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未来の会

258 長野県立こども病院
(長野県安曇野市)

258 長野県立こども病院(長野県安曇野市)

天性の疾患を抱える子供や早産で低体重の乳児に対する医療体制が十分とは言えなかった長野県で、小児医療の専門病院を開設しようという機運が高まったのは1980年代。それから多くの議論を重ねて、長野県立こども病院が設立されたのは93年の事だった。

当初は60床の小規模な病院で、新生児医療と先天性心疾患の治療を中心に子供達の様々な疾患に対応して来たが、母親もしっかり支えられる病院になろうと周産期医療も開始。今では診療科は20を超えて病床数も200床となり、長野県の小児・周産期医療の最後の砦として厚い信頼を得る迄になった。

そうした信頼に応える為、医師や看護師、病院のスタッフらは、病院で過ごす子供達や家族らが少しでも楽しさや安らぎを感じられる為の雰囲気作りを心掛けている。例えばシロクマをモチーフにした病院のキャラクター「ちるくま」は、逞しさと包容力のあるぽってりとした大きな体に、子供達が安心出来るよう優しい表情と愛くるしい目元で、すっかり病院のマスコットとして定着した。着ぐるみのちるくまが病院に姿を表すと、子供達は笑顔になる。又、その名を冠し医師や看護師らで結成した「ちるくま音楽隊」も、院内で開かれる患者や家族向けのイベントを盛り上げている。

病院が取り組むホスピタルアート活動は、大学や企業の協力の下でも行われている。その1つが重度の障害が有る子供達が入院する第2病棟(現在は改修中の為一時閉鎖)での「療育ARTS」だ。2017年に始まった療育ARTSは、寝たきりで過ごす患者が多い同病棟の環境を少しでも良くしようと、東京藝術大学の協力により始まった。

元々病棟内には看護師や保育士が手作りしたモビールや、可愛らしいイラストが飾られていた。しかし、白で統一された病棟の壁や天井に、思い思いに飾られた作品は、何処かちぐはぐな印象も有った。それを、壁や天井を含めて改装して統一感を出し、柔らかで温かみの有る雰囲気の病棟にしたい——そうした思いが徐々に高まっていった。

1年掛けて生まれ変わった病棟は、壁や天井が黄色や緑を基調とした明るい色合いとなり、新たに白鳥の模型が吊るされた。モチーフとなったのは、安曇野の冬の風物詩、御宝田遊水池に集まる白鳥の親子。病気や障害を抱え、病棟の外の世界を知らずにいる子供達に、渡り鳥である白鳥達が世界を旅するストーリーを通じて想像の翼を広げて貰うコンセプトだ。

又、放射線検査の待合廊下には、絵本作家としても活躍し、今年1月に亡くなった画家のMAYA MAXX(本名・小林摩矢)氏が手掛けた壁画が飾られ、MAYA MAXX通りと呼ばれている。

MAYA MAXXさん自身も、ホスピタルアートの一環として、難病の子供達と絵画を描く「ハッピーカラープロジェクト」を毎年開いていた。

色鮮やかなアートに彩られた病院は、今日も子供と家族達に、作品を通じて多くの人の優しさと温かさを注ぎ続けている。


258_長野県立こども病院(長野県安曇野市)

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