10月1日に発足した石破茂内閣で、厚生労働省の大臣官房審議官(総合政策担当)だった熊木正人氏が首相秘書官に任命された。厚労省出身の首相秘書官は菅義偉政権の鹿沼均氏(現保険局長)以来、3年ぶりだ。省内からは「熊木氏は今や厚労省のエース。首相秘書官になるなら熊木氏を差し置いて他にいない」(中堅職員)との声が上がる。熊木氏の人となりに迫る。
石破政権下で新たに任命された首相秘書官は8人。筆頭は防衛省出身の槌道明宏氏だ。1985年入省の槌道氏はナンバー2の防衛審議官に迄上り詰め、石破氏の防衛相時代に秘書官としても仕えた。霞が関内では「最終的に省内で孤立した石破防衛大臣だったが、槌道氏だけが最後まで付いていた」という。
槌道、熊木両氏以外は、警察庁の土屋暁胤官房審議官(95年入省)、外務省の貝原健太郎北米局参事官(96年入省)、財務省の中島朗洋主計局次長(93年入省)、経済産業省の井上博雄資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部長(94年入省)、防衛省の吉野幸治防衛政策局次長(95年入省)。石破事務所からは吉村麻央氏が官邸入りする。
93年入省の熊木氏は今年7月の幹部人事で、総合政策担当の大臣官房審議官に就任したばかりだった。その前の1年間は、こども家庭庁支援金制度等設立準備室長として子ども・子育て支援金制度の創設に奔走。国会で答弁する姿は記憶に新しい。
93年組のエースとして鳴らした熊木氏。開成高から東京大法学部に進学した。厚労省では経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部一等書記官や保険局国民健康保険課長、大臣官房会計課長等を歴任。社会・援護局地域福祉課に創設された生活困窮者自立支援室の初代室長にも抜擢された。大阪府に出↘向し、福祉部高齢介護室介護支援課長と障がい福祉室障がい福祉企画課長を務めた事も有る。
省内の事情に詳しい関係者は「熊木氏の仕事ぶりは手堅く真面目なタイプ。特に適応力が高く、相手がどういうものを求めているか瞬時に分かるので、首相秘書官には適任ではないか」と評する。
厚労省が再び首相秘書官を輩出出来たのは特殊な事情が有る様だ。岸田文雄政権下では財務省出身の首相秘書官を2人置いていた。2人の内の1人は↖宇波弘貴現主計局長や一松旬大臣現官房審議官ら厚労分野に詳しい財務官僚を据えていたが、今回は1人に減らした。財務省出身の中島秘書官は社会保障に明るくないとされ、厚労省の割って入る余地が生まれた形になったという。
石破首相は防衛・安全保障分野は得意だが、社会保障分野は得意とは言えない。厚労官僚で接点が有るのは、地方創生統括官を務めた山崎史郎内閣官房参与ぐらいだ。それだけに熊木氏の責任は重大と言える。
嘗て首相官邸と与党との連絡調整役を担う内閣総務官室の内閣参事官を3年経験した熊木氏。当初は不慣れなポジションに戸惑う事も多かったという。ただ、1〜2年で交代する事も有るポストだが、最終的に在任期間は3年に及んだ。過去に3年経験したのは、江利川毅元人事院総裁や羽毛田信吾元宮内庁長官、鈴木俊彦日本赤十字社副社長ら、後に事務次官に就任した人物が多い。入省同期で目立つ存在は既に巽慎一年金管理審議官ぐらいしか残っていない。熊木氏は何処まで上り詰められるか。
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