
今シーズン(2024/25冬)のインフルエンザは、近年で最も大きい流行のピークとなった。毎年インフルエンザワクチンが接種され、2〜18歳を対象の新インフルエンザワクチン(フルミスト®)の販売も開始されたが、効いたのだろうか。薬のチェックでは、フルミストを含め、改めてインフルエンザワクチンのランダム化比較試験(RCT)を批判的に吟味し、効力の再評価を行った1)ので概要を報告する。
インフルエンザの診断と検査偽陰性化
インフルエンザのRCTでは、発熱をはじめ、鼻症状、咽頭痛、咳などの呼吸器症状、倦怠感や筋肉痛、関節痛、頭痛、悪寒などの全身症状など、インフルエンザ様症状があり、検査によるインフルエンザ確定例をワクチン群とプラセボ群で比較している。ワクチンがこの検査に影響しないなら適切だが、従来の抗体法や培養法は、ワクチン接種の影響を受けて偽陰性化の程度が極めて大きく、効力の過大評価となる。そこで、症状で判定したインフルエンザ様疾患(ILI)をメタ解析すると、「無効」となった2)。
例えば、経鼻のインフルエンザ生ワクチンのRCTでインフルエンザウイルスの検出を培養法で実施した場合、培養検査陽性ILIはプラセボ群4.0%に対してワクチン群0.3%で、抑制率は94%であったが、培養陰性ILI例は11.2%に対してワクチン群14.2とワクチン群に有意に多かった(p=0.025)。ウイルス干渉現象がなかったと仮定すると、ワクチンによる培養検査の偽陰性化率は92%と推定される。
PCR法でも偽陰性化がある
フルミストのRCTの結果、ワクチンによる接種15日以降のインフルエンザ感染の抑制率(相対リスク減少率)は28.8%と報告された。培養法による抑制率(90%超)と比較して効力が小さい。
これは、フルミストのRCTでは、インフルエンザワクチンのRCTとしては初めてPCR法が用いられたことが大きく関係している。ワクチン接種による偽陰性化の影響が、培養法に比較して圧倒的に小さいためである。しかし、全く影響を受けないとは言えないようだ。
接種15日以降の全ILIはプラセボ群69.0%に対して、ワクチン群は65.4%で有意の差はなく、PCR陰性ILIは、プラセボ群33.1%に対してワクチン群39.8%(p=0.052)と有意に近く多く、偽陰性化率は21%と推定された。
ワクチンウイルスでインフルエンザになる
フルミストでさらに問題なのは、接種14日以内に、ワクチンウイルスによるインフルエンザが、ワクチン群の11人(1.8%)に発症していたが、プラセボ群にはいなかったことである。
接種14日以内のILIを含めるとプラセボ群69.2%に対してワクチン群70.0%と、逆にワクチン群に多かった。
総合的にインフルエンザワクチンは無効
フルミストのRCTを含め8試験10集団のRCTをメタ解析した結果、統合リスク比0.99(95%信頼区間:0.94, 1.05)、p=0.719であった。 I2=0%であり信頼性は高い。仮に検査陰性ILIがすべて他のウイルス感染でも、ILIが起こることに変わりはなく、ワクチン接種による利益はない。
結論
フルミストはインフルエンザ様疾患を全く減らさず、ワクチンそのものによるインフルエンザにかかる。フルミストを含めてインフルエンザワクチンはなんら利益をもたらさず、害だけがあると結論する。
参考文献
1)薬のチェック、2025:25(118):38-41
2)薬のチェック、2023:23(105):12.
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