反ワク・陰謀論者にされた人々の反撃
この世には陰謀論者が確かに存在する。政府のやることは全て悪だと決めつけて、突飛なデマを流す人々がいる。病気ゆえの被害妄想を募らせて、CIAの謀略や集団ストーカー被害を訴える精神障害者もいる。だが、社会を揺さぶる陰謀や悪巧みが存在しないわけではない。戦争や紛争の類は真にそれだが、2020年から3年以上続いたコロナ騒動でも、mRNAワクチンを巡るおかしな動きがあった。効果や安全性の確認が十分でないのに、「思いやりワクチン」等の暑苦しいフレーズが宣伝され、メリットばかりが強調された。懸念や被害を語る人たちは「陰謀論者」や「反ワク」扱いされ、SNSなどで吊るし上げられた。
この展開には既視感がある。筆者は読売新聞の記者時代、向精神薬の多剤大量処方、過剰診断、誤診の問題などに切り込んだ。うつ病患者の異常な急増の背景に、製薬会社の販売戦略があることもいち早く記事にした。薬の副作用を伝えない雑な診療も批判した。そのため筆者は、現状に甘んじる医療者たちから「カルト信者」や「反精神医学」のレッテルを貼られたのだが、結局どちらが精神医療や患者のためになったのか、今さら述べるまでもない。
新型コロナ対策として、政府がワクチン接種に注力したことは非難できない。しかし、タレントやユーチューバーを使って接種のメリットを宣伝する一方で、ワクチン接種後の死亡事例が前例のない数に及んでも「重大な懸念は認められない」と無視し続けた姿勢は異常である。何らかの企みを疑われても仕方がない。
21年6月下旬に収録された「はじめしゃちょー」のユーチューブ動画で、ワクチン接種推進担当大臣だった衆議院議員の河野太郎さんは、「アメリカで2億回くらいコロナウイルスのワクチンを打っているが、死んでいる人は1人もいない」と言い切った。しかしこの時、日本国内では既に接種後の死亡報告が254件寄せられていた。因果関係はこの時点で不明でも、無視できる数ではない。
また、河野さんが根拠にしたとみられる米国疾病対策センター(CDC)の当時の報告は、(2億1100万回の時点では)ワクチンが死亡に関係したという証拠は見つかっていない、という内容であり、接種後の死亡事例をゼロと断言したものではないことが、衆議院議員の原口一博さんの調べで分かった(24年4月末時点)。河野さんは当時、反ワクのデマに騙されるなと国民に訴えていたのに、自ら発信するデマにはずいぶん寛容だったのだ。
21年10月、2回接種を終えた神奈川県鎌倉市の野球少年(13)が、約4時間後に死亡した。今年、予防接種健康被害救済制度の死亡認定を受けたが、家族は今も無理解に苦しめられているという。鎌倉市議の長嶋竜弘さんは4月の臨時会でこう訴えた。
「ご遺族は、彼に起こった事実を公表すること、健康被害で苦しむ方の1日も早い救済と真相究明を強く願っている。ご心労はいかばかりかと思うが、(接種を推進した行政が)お気持ちに寄り添うことは皆無な状態である。他人事、見てみぬふり、くさいものには蓋、そんな冷淡な対応である」
リスクや重大な被害を隠し、ワクチン接種に邁進した国を訴える集団訴訟が、4月に東京地裁で始まった。悪いのは国や自治体だけではない。長いものに巻かれ、勝ち馬に乗ることしかできない昨今の腰抜けマスメディアも同罪である。
ジャーナリスト:佐藤 光展
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