「ダイエット薬」の糖尿病治療薬で
トラブル急増
コロナ禍で在宅勤務増加による運動不足に、体形が気になる人も多いだろう。SNSで「食事制限や運動不要、薬で痩せられる」「オンラインで診療が受けられる」という広告を見たら、飛び付いても不思議はない。
しかし、国民生活センターは9月3日、ダイエット目的の美容医療として糖尿病治療薬が処方され、「副作用が出ても医師が対応しない」「薬についての説明が不十分で、解約や返金に応じない」といった相談が増加していると注意を呼び掛けた。
問題となっているのは、オンライン診療で未承認薬を処方する美容クリニックだ。複数の医療機関のホームページを見ると、国内で2型糖尿病の治療薬として使われる「GLP1受容体作動薬」をダイエット薬として処方。「食欲を自然に抑制する」「太りにくい体質を作る」等と謳い、来院不要と患者を募っていた。
オンラインで診療を受けた患者は、その後届く治療薬を自分で注射。自由診療のため料金は様々だが、数カ月間の治療として数十万円を設定しているところが多い。
実際にこの薬は「ダイエット薬」として効果があるのか。日本糖尿病学会は7月、健康障害リスクの高い肥満症患者に対する同薬の臨床実験が国内で行われているものの、結果は出ていないと発表。ダイエット目的での使用は、安全性や有効性が確認されていないとした。急性膵炎や腸閉塞等の副作用が起きる事もある。
国民生活センターの注意喚起を受け、日本美容外科学会等3団体は「患者を誤認させる恐れがあるビフォーアフター写真の使用や費用を強調する」等、医療広告ガイドラインで禁止されている広告がある事、薬の副作用の説明が不十分だったり急変時の対応方針を十分に情報提供しなかったりする等のオンライン診療ガイドラインに沿わない不適切な診療が行われていた事を問題視。こうした行為に断固反対すると共同声明を発表した。
「海外でダイエット薬として使われているといっても、代謝に異常がない日本の若い女性が使ってもたいした効果が得られるとは思えない」と都内の内科医。新型コロナ患者に必死に対応する医療者がいる一方で、コロナ禍で拡大するオンライン診療を使い、「楽して痩せられる」を口実に「楽して儲ける」医療者がいるとは皮肉なものだ。
日焼け止めは危険……
〝文春砲〟のエセ科学
「簡単に痩せられる」以外にも、ネットの医療情報には危ういものは多々ある。〝文春砲〟で知られる文春オンラインが7月に掲載した「日焼け止め」のリスクに警鐘を鳴らす記事もそうだ。
問題の記事は医療問題を取材するフリー記者が書いたもので、米国食品医薬品局(FDA)が「日焼け止め成分が予想以上に体内に吸収される」と発表した事を紹介。皮膚科クリニックの女性医師2人に、日焼け止めが危険であるという主旨の事を語らせている。
しかし、調べてみると2人は「自然派化粧品」を開発したり「ビタミンC点滴」を販売したりする〝本流〟の皮膚科医とは言い難い人物。紫外線が皮膚がんを増やす事は事実であり、予防には日焼け止めの使用が効果的である事は論を待たない。FDAも日焼け止めの効果を認めている。
ネットに溢れる医療情報に乗せられないようにしたい。
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