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第145回 初診「一時解禁」では普及見込めないオンライン診療

第145回 初診「一時解禁」では普及見込めないオンライン診療

 新型コロナウイルスが猛威を振るう中、厚生労働省は通信回線を活用したオンライン診療を小出しに拡充している。「対面診療」を重視し、画面を通じた診療には後ろ向きだった同省も、「感染拡大防止」という大義には屈服せざるを得なかった。それでも、にわかな方針転換とあって、インフラ整備は進んでおらず、普及のメドは立っていない。

 「あくまでも、コロナが収束するまでだから」。今回の規制緩和について厚労省幹部は「臨時的・特例的な取り扱い」である点を強調する。

 コロナ以前は、対象を生活習慣病等に限った上、6カ月以上(4月以降、3カ月に短縮)同じ医師による対面診療を受けてきた人のみ、オンライン診療に保険適用してきた。しかし、新型コロナ禍が大きくなるにつれ、通院先での感染を懸念する声が高まった。

 ウイルスの脅威には逆らえず、厚労省はまず2月28日に、従来と同じ慢性疾患治療薬をオンライン診療で処方する事を認めた。ただ、「それでは意味がない」との声に押され、3月19日にはこれまで処方していない慢性疾患治療薬もオンラインで処方してよいと通知した。処方箋は医療機関が薬局に送信する。

 そして4月に入ると、厚生労働省は新型コロナ禍が収束するまでの間、オンライン診療を初診から認める方針を受け入れた。現在、初診は対面が原則で、同省は最後まで「受診歴など記録がある事」にこだわったが、患者の集中による医療崩壊を防ぐ手立てとして方針転換を迫られた。

 厚労省や日本医師会は「症状などを見落としかねない」として、オンライン診療には一貫して慎重だった。だが、ICT(情報通信技術)の発達とともに、経済界等は「利便性」を理由に解禁を迫ってきた。そして2018年度、生活習慣病等に限って、オンライン診療の保険適用に踏み切った。

 それでも昨年11月公表の厚労省調査によると、新設の診療報酬「オンライン診療料」を届け出た病院は51・4%、診療所は47・6%と半数程度にとどまっている。さらに、保険外も含めて実際にオンライン診療を実施している医療機関は病院24・3%、診療所16・1%にすぎない。

 福岡県内のクリニック院長は「患者さんには一定の恩恵がある」と話しつつ、「医療機関側は、診療時間の患者さんとの調整等、手間が多い。なのに、対面診断より診療報酬が4割程度低い。誤診の可能性だって高まるし、積極的にやろうというインセンティブがない」と言う。

 今回の緩和では、感染がさらに拡大して無症状の感染者が自宅で療養するようになった場合、症状が出るとオンラインで必要な薬を処方出来るようになる。とはいえ、オンラインでの受診にはスマートフォンでアプリを操作する必要がある。高齢者世帯では利用出来ない人も少なくない。

 感染を恐れ、通院を避ける人もいる事から、オンライン診療の導入を望む医療機関は増えている。しかし、従来の厚労省方針に縛られている診療所は多い。3月30日の記者会見で日医の横倉義武会長は新型コロナウイルスの広がりに触れ「(緊急事態宣言も)考えていかないと医療崩壊に繋がる」と踏み込んだものの、オンライン診療の拡充については「(新型)コロナに限ってだ」と語った。今回の緩和が一時的なものなら実施に踏み切る医療機関は限られ、普及も進まないとの見方は強い。

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