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第84回 厚労省人事ウォッチング 医系技官人事に多少の!?異変アリ

第84回 厚労省人事ウォッチング 医系技官人事に多少の!?異変アリ
森光 敬子氏

 7月5日付で発令された厚生労働省の幹部人事の内、医師免許を持つ医系技官の配置が密かに注目される。次期医務技監を巡るレースの行方に加え、将来有望視された中堅職員が出世コースから外れる等、一部で波乱含みだからだ。将来予測も含め、医系技官人事を展望したい。

 先ず注目されるのは、森光敬子氏が大臣官房危機管理・医務技術総括審議官から就任した医政局長人事だろう。1992年に佐賀医大を卒業した森光氏は、医政局研究開発振興課長や保険局医療課長、医療介護連携・データヘルス改革担当の大臣官房審議官など重要ポストを経て、医政局長に就任した。医療課長や医政局長は女性として初めての就任で、医系技官の王道ルートを歩んでいる。

 一方、コロナ禍で活躍した大坪寛子氏は健康・生活衛生局長に留任した。東京慈恵会医大を92年に卒業している大坪氏は、医系技官の人事慣例に従えば卒業年次が同じ森光氏とは同期扱いだ。王道ルートの森光氏に対し、勤務医等を経て2008年に入省した大坪氏はコロナ禍での危機管理対応で手腕を発揮。安倍・菅政権当時に首相補佐官を務めた和泉洋人氏の威光をバックに権勢を振るって来た。

 森光氏が医政局長に昇格した事で、大坪氏と肩を並べた形になったが、2人は「犬猿の仲」(厚労省職員)だとされる。森光氏の前任、浅沼一成・国立保健医療科学院次長の芽も残されているが、この2人を中心に次期医務技監の座を激しく争う展開になりそうだ。ただ、豪腕・大坪氏には省内に敵も多い。

 関係者の間で密かに注目を集めたのが、保険局医療課長を巡る人事だ。林修一郎氏が医政局医事課長から就任。林氏は東京大医学部を卒業後、00年に旧厚生省に入省したエリートだ。ハーバード大公衆衛生大学院で修士号を得て、健康局健康課予防接種室長や精神・障害保健課長等を歴任。今回の幹部人事で晴れて医療課長に。

 林氏は将来を嘱望される中堅官僚の1人に挙げられているが、当初は別の人物が医療課長に就任するとの見方もあった。慶應大医学部卒で老健局老人保健課長だった古元重和氏(1997年、旧厚生省入省)がその人で、老人保健課長から医療課長へ異動するのが出世ルートの1つだったからだ。只、古元氏は8月1日付の人事で北海道大教授に就任する↖事が発表された。医系技官人事に詳しい厚労省関係者は「厚労省の激務が祟った他、或る幹部との折り合いが悪く、一時的にお休みする様な形になった」と明かす。古元氏は将来の幹部候補だった事もあり、今回の異動を残念がる声は多い。

 水俣病患者・被害者団体との懇談の場に於ける「マイクオフ問題」で環境省の環境保健部長だった神ノ田昌博氏(92年、旧厚生省入省)の動向も注目された。医系技官は環境省内にも幾つかポストを得ているが、神ノ田氏も出向中だった。ただ、問題の当事者である神ノ田氏は当初、厚労省に戻れないのではないかとも囁かれたが、医療介護連携担当の大臣官房審議官に落ち着いた。ただ、一連の問題を巡って伊藤信太郎・環境大臣から口頭で厳重注意を受けており、今後のキャリアは厳しいものとならざるを得ないだろう。

 地域医療構想や薬価の中間年改定など医療行政には課題が常に山積している。来年夏で丸2年を迎える迫井正深・医務技監は続投するのか、はたまた後任を指名するのか引き続き注目される。

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