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未来の会

第194回 政界サーチ
2025年、巳年の政局展望

第194回 政界サーチ2025年、巳年の政局展望

2025年の正月を迎えた。21世紀も既に4分の1が経過しようとしている。光陰矢の如し、である。干支は乙巳(きのとみ)である。60年周期の干支では42番目に位置する。乙は十干の2番目で「軋む」を意味し、陰陽五行説では木の陰のエネルギーを象徴しているとされる。巳は十二支の6番目で、蛇を表す。日本では白蛇は神の使いであり、崇められて来た歴史が有る。海外でも脱皮する度に表面の傷が治癒して行くことから、医療、再生のシンボルとして尊ばれている。紛争で傷付いた世界、そして不祥事に見舞われた日本が上手く治癒・再生出来るかが問われる年に成ると受け止めたい。

 蛇は好き嫌いが二分する動物だ。見るのも嫌だと言う人もいれば、首に巻き付けて愛玩動物にする人もいる。嫌悪の理由は様々だが、人類が未だ小型の哺乳類だった頃、蛇が天敵だった為だという考察に説得力を感じる。好きな方はというと、文化的な側面が強いとされる。脱皮等の生態を観察し、自分達が持ち合わせていない生命力を評価するに至ったという見方だ。WHO(世界保健機関)のシンボルマークが、杖に巻き付いた蛇だという事実が裏付けだろう。

 乙巳の年の行方に話を移す。

 干支の専門家らの話を総合すると、多くの人にとって「成長と結実」の時期となる可能性が高いそうだ。︎年初の話なので、悪い話はあまり出て来ないのだが、昨年の甲辰(きのえたつ)では「事件多発」との、ご託宣通りに政治資金裏金事件で自民党が失墜し、岸田文雄政権が終焉を迎えた。「成長と結実」を信じたい気分である。

 詳しく説明すると、木の陰のエネルギーを示す乙は発展途上の状態を、巳は植物が最大限まで成長した状態なのだという。これを組み合わせた乙巳はこれ迄の努力や準備が報われる時期を示唆しているのだという。只、成果の現れる時期は人によって異なり、辛抱も問われるとの事だ。

 政界の巳年生まれを探してみると、共産党の田村智子委員長が1965年生まれ。乙巳の還暦だ。自民党の上川陽子前外相、岡田克也立憲民主党常任顧問は共に53年生まれ。要人では案外該当者は少ない。世界に目を移すと、中国の習近平国家主席が53年生まれの巳年だ。今年のキーマンなのかも知れない。

 巳年生まれの特徴に触れておく。先ずは、沈着冷静で、感情を抑えて行動する。裏を返せば、「冷徹」「冷酷」である。次いで、一度決めた事はやり抜く粘り強さが有る。物事を成功に導くのに不可欠な特質だが、半面、秘密主義で物事を否定的に捉えがちな傾向も見られるという。中々の分析だと思う。

戌・トランプと酉・石破の相性

 干支ついでに、世界の要人を調べてみると、2度目の大統領就任式に臨む米国のトランプ前大統領は46年生まれの戌(いぬ)年、ロシアのプーチン大統領は52年生まれの辰年で、ウクライナのゼレンスキー大統領は78年生まれの午(うま)年、北朝鮮の金正恩総書記は84年生まれの子(ね)年だ。

 さて、ここからは巳年の外交に話題を転じる。石破茂首相は57年生まれの酉(とり)年だ。少数与党のため、内政もしんどいのだが、石破政権にとっての鬼門は外交になるとの見方が多い。理由は簡単だ。国内の政権基盤の弱い為政者は海外から軽視されるからだ。信用力が足りないのである。

 最大の懸案が日米関係であることは間違いないだろう。既に兆候は出ている。石破首相は南米・ペルーで昨秋開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の後、渡米し、トランプ前大統領との個別会談を模索していた。しかし、トランプ前大統領側から「就任前には会談しない」とすげない返事が有り、断念している。

 脳裏に浮かぶのは安倍晋三元首相とトランプ前大統領の蜜月関係だ。切っ掛けは、16年秋、当時の安倍首相がトランプ次期大統領をニューヨークに訪ね、トランプ・タワーで会談した事だった。安倍首相はゴルフクラブを贈り、トランプ次期大統領からはゴルフ・シャツ等ゴルフ・グッズが贈られている。トランプ時代を見越した優れた首脳外交の1つとして、今も語り継がれている。「米国追従の極み」「安倍はトランプの飼い犬」等の陰口も叩かれたが、何が起こるか分からないトランプ時代への対処法として、一定の成果を上げた事は否定出来ない。

 安倍元首相が亡くなった後、そのパーソナルな外交は麻生太郎自民党最高顧問が引き継ぎ、昨年4月、やはりトランプ・タワーで個別会談を行っている。只、こうした前振りは岸田政権が前提になっており、石破政権はその恩恵が無かったと見られている。

 前述した様にトランプ前大統領は戌年で、各種占いによると、相性の良い干支は寅年、午年、未(ひつじ)年という説がある。石破首相の酉年は微妙で、相性最悪という説と、最良のパートナーという説の両方が混在している。因みに、安倍元首相は相性が良いとされる午年。世界の要人ではウクライナのゼレンスキー大統領が午年だ。絶妙な感じである。

 もう1つ、日中関係はどうかも干支占いで試してみる。巳年の習国家主席との相性の良いベスト3は①丑(うし)年②酉年③未年という説がある。石破首相は中国と国交を回復した田中角栄元首相の流れを汲む。国防関係で厳しい発言もするが、アジアの平和と日本の役割にも一家言が有る。米中の緊張が高まる中、立ち回りは難しいが、干支占いでは悪くない方向が示されている様だ。

与野党、乾坤一擲の参院選

日本で今年最大の政治イベントは間違いなく夏の参院選だ。各政党の照準もここに定められている。参院は任期6年で、改選期の異なる2つの塊が3年置きに選挙に臨む。最初の巳年の参院選は1953年で、以降、12年毎に行われている。亥年、寅年、巳年、申年は参院選の年なのだ。

 直近2つの巳年の参院選を見てみよう。

 先ずは、2001年である。小泉純一郎政権下で自民党は改選前の61議席から3議席伸ばし、参院勢力を111議席とした。野党第1党の民主党は改選前22議席から4議席伸ばして、参院勢力を59議席としている。2大政党化が勢いを増した時代である。 12年後の13年は、政権を奪還した安倍元首相が勢いを増した選挙で、自民党は改選前の34議席を65議席まで増やし、衆参で与野党の勢力が逆転する「衆参のねじれ」を解消した。民主党は改選前の44議席から17議席に落ち込み、参院勢力は86議席から59議席へと落ち込んだ。第三極が躍進した選挙でもあった。みんなの党は3議席→8議席、日本維新の会も2議席→8議席と伸ばし、それぞれ参院勢力を18議席、9議席に拡大した。

 今年の参院選の見所は、自民、公明両党が過半数を保てるか否かの1点とされる。衆院で過半数を超えながら、野党が我武者羅に政権奪取に動かないのは与党の「参院の牙城」が立ち塞がっているからだとの見方がある。仮に野党政権が出来ても参院で一切法案が通らず、立ち往生してしまうという状況を差している。

 政権奪取出来ないのは野党各党の思惑が異なり、それを束ねるリーダーがいない為だと思うが、参院の牙城が障害なのも事実だろう。参院選で野党勢力が過半数を握れば、政局は激変する。共産党と日本維新の会が協力するのは考え難いが、政治に豹変は付き物である。合意不能の分野は棚上げし、連立政権を樹立する事もやろうと思えば出来るのだ。

 共同通信の試算では、野党が1人区で候補を1人に絞る等強固な選挙協力を実施した場合、改選125議席の内、自民党は35議席、公明党は9議席に留まり、非改選との合計で119議席と過半数を割り込むという。野党の結束の度合いで数値は動きそうだが、一大決戦になりそうだ。東京・永田町では衆参同日選挙の流言も飛び交い始めている。少数与党では考え難いが、何が起こっても不思議ではない乙巳の政情である。

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