはどう考えていますか。
三ッ林 日本学術会議の会員は公務員なので総理に任命する権限がある。これは当然と言えば当然ですね。ただ、過去において、日本学術会議が推薦した人がそのまま任命されるという事が踏襲されてきたので、それが当然のように日本学術会議の方では受け止めていた、という事でしょう。ただ、そこは特別国家公務員という役職ですから、憲法15条第1項に基づく選定罷免権は国民にあり、国民の代表である総理大臣は推薦の通りに任命しなければならないというわけではありません。もちろん、任命の考え方については要請があれば丁寧に説明をしなければならないと思います。一方、何故はずしたのかという事については、国民の皆様から見て歯切れが悪いという印象を与えてしまった面もあるのかもしれませんが、人事なので公にするものではないという事です。
——欠員はどうなるのですか。任命されなかった6人が今後任命されるような事は?
三ッ林 日本学術会議が時間を置いて、新たな推薦リストを出されるかどうかでしょう。誰を推薦するかは日本学術会議で決める事です。
——この問題は今後どうなっていくのでしょう?
三ッ林 井上大臣と日本学術会議が、未来志向で改革を進めていく事になっています。国民のためになる学術会議にしていこうという事です。それが大前提ですね。
——国民のためになる提言をしてほしい、と。
三ッ林 日本学術会議も国の行政機関でない方が、活動しやすいという一面もあるのではないでしょうか。いろいろな外国の例等も参考にして、改革していくのではないかと思います。私個人の意見としては、必ずしも国の行政機関である必要はないと思っていますし、国民のためになる質の高い提言を行うという観点で最適な組織形態を模索していくという事だと思っています。
日本の科学分野における問題点とは
——昨年はノーベル賞の授賞者が出ませんでしたが、日本の科学分野における問題点とは?
三ッ林 やはり研究環境の問題でしょう。自分でも研究に携わってきましたが、日本は研究を行うための体制が脆弱です。私が経験したのは医学分野で、他の分野のことは詳しくは知りませんが、医学分野に限れば、研究者が実験の準備から全てやらなければなりません。プレパレーションと言いますが、研究のための機材等も自分で揃える必要があるのです。動物実験をするために、私はラットの飼育までしていました。成長すると高血圧になる高血圧ラットを使っていたのですが、さすがに動物の飼育までするとなると、ものすごく時間を取られてしまいます。そのため、研究に集中出来ないのです。
——ご自身がそのような経験をされていたのですね。
三ッ林 昼間は大学病院に勤務し、夜から研究室に行って、夜中の2時3時まで、時には朝まで研究に取り組んでいました。若かった事もありますが、そんな研究生活でした。それに比べると、アメリカでもカナダでも、研究の環境が整っています。準備するためのスタッフがいて、研究者は肝心なところだけやればいいというスタイルです。日本でも研究環境を整えていくことが必要で、解決すべき問題だと思います。日本で研究活動を行っている方は、どなたもそう言うんじゃないですか。
——他の問題点は?
三ッ林 学術会議との関連で問題提起される事も多いのですが、デュアルユース(軍民両用)技術については軍事用の科学技術と民生用の科学技術に分けて考えるのではなく、国民のために科学技術をどう使うのかを考えてほしいですね。軍事に使うから一律に駄目だとか、そういった方向の考え方は後ろ向き過ぎると思います。それが優れた科学技術で、国民のためになるのであれば当然研究を進めていくべきですし、時代の変化に合わせて冷静に考えていかなければならない問題だと思います。
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