生活習慣病管理料(Ⅰ)、(Ⅱ)
我が国の保険診療は、様々なルール(健康保険法等、健康保険法施行令等〈政令〉、療養担当規則〈省令〉、診療報酬点数表〈告示〉、通知等)により司られています。これらのルールは、医療者に対し「安全で良質な医療の提供」を求めており、同時に実施された行為の算定に於いて様々な要件を定めています。しかし、保険医が必ずしもルールを正確に理解せず、誤った算定が行われている実態が有ります。本企画は、保険診療の正しい解釈をお伝えし、良質な医療の提供と共に、保険医療機関の収益増大の一助となる事を期待しています。
今回は、「B001-3生活習慣病管理料(Ⅰ)」、及び、「B001-3-3生活習慣病管理料(Ⅱ)」を取り上げます。
これまでの流れを振り返ると、平成8年の改定で、運動療法指導管理料として初めて保険収載されました。当初は、高血圧症を主病とする患者の治療に於いて、運動療法を含めた総合的な治療管理を行った場合に、200床未満の病院及び診療所である保険医療機関において算定するとされました。その後、平成12年の改定で、高脂血症及び糖尿病が対象として追加されました。そして、平成30年の改定で、生活習慣病管理料として脂質異常症、高血圧症又は糖尿病を対象として、生活習慣に関する総合的な治療管理が算定要件として示されました。令和4年の改定では投薬の有無による分類は廃止し、令和6年の改定(令和6年 保医発0305第4号)において検査等を包括しないB001-3-3生活習慣病管理料(Ⅱ)(333点、月1回に限る。)が新設されました。
本改定の基本的な考え方として、 生活習慣病に対する質の高い疾病管理を推進する為、生活習慣病管理料について要件及び評価を見直すと共に、従来内科で算定される事の多かった特定疾患療養管理料の対象疾患から糖尿病、脂質異常症、高血圧症を除きました。
生活習慣病管理料(Ⅱ)の「算定要件」と「施設基準」について、目を通しておくべき内容(留意事項等)を以下に示します。
[算定要件]
(1) 別に厚生労働大臣が定める施設基準を満たす保険医療機関(許可病床数が200床未満の病院又は診療所に限る。)において、脂質異常症、高血圧症又は糖尿病を主病とする患者(入院中の患者を除く。)に対して、当該患者の同意を得て治療計画を策定し、当該治療計画に基づき、生活習慣に関する総合的な治療管理を行った場合に、月1回に限り算定する。ただし、糖尿病を主病とする場合にあっては、区分番号C101に掲げる在宅自己注射指導管理料を算定しているときは、算定できない。
(2)生活習慣病管理を受けている患者に対して行った区分番号A001の注8に掲げる医学管理及び第2章第1部第1節医学管理等(区分番号B001の9に掲げる外来栄養食事指導料、区分番号B001の11に掲げる集団栄養食事指導料、区分番号B001の20に掲げる糖尿病合併症管理料、区分番号B001の22に掲げるがん性疼痛緩和指導管理料、区分番号B001の24に掲げる外来緩和ケア管理料、区分番号B001の27に掲げる糖尿病透析予防指導管理料、区分番号B001の37に掲げる慢性腎臓病透析予防指導管理料、区分番号B001-3-2に掲げるニコチン依存症管理料、区分番号B001-9に掲げる療養・就労両立支援指導料、B005の14に掲げるプログラム医療機器等指導管理料、区分番号B009に掲げる診療情報提供料(Ⅰ)、区分番号B009-2に掲げる電子的診療情報評価料、区分番号B010に掲げる診療情報提供料(Ⅱ)、区分番号B010-2に掲げる診療情報連携共有料、区分番号B011に掲げる連携強化診療情報提供料及び区分番号B011-3に掲げる薬剤情報提供料を除く。)の費用は、生活習慣病管理料(Ⅱ)に含まれるものとする。
(3)別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定すべき医学管理を情報通信機器を用いて行った場合は、所定点数に代えて、290点を算定する。
[施設基準]
(1)生活習慣病に関する総合的な治療管理ができる体制を有していること。なお、治療計画に基づく総合的な治療管理は、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士等の多職種と連携して実施することが望ましい。
(2)患者の状態に応じ、28日以上の長期の投薬を行うこと又はリフィル処方箋を交付することについて、当該対応が可能であることを当該保険医療機関の見やすい場所に掲示すること。
又、生活習慣病管理料(Ⅱ)を算定する為には療養計画書を作成しなければなりません。療養計画書(別紙様式9(初回用)及び9の2(継続用)の定められた記載内容に関するポイントを、以下に示します。
・療養計画書は当該患者の治療管理に於いて必要な項目のみで差し支えない。
・療養計画書を基に患者へ治療計画の説明を行い、患者の署名による同意を得る事。
・交付した療養計画書の写しは診療録に添付しておく事。
・保険者から特定保健指導を行う目的で情報提供の求めが有る場合、患者の同意の有無を確認し療養計画書に記載し、同意を得ている場合には必要な協力を行う事。
・療養計画書の内容に変更が無い場合はこの限りではない。その場合に於いても、“患者又はその家族から求めが有った場合”、“概ね4か月に1回以上”は交付する事。
・患者の求めに応じて、電子カルテ情報共有サービスにおける患者サマリーに、療養計画書での記載事項を入力し、診療録にその記録及び患者の同意を得た旨を残している場合は、療養計画書の作成及び交付をしているものとみなす。
・血液検査結果を別に交付している場合、又は患者の求めに応じてその旨を患者サマリーに記載している場合は、療養計画書の血液検査項目についての記載は不要。
療養計画書は単に書類を発行するだけではなく、患者に生活習慣の改善意識を明確にさせる為のものです。作成には効率化と工夫が必要です。
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