オーナー厳浩氏の資産管理会社Y&Gの役割
今年9月26日18時から「中華人民共和国成立75周年祝賀レセプション」がホテルニューオータニで盛大に開催された。会場の入口には特別に設置され、大型のセキュリティゲートが3つ設けられ、多くのVIPの来場が予想され、物々しい雰囲気が漂っていた。
本来であれば祝典一色となっていた筈だったが、9月18日の朝、中国・深圳で日本人学校の小学生が殺害されるという衝撃的な事件が発生し、この事が祝賀会にも影響を与えたのかも知れない。主催者の挨拶でもこの件に触れ、謝罪の言葉が述べられていた。
この祝賀会は駐日大使・呉江浩氏が主催し、鳩山由紀夫・元首相や山口那津男・公明党元代表、日本共産党の志位和夫委員長、自民党の森山裕・元総務会長ら多数の政治家が馳せ参じていた。
会場の前方には、日中国交回復を成した故・田中角栄氏の秘書でもあり、名著『日本列島改造論』の実質の著者である元通産省事務次官の小長啓一氏の顔も見える。その横には、日本中華總商會の幹部らの顔がずらっと並ぶ。会場中央付近には三菱UFJフィナンシャル・グループ社長や同行副頭取を始め複数の銀行幹部や金融会社トップらが、中国人経営者と談笑する姿があった。
しかし、本来であれば、会場の中心にいる筈のEPSホールディングス(以下、EPS)オーナーである厳浩氏の姿は見当たらなかった。中国では要職にある者が祝いの席に欠席する事には、それなりの理由が必要とされる。増して、この日は中国建国75周年の祝典だ。多くの中国人経営者達は目で厳氏の姿を探すも見つける事が出来なかった。直ちに日本中華總商會の幹部達の間で厳氏不在の憶測話が飛び交った。
金融庁証券取引等監視委員会(SEC)からの呼び出しが続く中で、EPS関係者のストレスは想像を超える。複数のEPS関係者が今も任意の呼び出しに応じているが、体調に異変を感じると語る者もいる。SECは上場廃止に関係する手続きには瑕疵が無いと見ている。ここに問題が無いと判断されれば、SECが次に追究するのは、「いつ、誰がどの様にして上場廃止の情報を中国人に漏らしたのか?」という点に絞られる。SECは慎重の上にも慎重に調査を進めており、今後もSECの調査から目が離せない。
狭い医療界、『集中』のEPS連載記事の反響は大きく、EPS内部からの内部告発は日々増加し、外部からの問い合わせも急増している。前号の発行以降、優に10件を超える大学医学部や大病院の幹部から「EPSの情報が欲しい」という問い合わせが入った。正に、元子会社社長・北塚淳一氏(仮名)や現EPS役員の地庭俊博氏(仮名)が描いていた「EPS崩壊のシナリオ」と言えるだろう。
これも、厳氏の人に対する「手のひら返し」的な手法が多くの人々の怒りを買った結果なのは間違いない。厳氏の側近からは「約束の反故」や「契約の軽視」といった言葉が聞かれ、これは上場企業のトップとして決して許される事ではない。
内部調査報告書にも驚く高額な支払いが……
EPSは2021年に上場廃止をした。SECからの調査を見越してか、EPS内部に特別調査委員会(以下・特調委員会)が設置された。請け負ったのはプロアクト法律事務所だ。内部報告書には2名の弁護士の名前が記されている。
EPS特別調査委員会委員長は池森朝昭弁護士(仮名)、委員は竹森朗弁護士(仮名)だ。プロアクト法律事務所(以下・プロアクト)への発注に関して、弊社へ届いた内部告発には特調委員会に関する詳細な記述が有る。先ず「特調委員会を立ち上げるに当たり、EPSはアンダーソン・毛利・友常法律事務所外国法共同事業(以下・アンダーソン)へ依頼をした」とされている。続いて、複数の内部告発を列記すると「EPSが案件を依頼している弁護士事務所はTMI総合だが、アンダーソンはEPSが汚れ仕事を依頼する弁護士事務所として使っている」「アンダーソンは特調委員会創設の話を聞くものの、その作業をプロアクトに担当させた」「この特調委員会を立ち上げたのは、EPSの地庭氏。目的は敵対的な幹部の追い落としだが、その理由は積もり積もった恨みによる反撃だ」「当初、提出されたプロアクトからの見積書よりも相当額を上乗せした高額の数字で契約をしている。その理由は厳浩氏の不正に関する記載はしない事が条件。これを仕切ったのは地庭氏。厳浩氏は前代表・田代氏や倉橋氏(仮名)から地庭氏に寝返った」「天敵だった元幹部らを追放した結果、EPS内部は統制が取れないし、経営上でも過去の業務に関する複数の資料が不明で混乱が続いている」等々。最近の内部告発は以前に比べて真実に近いものが多い。恐ろしい時代だ。詳細な内容は幹部に近い複数が義憤に駆られて告発を続けているのだろう。正にEPSがダッチロールに陥っていると言える。プロアクトが作成した「調査報告書(以下・報告書)」を読む限り、内部告発が正しいと考えざるを得ない内容が含まれる。報告書には「厳浩氏は何も知らないし関与もしていない」という厳浩氏を擁護する記述が目に付くが、EPSの最重要案件であったTOBに関しても、最後の最後で資金不足が発生し、それを乗り越える為に幹部が尽力している最中、巨額の売買契約書が締結されている。しかし、厳氏はそれも知らないと報告書は断言している。厳氏の応援紙とも言える報告書を作成する為に1億円近い費用が発生している。これは会社経費として正当なものかどうかについても大きな疑問が残る。自分の身の安全を守るための応援紙作成に1億円に近い費用を気前良く支払う男の周辺には、多くの疑問符が付く案件が幾つも見える。
Y&Gの業務内容はコンサルティング
厳氏は中国人経営者仲間にとってカリスマ的な存在だった。彼らから様々な相談事を受け、厳氏は問題解決に尽力して来たが、その解決手法に問題は残る。友人を助ける為の弁護士費用は個人の支払いとすべきだが、EPSの経費として処理している事は明らかに問題である。上場会社は株主のものであり、こうした個人の費用を会社の経費として処理する事を役員や部長が行えば、間違いなく横領や背任に当たる。ずっとバレないと考えたのか、それは甘かった。この延長線上に厳氏にとって今後、経済人として活動する上で致命傷となる「大河実業(本社・東京都中央区)問題」がある。これが、Y&Gが言う「中国貿易に関わるコンサルティング」の正体だ。
報告書の結論部分に「強固のガバナンスを構築し、再上場を実現した上、一層発展する事を願い、本調査報告書の結語とする」とエールが送られている。笑止千万とはこの事か。依頼者である地庭氏らの意向に沿った内容であり、事実と異なる記載が多々散見される。捏造モノと揶揄されても反論は出来ないだろう。この様な報告書で過去を揉み消し、再上場が出来ると考えたのか? 寧ろ、この報告書の存在そのものが再上場に悪影響を及ぼすと考えられる。残念ながら再上場は有り得ないと断言したい。SECの調査が進み、金融庁へ報告がなされた場合、再上場は儚い夢と消えるだろう。加えて、厳氏の資産管理会社である有限会社Y&G(代表取締役・厳浩)が2億円を借り入れた公正証書が有る。「令和3年第81号・金銭消費貸借契約公正証書」によると、21年7月9日のTOB成立の10日前に、2億円が第三者から借り入れられた。その理由は、約550億円を三菱UFJ銀行を中心とするシンジケート団(みずほ銀行・三井住友銀行・りそな銀行・三井住友信託銀行・東京スター銀行の全6行)から調達していながら、最後の最後に2億円が不足したと見られる。
この憶測は取材を通じて確認された。6行の足並みが崩れた原因は、東京スター銀行の新頭取が前頭取のTOB協調路線を踏襲する事を避けた事でEPSの融資枠に狂いが生じたのだ。最終的に2億円が不足する結果となった。EPSとしては、万事休すとTOBを諦める訳には行かなかったのだ。(次号に続く)
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