EPSを牛耳る子会社社長の暴走と厳代表の責任
羽田国際空港で通関を通らずに入国出来る人物は一体誰なのか? そして、その人物はEPSホールディングス(以下、EPS)代表取締役の厳浩氏とどの様な関係が有るのか? この疑惑は、非常に大きな反響を呼び、複数のメディアから弊誌『集中』に取材が入る事態となっている。更に、先月号の記事を読んだEPSグループ関係者からも弊誌に対して80通を超える告発メールが寄せられた。その多くはEPS本社や子会社の現役社員からであり、彼らはこれ迄の経営の透明性や信頼性に疑問を呈している。
その1つが取締役会の役割だ。厳氏が1人で仕切る取締役会の音声が漏洩している。厳氏が延々と持論を述べ、自慢話を語る場と化している様子が見て取れる。取締役会としての体を成していない。又、旧本社の役員会議室では中国人幹部社員なのか厳氏の友人なのかは不明だが、大声で笑い、怒鳴り声と間違う程の大声で話す姿が頻繁に目撃されているという。EPS本社は働く場所なのか? それとも厳氏のサロンなのか、といったコメントも付いている。
内部告発者からの情報に基づき、弊誌は更に疑問点を投げ掛けた。その幾つかの回答が既に届いている。その内容は今後の記事として公開する予定だ。又、EPSのライバル企業であるシミックの幹部からも「治験会社のトップが中国籍のオーナーである事は問題だ」とする厳しい指摘が届いている。
現在、厳氏は情報漏洩元を探れと指示を出している様だが、社内に反乱分子が多過ぎる。EPSの情報漏洩は社内管理の甘さや危機管理の欠如が原因だが、最大の理由はEPSの拡大過程に有る。厳氏は同業他社を吸収合併する事で拡大をして来たが、子会社化した後は、契約内容を反故にするケースが多々有り、吸収された会社経営者らは「約束が違う!」と厳氏に対する不満を募らせている。こうした経営者らはEPSの為に働く意識は微塵も無く、その不満が社員にも伝播する。社員は関東近県への出張ですら1泊するのが当たり前で、観光を兼ねて夫人同伴で出張する輩も少なくないという証言が届く。この様な無駄遣いは、EPS幹部の会社への不満から生まれ、今では全社員へ蔓延し、贅沢な出張が常態化しているのが実情の様だ。この点について厚生労働省に問うと「今回の話に有る様な治験業務に於ける無駄遣いは、製薬会社の医薬品開発費用を増加させ、結果的に薬価が引き上げの一因となる」と怒る。
インサイダー取引とSECの調査
EPSは、2021年7月9日にTOB(株式公開買付)が成立し、上場廃止となった。このTOBの理由は明確にされておらず、上場会社として地位を保つ事が出来ない複数の不正を隠す目的が有ると指摘されている。それだけでなく、今や金融庁証券取引等監視委員会(SEC)が、インサイダー取引の疑いで幹部や元幹部への事情聴取を開始している。厳氏も複数回に亘り呼び出されている。関係者の話によると「冷静に対応する一方で、苛立ちを見せる事も有り、動揺を隠そうと必死だ」と言う。厳氏は、インサイダー取引への関与を否定し、「これ迄、EPSの業務は全て三菱UFJ出身の倉橋周三取締役(仮名)に任せていた為、自分は詳細を知らない。倉橋に全権を与えている事は、幹部は皆、知っている。ましてTOB案件になれば自分の専門外で報告を受けるだけだ」と逃げを打っている様だ。しかし、インサイダー取引で利益を得たのは複数の中国人であり、彼の主張を鵜呑みにする調査官はいない。
SECは、厳氏がTOBを決定した時期を詳細に調査している。弊誌の取材に対してSECは「個別案件には回答出来ない」としながらも、「インサイダー取引きでは例え20万円の利益であっても罰則の対象となる」と説明している。事件化するのは時間の問題だろう。
厳氏が「全ての業務を任せていた」とする倉橋氏は、社内では「厳氏の秘密を知り尽くす男」と呼ばれていたが、TOB成立後に取締役の地庭俊博氏(仮名)により放逐された。地庭氏は積年の恨みを果たす。実は、上場廃止後、EPS内部では地庭氏が厳氏の弱みを突き、EPSの全権を掌握するクーデターが起きたと関係者は語る。今回届いた告発メールの中でも、このクーデターを裏付ける情報が複数有り、事実に相違ない。地庭氏の人物像だが、弊誌の取材に応じた旧東京銀行時代の部下は「彼は嫌われるサラリーマンの典型で、パワハラやセクハラを頻繁に起こす問題社員であり、エリート集団の中では異質な存在だった。円満退社とはほど遠い形で辞めた為、再就職が困難だったと聞いている」と話す。地庭氏がようやく再就職を果たしたのが株式会社メディカルライン(現在のEPファーマライン)だ。そして、そこで出会ったのが当時の社長である北塚淳一氏(仮名)だ。北塚氏は治験関連事業を手掛けていたが、厳氏の提案を受け、EPSに吸収合併された。だが、告発者によれば、北塚氏も厳氏に買い叩かれた上に契約金額が満額支払われなかった事に恨みを持っていると言う。EPSや厳氏がオーナーであるY&Gグループは、契約を軽視する傾向が強く、今後EPSと取引をする企業は、前金で対応する事を鉄則とすべきだと告発者は警告している。
東京銀行時代に問題を抱えていた地庭氏が14年にEPSの執行役員監査室長に就任した人事は笑止千万だ。本来であれば監査をされるべき人物が、他人を監査する立場に就く事など有り得ない。この人事1つを見てもEPSの法令遵守の無さが分かる。EPSの役員紹介資料には、地庭氏が東京銀行出身であるとの記載が無い。これは、彼が円満退社ではなかった事実を隠す意図が有ると見るのが自然だ。日本では退職理由が重視されるからだ。一方、北塚氏は自らの不満や恨みを晴らす為に、会社の経費を浪費し、複数の愛人を抱えていた。その維持費も会社の資金で処理していたという。当時EPS代表取締役だった田代伸郎氏と財務担当責任者だった倉橋氏は、この年間2億とも3億とも言われる私的流用を問題視し、北塚氏に対し厳重注意を行った。しかし、北塚氏は私的流用を全面的に否定した。この一件が更なる恨みを生んだ。子飼いの地庭氏に田代氏と倉橋氏の追い落としを指示する迄に至った。地庭氏の後押しも有り、北塚氏の私的流用は部下の責任と認定し、一件落着させた。不幸にも、その部下は後に解雇された。これを機に、北塚氏と地庭氏はEPSグループの乗っ取りを狙ったクーデターの準備を2人3脚で始めた。
EPSが主導する出資詐欺の疑いが……
EPSでは不祥事が多発している。田代氏も社長在籍時に金融トラブルを引き起こしている。彼は治験業務にAIを導入する時代が到来すると予見し、AIベンチャー企業である株式会社8DW(仮名)との関係を深めて行った。そして彼は8DWの社長に「東証一部のEPSの支援を受けている8DWは、近い将来の上場も夢では無い」と伝え、8DWが資金を必要としている事を知って、「EPSが業務提携し、EPSの代表取締役も出資している会社」と周囲に触れ込み、資金集めを強力に後押しした。最初のターゲットは、EPSの大株主であり、横浜でクリニックを経営する医師の北野晴夫(仮名)だった。田代氏は北野氏に対して8DWの魅力を語り、「今後EPSも応援する企業であり、自分も出資するから一緒に出資しよう」と誘った。これを信じた北野氏は4800万円を出資した。しかし、弊誌の調査では、田代氏自身は一切出資していない。又、その当時、8DWの代表は、弊誌に対し、「EPS社長の田代氏やEPSの大株主が出資してくれた。更に、EPSオーナーの厳氏も応援してくれると言っている」と説明し、弊社の関係者に出資者の紹介を依頼して来た。この情報を信じ、他にも複数の出資者が現れ、弊社の関係者も含め数社から総額1億4000万円の資金が集められた。弊社の責任は重い。しかし、この話はまだまだ終わらない。EPS内部には未だ多くの隠された事実が存在する事が明らかになりつつある。厳氏が画策した中国企業のオーナーと金融機関のトラブルについても次号で記す。
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