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第173回 浜六郎の臨床副作用ノート ◉ SGLT2阻害剤の腎保護は本当?

第173回 浜六郎の臨床副作用ノート ◉ SGLT2阻害剤の腎保護は本当?
心・腎への適応拡大で売り上げ急増

先月号では医師国家試験におけるSGLT2阻害剤を選ばせる問題点と、害反応−処方カスケードの可能性を紹介した。ダパグリフロジンは2014年糖尿病、20年心不全、21年CKDと適応が拡大され、20年度224億円から23年度876億円と売上高が急増し、売り上げトップ10入りを果たした。

日本腎臓学会は22年に、「末期腎不全には使用できないが、CKDに対して腎保護作用を示すため、リスクとベネフィットを十分に勘案して積極的に使用を検討することが適切」と推奨している。

一方、薬のチェックでは、本連載150回目(22年9月)で紹介したが、SGLT2阻害剤は、心不全に対しても、総死亡を改善する利益はなく、性器感染症やケトアシドーシス、骨折、下肢切断などの害が多くなる1)。今号では、慢性腎臓病(CKD)に対する根拠のランダム化比較試験(RCT)には、データの矛盾が多く、腎機能改善・総死亡低下効果の確実な証拠は発見できなかったことを述べる2)

CKDに対する利益は証明されていない

腎臓学会が引用し、SGLT2阻害剤(ダパグリフロジン、エンパグリフロジン、カナグリフロジン)のCKDに対する効果を検討したRCT14件を、次の問題点に注意して吟味し、除外した。

①試験結果(アウトカム)に影響を与えうる背景因子の偏りがある、②アウトカムの経時変化が不自然で遮蔽不全が疑われる、③データ上の矛盾(後述)があって信頼できない。

その結果、残ったのは、エンパグリフロジンの1件だけとなった。この1件は、過去に薬のチェック誌で検討した1)後に出版された論文である。CKD患者にSGLT2阻害剤(エンパグリフロジン)を使用しても総死亡のハザード比は1.03(95%信頼区間:0.87-1.21)と点推定値は1.0を超えていた。したがって、総死亡減少効果は認めず、利益はないと考えられた。

eGFR推移と結果の矛盾、「免除事象」

本来、eGFRが低下した集団の方が腎複合アウトカム(末期腎不全等)の発生頻度は高くなるはずだが、ほとんどの臨床試験で試験期間中のeGFRと腎複合アウトカムとの辻褄が合わない。

例えば、ダパグリフロジンのRCT(DAPA-CKD)の巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)に対するサブグループ解析では、試験全期間中のeGFRが一貫してプラセボ群よりダパグリフロジン群のほうが低いにもかかわらず、腎複合アウトカムがプラセボ群の4割も少なく、極めて不自然である。

また、プロトコル上、CKD関連事象は、疾患の進行によるとして、有害事象としての報告を免除する「免除事象」の規定があり、データ操作による可能性が否定できない。

添付文書ではeGFR45未満で中止推奨

審査報告書ではすでに指摘されているが、どのSGLT2阻害剤の添付文書にも「2型糖尿病……は、継続的にeGFRが45未満に低下した場合は中止を検討すること」と注意されているが、RCT論文から、その根拠のデータも文章も見られない。

SGLT2阻害剤には腎毒性あり

SGLT2阻害剤はいずれも毒性試験において、腎重量の増大、慢性進行性腎症、尿細管拡張、腎盂腎炎などが用量依存性に増加すると報告され、腎毒性はSGLT2阻害剤に共通する毒性である。

結論

腎毒性のあるSGLT2阻害剤を慢性腎臓病(CKD)患者にする根拠はない。

参考文献

1)薬のチェック、2022:22(102):83-86.
2)薬のチェック、2024:24 (114):76-79. 
 https://medcheckjp.org/

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