アートに込めた共生社会への思い
250 あさかホスピタル(福島県郡山市)
世代や障害を超え、互いの存在を受け止め、支え合う、思いやりに溢れた社会の実現を掲げる社会医療法人あさかホスピタルは、精神科領域を専門とする医療機関としては福島県内有数の規模を持つ。子供から高齢者迄、心と脳を総合的に診療するという方針を掲げ、専門外来を含む11の診察室の他、総合相談支援室や心理室、言語療法室を一体的に配置。診療や様々な相談の他、検査やリハビリプログラム等をスムーズに提供する為の体制を整えている。
病院の開設は1963年。精神科・神経科・内科の安積保養園としてスタートした。67年には知的・発達障害者の入所施設「安積愛育園」を開設し、ボールペンの組み立て等の軽作業を請け負っていたが、作業に馴染めない利用者の為に、97年頃から紙漉き、さをり織り、絵画、造形等の創作活動が始まった。障害者芸術を見直す「エイブル・アート・ムーブメント」が提唱される中、小さな展覧会を開催したり、コンテストで入選する利用者が現れる等創作活動が広がって行った。
2009 年には、それ迄事業所毎に行っていた発信を「unico(ウーニコ)」に統一してブランディングし、翌年にはパリの美術館で開催された「アール・ブリュット ジャポネ展」にもunicoの作家が参加した。東日本大震災後の14年には「はじまりの美術館」を猪苗代町に開設し、unicoに留まらず、現代アート等多様な作品を展示している。
アート活動が広がるにつれ、病院の職員の間でもホスピタルアート導入の機運が盛り上がり、病棟の増築や建て替えに合わせてアートを取り入れる様になった。20年には本館の老年期・合併症病棟「ききょう病棟」で、患者らが水族館をテーマに壁画を描くアートプロジェクトも実施した。
23年に完成したデイケアセンターや児童思春期病棟が入る「森の棟」では、60周年事業の一環として、土や水、小麦粉、テープ、ペン等身近な素材を用いその土地で感じ取ったものを描く作品で知られるアーティストの淺井裕介氏が1階メインストリートの壁一面に絵を描いた。作品はグループの事業所27カ所の土等を使った「泥絵具」で描かれ、職員も作品作りに参加した。動物や自然を描いた独特な作品が訪れた人の目を楽しませている。
デザインでのコミュニケーションには早くから注目しており、CIは1999年から実施して来たが、これも森の棟の完成に合わせて色合いを変更した。アートディレクター・平野篤史氏デザインの幸せの「鳥」をモチーフにしたマークの他、オリジナルフォントやイラストによる案内等が院内の雰囲気を温かなものにしている。
佐久間啓院長は92年の就任以来、旧来の精神病院のイメージを脱し、明るく開放的、快適で優しい療養環境を目指して来た。これからも誰もが互いに認め合い、それぞれの人達が胸を張って生きて行ける社会の実現に取り組んで行く。
250_あさかホスピタル(福島県郡山市)
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