英国で実施されたランダム化比較試験(RCT)のうち、重症COVID-19に対するデキサメタゾン6mg(補充用量、プレドニゾロン40mg相当)の効果を検討した結果が公表された。薬のチェック誌91号1)で扱ったので、その概要を紹介する。
重症例には効果あり
この試験は、英国の175を超える国立病院が参加し、11,500人を超える患者が登録されて実施された。この試験の詳細が未査読論文として6月22日に公表されたので検討した。
デキサメタゾン6mgを経口または静脈注射で1日1回10日間使用するデキサメタゾン群2104人と、通常療法のみ(通常療法群:4321人)とに無作為に割り付けられた患者で、28日目までの死亡率が比較された。
28日までの死亡率は、侵襲的人工呼吸器装着患者では、通常療法群の41%に比べてデキサメタゾン群は29%と3分の1減少していた。
酸素吸入のみが必要な患者では、通常療法群25%に対して約2割減少の21.5%であった。
しかし、酸素吸入を要しない患者では、通常療法群13%に比してデキサメタゾン群は17%と、死亡率は2割程度増える傾向があった。
デキサメタゾン群と通常療法群の背景因子で違いがあったのは、年齢がデキサメタゾン群66.9歳、通常療法群65.8歳と、デキサメタゾン群で1歳高かった点くらいで、重症度や合併症の程度は同じであった。また、年齢で調整した死亡予後は、未調整時とほとんど差がなかったことも報告されている。
感染症患者に対するステロイドの評価
これまで、感染症に対するステロイドの使用による効果と害についてわかっていることは、以下のとおりである。
①ウイルス感染の初期では、ステロイド剤を早期に使用するほど死亡率を増やす(ヒト観察研究)。
②インフルエンザでは、重症化後に使用した場合でも死亡を増やす。
③敗血症性ショックに大量のステロイドを短期間用いるパルス療法は害がある。
④ステロイド剤を早期に使用するほど死亡の危険が大きいことが動物実験でも確認されている。
⑤副腎不全を起こした重症感染症患者には、補充量のステロイド剤が有効、軽症例には害がある。
⑥感染症へのステロイドが有効な理由は、サイトカイン・ストームを減らすためではなく、欠乏したステロイドの補充のためである。
今回のRECOVERY試験の人工呼吸器装着患者では、死亡の危険度が0.65と著しい改善効果を示している。これは、副腎不全「あり」群における死亡率改善効果とほぼ一致している。両者の結果を比較すると、COVID-19の重症例では、副腎不全を伴っていた例が多かった可能性が十分にありうる。
したがって、今回のCOVID-19に対するデキサメタゾン使用の結果は、これまでにわかっている事実と矛盾がなく、再現性のある結果と考えられ、信頼できる。
実地診療では
高流量の酸素吸入を要したり、人工呼吸器を要するような重症のCOVID-19は副腎不全に陥っている可能性があるため、補充用量のステロイド剤は有効だが、軽症例には逆に死亡率を増やす可能性があるため使用してはいけない。
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