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歯止め掛からぬ出生率の低下、過去最低の1・2

歯止め掛からぬ出生率の低下、過去最低の1・2
未婚率は男女で過去最高に

6月5日に公表された2023年の「人口動態統計」で、合計特殊出生率が記録の有る1947年以降で過去最低となる1・20を記録した。低下は8年連続で、出生数も過去最少の72万7277人。人口の一極集中が進む東京都は0・99と1を割り込んだ。少子化が加速している事が改めて裏付けられた。

 合計特殊出生率は、1人の女性が生涯に産む子供の数を示すもの。15〜49歳の女性の年齢別出生率を合計する。戦後の第1次ベビーブームが起きた47年には4・54を記録した事も有る。徐々に低下し、75年には2を割り込み、2005年に1・26まで落ち込んだ。第2次ベビーブーム(1971〜74年)世代の出産等で15年に1・45迄持ち直した後は8年連続で低下している。

 これ迄の合計特殊出生率の最低は2005年と22年の1・26だった。年齢別の出生率を見ると最も落ち込み幅が大きかったのは25〜29歳の女性だった。次いで30〜34歳の女性で、20〜24歳、35〜39歳も下がった。一方、40〜44歳の女性は上向いた。

 地域別にみると、合計特殊出生率が最も低いのは東京都の0・99だった。東京都の合計特殊出生率は03年に0・9987だったが、当時は小数点以下第3位を四捨五入して公表する決まりだった為、当時は1・00と発表されていた。23年は0・9907で過去最低を更新した。1を割り込んだのは東京都だけだった。

 低い順に、北海道(1・06)▽宮城県(1・07)▽秋田県(1・10)▽京都府(1・11)▽神奈川県(1・13)▽埼玉県・千葉県(何れも1・14)▽岩手県(1・16)▽栃木県・大阪府(1・19)——で東北地方と都市部が目立った。

 最も高かったのは、沖縄県で1・60だった。只、前年の1・70から大幅に下落した。次いで、長崎県・宮崎県(何れも1・49)▽鹿児島県(1・48)▽熊本県(1・47)▽福井県・佐賀県・島根県(1・46)▽鳥取県(1・44)▽山口県・香川県(1・40)——で、九州地方が高かった。只、全都道府県で前年を下回った。人口維持に必要とされる2・07を上回った都道府県は無かった。

 外国人を除く出生数は前年から4万3482人減って72万7277人。23年の政府推計よりも10〜11年早いペースで減少している。この推計では72万人台になるのは、34年(72万3000人)としていた。

 出生に関係する婚姻数も戦後最少の47万4717組で、22年から3万213組減った。50万組を割ったのは90年ぶりという。晩婚・晩産化も進み、男性の平均初婚年齢は31・1歳、女性は29・7歳で何れも前年と同じ数値だったが、第1子出生時の母親の平均年齢は31歳。前年の30・9歳から僅かながら上昇した。

死亡は過去最多で人口減止まらず

  死亡数は過去最多の157万5936人だった。出生数が死亡数を下回る自然減は17年連続で、昨年は84万8659人と過去最大の減少幅で、人口減少も合わせて進んでいる。

 人口動態統計の公表を受け、政権幹部や閣僚らがコメントを発表した。林芳正・官房長官は5日の記者会見で、「少子化の進行は危機的な状況で、対策は待った無しの瀬戸際にある。経済的な不安定さや、仕事と子育ての両立の難しさ等が複雑に絡み合っている」と指摘。「希望する方が安心して子供を産み育てるこ事が出来る社会の実現に繋げて行く」と強調した。

 武見敬三・厚生労働相も7日の閣議後記者会見で「少子化の進行は危機的な状況だ。若年人口が急激に減少する30年代に入る迄の6年間がラストチャンスだ」と述べた。加藤鮎子・こども政策担当相も同日の閣議後記者会見で「多くの方々の子供を産み育てたいという希望の実現に至っていない。若い世代が結婚や出産に希望を持てる社会を作って行きたい」と強調した。しかし、両大臣の言葉から危機感が伝わって来ない。

 海外でも出生率は低下傾向だ。韓国は23年の出生率は0・72と8年連続で前年割れし、日本よりかなり低い。シンガポールも23年は0・97と独立した1965年以来初めて1を割り込んだ。台湾も23年は0・87と低迷する。出生率が高い事で知られるフランスも1・68(23年)と日本よりも高いが、第2次世界大戦後、最低水準を記録した。フィンランドも1・26(23年)と日本並みだ。

 少子化の要因は様々で1つには集約出来ない。未婚化や晩婚化など価値観が多様化して子供を持つ優先度が下がっている事も影響している。

 マーケティングディレクターで独身研究家の荒川和久氏は6月7日に配信したヤフーニュースの記事で、「少子化とは第1子が産まれない問題なのである。婚姻が増えなければ出生は増えない」と婚姻の重要性を指摘。独自の指標として、「2000年以降、1婚姻当たり大体1・5人の子供が生まれている」とする。その上で「『20代での結婚』が増えないと出生増にはつながらない」と結論付ける。

 干支の巡り合わせで出生数が少なくなる「ひのえうま」(1966年)を下回った89年の合計特殊出生率(1・57)を受け、政府は少子化対策に本腰を入れ始めた。94年にエンゼルプランを策定し、保育所整備を盛り込んだ。2000年には子育てと仕事の両立を掲げた「新エンゼルプラン」を開始し、03年には少子化社会対策基本法を成立させた。10年代には待機児童問題の解消に取り組み、第2次安倍政権下では幼児教育・保育の無償化が進められた。若い世代が希望通りの数の子供を持てる「希望出生率1・8」の実現を掲げた事もある。26年度からは子ども・子育て支援制度が始まり、30年代初頭には子ども関連予算を倍増する事を目指す。

自治体の婚活支援進む

少子化対策の中心は保育所整備や児童手当の拡充、育児休業制度の整備等、子育て世帯向けの支援に注力して来た。只、様々な要因が絡み合う少子化だが、根本的な課題は未婚化と指摘する有識者は多い。国立社会保障・人口問題研究所によれば、20年の生涯未婚率(50歳時未婚率)は男性で28・3%、女性は17・8%で、1920年の国勢調査以降、過去最高だった。

 東京都は独自のマッチングアプリの開発を進めており、婚活支援に乗り出す。名前や生年月日、最終学歴、年収等の入力を求める。写真付きの本人確認書類や自治体が発行する独身証明書、年収が確認出来る書類の提出を条件とし、相手に求める条件等を元にAIが相性の良いと判定した相手を選び、出会いに繋げる流れだ。夏頃の本格運用を目指し、自治体の信用力を生かすのも狙いの1つだ。

 ただ、21年の出生動向基本調査で、結婚する意思が有るかどうかを18〜34歳の独身の男女に尋ねたところ、「一生結婚するつもりはない」と回答した男性は17・3%、女性で14・6%に上り、過去最高だった事が明らかになっている。同じ質問を82年から聞き取り始め、同年時点では男性は2・3%、女性は4・1%だった。02年以降、増加傾向が続いており、対策は一筋縄では行かない。

 或る人口学の有識者は「子供が少なくなれば医療や介護、年金など社会保障制度が立ち行かなくなる。そうならない為には、結婚して子供を持つという事の意味が重要になって来る。学校教育の中で、社会保障制度の意義や結婚する事とはどういう事なのかを教える必要が有るのではないか」と提唱する。

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