SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

ケアマネージャー試験の受験要件緩和は妥当?

ケアマネージャー試験の受験要件緩和は妥当?
ケアマネージャー試験の受験要件緩和は妥当?

この10年で介護支援専門員(ケアマネージャー、ケアマネ)の試験を受ける人数は約14万4000名から約5万6000名へと減少し、合格者は2万2000名から1万1000名になった。合格率は15〜20%と低く、介護・福祉関連資格の中でも難関の資格となっている。受験者の減少という現状に歯止めが掛からない事から、厚生労働省では2024年4月に「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会(第1回)」が行われ、ケアマネージャーの受験要件の緩和が提案された。

24年3月に株式会社日本総合研究所で行われた「介護支援専門員の養成に関する調査研究事業」の報告書によると、次の様に述べられている。「ケアマネ1人当たりの担当件数等が今と変わらない事を前提に22年度と比べると、25年度迄に約2万7000人、40年度迄に約8万3000人の上積みが必要」。現在の超高齢化社会を支える為には、多くのケアマネージャーが必要となっている事が判断出来るが、現場は実務に追われ、筆記試験の対策に十分に時間を割く事も難しい。

又、ケアマネージャーの試験を受験する為には保有国家資格又は相談援助業務の実務経験5年以上且つ従事期間が900日必要であり、受験する迄のハードルも高い。試験合格後は、都道府県が指定する施設で87時間の実務研修が必要であり、講義と実務演習を含めた16日程度の日数を要する。更に、5年毎に資格更新が必要であり、実務未経験者は54時間、実務経験者は初回88時間、2回目以降32時間の講習を受ける事が義務付けられている。

ケアマネージャーの業務内容は、介護保険サービスの利用に欠かせない計画書「ケアプラン」の作成や、利用者と介護サービス事業者との間でのサービスの調整等が主である。しかし、ケアマネを14年間、主任ケアマネを5年間務める70代女性は「事務作業が年々増加・複雑化し、行政に提出する書類の量も多くて大変だ」とこぼす。他にも、深夜や休日でも電話が架かって来る為「休む間も無い」という現場の声も聞こえて来る。今後益々その存在が必要となるケアマネを増やして行く為には、単に試験に対する間口を広げるだけでなく、こうした現場の負担を軽減する施策こそ必要なのではないか。

急増する理学療法士が生き残るには?

この15年程で理学療法士の養成校は50校増加し、理学療法士の有資格者は約15万人増加した。加えて、毎年1万人程ずつ理学療法士が誕生している事から、需要と供給のバランスが崩れ掛かっている。

厚生労働省が発表する「医療従事者の需給に関する検討会 第3回理学療法士・作業療法士分科会」の資料によると、26年頃迄は理学療法士の需要数が上回っているが、40年頃には供給数が需要数の約1・5倍になると推測。18年には人口10万人に対する理学療法士の数はアメリカと同程度で50〜100人、更に40年には人口10万人に対する理学療法士の数は278人迄増えると言われている。そんな中、日本の人口は今後減少の一途を辿り、高齢者の人口も何れ少なくなると言われている。にも拘わらず理学療法士の人口が増え続けると言う事は、理学療法士の市場価値が低迷し兼ねない事を意味している。

日本の平均年収(22年)は458万円だが、理学療法士の平均年収(22年)は431万円と平均以下。今後理学療法士の供給過多が進み、市場価値と共に給与水準が下がるとすると、理学療法士だけでの収入だけでは生活が厳しくなる事すら予想される。一昔前であれば「資格を取って手に職を付ければ安泰」とも言われたが、今ではそれも危うい。そこで日本理学療法士協会では、重点的人材育成事業として「専門・認定理学療法士制度」を開始。理学療法士協会会員の新人教育プログラム修了後、基礎理学療法、神経理学療法、運動器理学療法、内部障害理学療法、生活環境支援理学療法、物理療法、教育・管理理学療法の7分野に於いて「専門・認定理学療法士」を取得出来る様にし、活躍の場を広げる狙いだ。自己研鑽が必要なのは、どの分野でも変わらない。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

Return Top