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未来の会

第1回 保険診療のルール 〜安全で良質な医療の提供を目指して〜

第1回 保険診療のルール 〜安全で良質な医療の提供を目指して〜

第1回 B009 診療情報提供料(Ⅰ)250点

2005年WHO総会においてUniversal Health Coverage(UHC)が提唱され、「すべての人々が、適切な医療サービスを、必要なときに、支払い可能な費用で受けられる状態」と定義され採択されました。日本では1961年に国民皆保険制度が導入され、既に60年以上が経過しUHCは構築されていると言えます。実際、医療の大部分は保険診療として実施され、様々なルール(健康保険法等、健康保険法施行令等〈政令〉、療養担当規則〈省令〉、診療報酬点数表〈告示〉、通知等)により司られています。これらのルールは、先ず医療者に対し「安全で良質な医療の提供」を求めており、同時に実施された行為の算定に於いて様々な要件を定めています。しかし、保険医が必ずしもこれらのルールを正確に理解せず、誤った算定の行われている実態が有ります。本企画では、保険診療の正しい解釈をお伝えし、保険医による良質な医療の提供と共に、保険医療機関の収益の増大の一助となる事を期待しております。

 第1回は「B009 診療情報提供料(Ⅰ)250点」を取り上げます。

 共通事項として、①患者の同意を得た上で、診療状況を示す文書を添え、別の保険医療機関や市町村、施設等に患者を紹介(診療情報を提供)した場合に、紹介先・情報提供先毎に患者1人に付き月1回算定出来ます(提供先となり得る対象が意外と多い事を、是非覚えて頂きたいと思います。※表1を参照)。②紹介先・情報提供先を特定せず文書のみを交付しただけの場合、あるいは紹介先・情報提供先が特別の関係等に有る場合は算定不可となります。

 保険診療を行っている先生方で診療情報提供書(Ⅰ)を利用された事の無い保険医はいらっしゃらないと思いますが、この運用は良質な医療の提供のツールとして欠かせないものであり、保険医療機関の収益にも繋がります。その留意事項として、「医科点数表の解釈(令和4年4月版)」の中から引用し、以下の5項目をピックアップ致します。

(1)診療情報提供料(Ⅰ)は医療機関間の有機的連携の強化及び医療機関から保険薬局又は保健・福祉関係機関への診療情報提供機能の評価を目的として設定されたものであり、両者の患者の診療に関する情報を相互に提供することにより、継続的な医療の確保、適切な医療を受けられる機会の増大、医療・社会資源の有効利用を図ろうとするものである。

(2)保険医療機関が、診療に基づき他の機関での診療の必要性等を認め、患者に説明し、その同意を得て当該機関に対して、診療状況を示す文書を添えて患者の紹介を行った場合に算定する。

(3紹介に当たっては、事前に紹介先の機関と調整の上、(中略)、患者又は紹介先の医療機関に交付する。(中略)、診療情報の提供先からの当該患者に係る問い合わせに対しては、懇切丁寧に対応する。

(21) 「注8(添付加算200点:筆者注)」に掲げる退院患者の紹介に当たっては、心電図、脳波、画像診断の所見等診療上必要な検査結果、画像情報等及び退院後の治療計画等を添付する。また、添付した写し又はその内容を診療録に添付又は記載する。なお、算定対象が介護老人保健施設又は介護医療院である場合は、当該加算を算定した患者にあっては、その後6か月間、当該加算は算定できない。

(31) 「注18」に規定する検査・画像情報提供加算(イ200点、ロ30点:筆者注)は、保険医療機関が、患者の紹介を行う際に、検査結果、画像情報、画像診断の所見、投薬内容、注射内容及び退院時要約等の診療記録のうち主要なもの(少なくとも検査結果及び画像情報を含むものに限る。画像診断の所見を含むことが望ましい。)(中略)なお、多数の検査結果及び画像情報等を提供する場合には、どの検査結果及び画像情報等が主要なものであるかを併せて情報提供することが望ましい。

 患者の立場からすれば、現在の担当医が次の紹介医と事前に連絡を取り、調整を図った上で紹介されるのであれば、診療の引き継ぎに於いて大変安心感が有ります。その為「B009 診療情報提供料」の算定に於いて、紹介先の保険医療機関(必須)及び保険医(努力目標)の記載は必要要件とされています。一方、患者希望により転院する場合が有ります。仮に転院先が決定していない場合でも、診療情報提供料の算定の為には受診勧奨する保険医療機関を記載して下さい。実際の患者の受診行動と異なって(記載の保険医療機関とは異なる保険医療機関を受診した場合)いても、紹介元の医療機関の算定に於いて齟齬は有りません。

 また、(21)、(31)の様な加算となる項目は、良質な医療の提供により、保険医療機関の収益にも繋がりますので、是非把握して頂きたいと思います。


表1:紹介先・情報提供先となり得る対象一覧

Dr.の保険診療 うっかりCheck

検査又は画像診断を他に依頼した場合の診療情報提供料(Ⅰ)の取り扱い

A保険医療機関(以下:A)には、検査又は画像診断の設備が無い為、B保険医療機関(特別な関係に有るものを除く。以下:B)に対して、診療状況を示す文書を添えてその実施を依頼した。

ア Bが、単に検査又は画像診断の設備の提供に留まる場合: Bに於いては、診療情報提供料(Ⅰ)、初診料、検査料、画像診断料等は算定出来ない。尚、この場合、検査料、画像診断料等を算定するAとの間で合議の上、費用の精算を行う。

イ Bが、検査又は画像診断の判読も含めて依頼を受け、その結果をAに文書により回答した場合: Bに於いては、診療情報提供料(Ⅰ)、初診料、検査料、画像診断料等を算定出来る。

【Question】 Aが画像診断の設備を持っている場合、Bに対して、診療状況を示す文書を添えてその実施を依頼した際の診療情報提供料(Ⅰ)の取り扱いはどの様になるのでしょうか?

少なくとも画像診断の設備が有り、尚且つ画像診断管理加算(1〜3)を算定している保険医療機関の場合、他の保険医療機関に読影又は診断を委託していない事が施設基準として定められています。つまりその様な保険医療機関は、上記「ア」の依頼が出来る可能性は有るものの、依頼する側も、される側も、診療情報提供料(Ⅰ)は算定出来ない事になります。

【Check】 自施設に画像診断の設備が有り、尚且つ画像診断管理加算(1〜3)の届出を行っている場合、他の保険医療機関に読影又は診断を依頼していないか、是非確認してみて下さい。知らず知らずに、保険診療のルールに違反しているかも知れません。


 

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