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未来の会

第202回 厚労省ウォッチング
後発医薬品の品質不正に悩まされる厚労省

第202回 厚労省ウォッチング後発医薬品の品質不正に悩まされる厚労省

後発医薬品の製造販売業者172社による自主点検の結果、対象品目の43・5%(3796品目)が製造販売承認書と異なる方法で造られていた事が分かった。医療関係者からは「モラルの低下」といった批判も飛び出している。医薬品の供給不足が続く中、「後発薬の安全性をアピール出来れば」と望んでいた厚生労働省の思惑は脆くも崩れた。

後発薬を巡っては2021年度以降、品質不正の発覚が相次ぐ。日医工、小林化工など21社が業務停止等の行政処分を受け、医薬品供給不足の一因となっている。こうした状況を踏まえ、同省は業界に自主点検を要請していた。

厚労省の求めに応じ、調査は24年4〜10月に実施された。製薬業界による自主点検は3度目となるが、品質不正が後を絶たない事から今回は日本ジェネリック製薬協会加盟社に限らず全後発薬8734品目を対象とした。又、製造方法だけでなく規格や品質試験の方法に至る迄細部に亘る検査とした。

その結果が、4割を超す3796品目に製造販売承認書との食い違いが見つかる、という物だった。内、薬事対応を終えた物、対応を実施中の物が計3456品目と大半を占める。不正の具体的な内容は、▽製造販売承認書では「原材料を一度に投入して混合する」となっているのに、少量・分割して投入▽PH測定時の試験溶液量を承認書は10㍉㍑としている一方、実際の測定時には20㍉㍑で実施▽薬の成分の名前の表記ミス——等だった。

製造販売承認書には医薬品の製造方法、規格試験の手順が詳細に記されている。各メーカーは品目毎に厚労省から取得する必要が有り、違反すれば改善・業務停止命令等の対象にも成り得る。只、調査結果を報告した日本製薬団体連合会は「重大な相違」は無かったとし、厚労省と共に「安全性に問題は無い」と強調している。11月18日の厚労省の「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」。日薬連の担当者は従来より詳細な調査をしたと説明し、「膿を出し切るという意味で細部まで点検した」と語った。しかし、「細部まで実施した為に不正が増えた」「不正は軽微」と言わんばかりの説明に、メンバーからは「現場では患者さんに(承認書と製造方法に)相違が無いものと説明している」(豊見敦日本薬剤師会常務理事)、「技術力の低下、曖昧さが(不祥事の背景に)ある」(宮川政昭日本医師会常任理事)、「衝撃的な数字だ。モラルの低下と言われても仕方ない」(清田浩座長・東京慈恵会医科大客員教授)等、厳しい発言が相次いだ。川上純一浜松医科大学医学部附属病院薬剤部教授は「原因や背景を調査しないと再発防止や対策に繋がらない」と指摘した。

医療費抑制の観点も有り、厚労省は先発薬より3〜7割程度安い後発薬普及の旗を振っている。24年10月からは後発薬が有るのに先発薬を希望する患者には「特別料金」を課す制度もスタートした。数量ベースの普及率は8割に達している。それでも或る厚労省OBは「後発薬の場合、まだまだメーカーによる品質の差が大きい。何処もコストダウンに必死だろうし、正直、調査結果については抱いていた印象と大きくは違わず、意外とは思えない」と明かす。

24年10月末時点で、依然医療用医薬品の約2割の品目が限定出荷や供給停止となり、咳止めや解熱鎮痛剤の不足を招いている。後発薬メーカーの不正の影響が尾を引いている。解決には限定出荷の解除が必要となるが、厚労省幹部は困惑を隠せない。「後発薬の安全性を理解して貰えない事にはどうにもならない。その点で今回の数字は痛い……」。後発医薬品メーカートップの責任が追求される。

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