4月の介護報酬改定の内容に反発が広がり、厚生労働省老健局が炎上中だ。訪問介護の基本報酬が切り下げられ、野党が国会で追及する他、現場で働くヘルパー達が抗議集会を開く等、抗議の輪は広がっている。「豪腕」との呼び声が高く、政府・与党内で評価されて来た間隆一郎・老健局長もさすがに気落ちしているという。
介護報酬は春闘での賃上げ等が期待され、物価高騰が収まらない影響もあり、全体で1・59%のプラスだった。0・88%のプラスだった診療報酬を上回り、年末の予算編成の段階で介護業界からは歓迎の声が上がっていた。
しかし、介護報酬の改定内容の詳細が固まった1月末に、身体介護サービスや生活援助サービスを中心に訪問介護の基本報酬は2%強引き下げられることが明るみに出ると、状況は一変した。
厚労省が訪問介護の基本報酬を切り下げたのは、特別養護老人ホーム等の施設系サービスがマイナス1%前後と赤字に転落した一方で、訪問介護は7・8%の黒字を確保していた為だ。
ただ、これにはカラクリが有る。介護業界の関係者は「ヘルパーが施設の入居者を巡回するタイプの併設型は儲かっているが、高齢者宅を1軒1軒回る様なヘルパーは寧ろ赤字だ。これらを一緒くたにしたのが原因」と声を潜める。
「策士策に溺れる」。厚労省内では豪腕として鳴らし、訪問介護の引き下げを主導した間氏を揶揄する声が密かに囁かれている。老健局のベテラン職員は「訪問介護は黒字を確保しているのだから、引き下げるのは当然だ」と間氏を庇う。別の中堅職員も「処遇改善加算を高く設定しているので、加算を取ればトータルでは高くなる」と理解を求める。
ただ、介護報酬改定を機に一部の職員からは間氏への不満も聞こえて来る。或る中堅職員は「優秀なのは認めるが、あまり下の意見を聞いてくれない」とぼやく。別の若手職員は「優秀過ぎて真似出来ないし、間局長のノウハウも伝承されていない」と明かす等、老健局は揺れている。
OBからも苦言が相次ぐ。老健局で幹部経験の有る厚労省OBは「要介護状態となっても、住み慣れた地域で自分らしい生活を最後まで続ける事が出来る様に地域内で助け合う『地域包括ケアシステム』に逆行する」と批判。別の元幹部も「基本報酬を下げるというメッセージ性を考えるべきだった。加減算を使う等、やり方は幾らでも有った筈だ」と手厳しい。こうした批判を耳にしたのか、或る職員によれば、「さすがの間局長もここ最近は心なしか元気が無いようだ」と明かす。
今夏の幹部人事では、伊原和人・保険局長(1987年入省)の事務次官への昇格が確実視されているが、問題は来夏以降の事務次官レースの行方だ。その筆頭格が90年入省の間氏である。対抗馬としては、同期の村山誠・官房長や鹿沼均・政策統括官がおり、ライバルは手強い。
訪問介護の報酬切り下げの結果が具体的に出始めるのはこれからだ。在宅系の事業者が相次いで倒産し、在宅介護難民が続出すれば甚大な影響を及ぼし兼ねない。そうなれば必然と間氏の事務次官への道に黄色信号が点滅し始める。正念場は未だ未だ続きそうだ。とは言え、彼をよく知る厚労省OBは、「彼は十分に乗り越えられる」と太鼓判を押す。
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