SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

第81回 厚労省人事ウォッチング
今、目が離せないこども家庭庁幹部人事の裏側

第81回 厚労省人事ウォッチング今、目が離せないこども家庭庁幹部人事の裏側
渡辺 由美子氏

 昨年4月の発足から1年が経過した「こども家庭庁」。厚生労働省からの出向者が多く、今夏の幹部人事の行方は両方の省庁に影響を及ぼし兼ねない。本稿執筆時(6月初旬)では未だ詳細は明らかにされていないが、こども家庭庁の幹部人事の方向性を占いたい。

 最も注目されるのは渡辺由美子・長官の去就だが、結論から記すと留任する見通しだ。早々に固まっていたとみられる。本欄で何度も取り上げているが、渡辺氏は1988年に旧厚生省に入省した厚労官僚。厚労省では、大臣官房会計課長や子ども家庭局長、官房長など主要なポストを歴任。内閣官房こども家庭庁設立準備室長を経て、発足と同時に長官に就任した。同期の中でもエース格として知られた存在だ。

 子ども・子育て支援金制度を創設するに当たり、社会保障制度に詳しく、首相官邸や与党等への根回し力に長ける渡辺氏が長官に抜擢された。女性である事も多少は影響したと見られる。

 厚労省幹部は「渡辺氏は厚労省では事務次官候補とみられていた。旧厚生省出身者で初めての事務次官が渡辺氏になるというのは衆目の一致したところだった」と明かす。

 渡辺氏は今後、厚労省に戻る事は有るのだろうか。6月下旬に閉幕した通常国会で、懸案だった子ども・子育て支援法改正案が成立したものの、子ども・子育て関連予算を増やす事が引き続き求められる為、予算編成過程の機微を知る渡辺氏の手腕は必要だ。加藤勝信・元官房長官を中心に「こども家庭庁の長官経験者が厚労省の事務次官に就任したら、こども家庭庁が厚労省より下にみられてしまう」という懸念も有り、現時点で渡辺氏が厚労省に戻る可能性は高くない。

 渡辺氏が戻らなければ、厚労省は有力な事務次官候補を1人失う事になる。厚労省の中堅職員は「渡辺氏の去就はこども家庭庁の関係者だけでなく、厚労省幹部もかなり注目していた」と漏らす。

 厚労省では大島一博・事務次官が今夏で就任から2年を迎える為、交代は既定路線だ。当初は渡辺氏の就任も取り沙汰されたが、こども家庭庁長官への留任が確実視されて以降、待望論は沈静化している。今後も渡辺氏抜きで事務次官人事を考える事になれば、入省年次の若い幹部が候補となる可能性が高い。

 今夏の幹部人事でもう1人注目されるのが、熊木正人・こども家庭庁支援金制度等準備室長の動向だ。93年に旧厚生省に入省し、保険局国民健康保険課長や大臣官房会計課長、医政局総務課長等を歴任した熊木氏。支援金制度をまとめるに当たり、準備室のメンバー編成で渡辺氏がいの一番に指名したのが熊木氏だったという。こども家庭庁関係者は「社会保障制度に明るいだけでなく、緻密な作業も出来る」と評価が高い。

 ただ、法案も成立し、渡辺氏と立場が異なる為、熊木氏は1年で厚労省へ戻る方向だ。来年度以降に本格化する社会保障制度改革に向けて、熊木氏の手腕が必要になるとみられるからだ。

 渡辺氏が留任となれば、今後は「ポスト渡辺氏」が誰になるのかにも注目が集まる。引き続き女性官僚を登用するのか、民間人の抜擢も考えられるのか。この1年でこども家庭行政がどこ迄軌道に乗るかも影響しそうだ。

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

Return Top