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未来の会

249 日本海総合病院 (山形県酒田市)

249 日本海総合病院 (山形県酒田市)

地域を支えるアートで結ばれた絆
249 日本海総合病院 (山形県酒田市)

山形県北西部、庄内二次医療圏の中核となる日本海総合病院は2008年、県立日本海病院と酒田市立酒田病院が統合して設立された。地域の過疎化や高齢化が進む中、病院統合のモデルケースとして全国から注目を集め、その後も全国有数の地域医療情報共有ネットワークである「ちょうかいネット」の運用や電子処方箋モデル事業に取り組む等、ICTによる効率化に取り組んでいる。一方で、ハイブリッド手術室を整備し、手術支援ロボットのダビンチサージカルシステムを導入する等、高度先進医療にも取り組んで来た。

そんな日本海総合病院で、東北芸術工科大学(山形市)の学生とのホスピタルアート活動が始まったのは16年。有賀三夏講師(当時)から「ホスピタルアートを学ぶ学生の作品を展示したい」と声を掛けられたのが切っ掛けだった。「美大生が社会貢献出来る場所が乏しい。患者の為に作品を作る機会が有れば、学生も張り切るのでは」という有賀講師の提案を病院も前向きに検討。「病院内に気持ちが明るくなる空間を作ると共に、学生の教育にも協力したい」と、病院1階のホスピタルストリートで学生の作品を展示する事を決めた。

病院ではこれ以前の13年から酒田市美術館との共催でワークショップを開く等しており、2階のホスピタルストリートで患者が制作した作品や鉄道写真家の中井精也氏の写真の展示を行って来た。しかし、数多くの作品を常設展示するのは初めての試みだった。

最初のホスピタルアートは「ともだちモンスター」をテーマに、絵画や版画を含む52点の作品を展示。友達になってみたいと思えるモンスターを、思い思いに描いた作品で、患者からは「落ち込んだ気分が癒やされた」「廊下を通るのが楽しくなった」といった声が上がる等、大いに喜ばれた。

新型コロナウイルス感染症の拡大で医療が逼迫した時期には、ホスピタルアートの活動に参加するメンバーから「患者や医療スタッフの心を明るくしたい」と虹を描いたちぎり絵が届けられ、患者や家族にも窓ガラスにちぎり絵を貼ってもらう「虹プロジェクト」を行い、互いに励まし合った。

又、院内に患者や家族の憩いの場所が少なかった事から、使われていなかったエントランスの中庭をオープンテラスとして改修し、「ナカニワテラス」と名付けて開放した。テラスには植栽に加え、ウッドベンチや丸テーブルと椅子が配置され、自由に寛いだり散歩を楽しむ事が出来る。地域の農家や花店、青果店等がテラスに出店する「ナカニワマルシェ」も定期的に開かれ、美味しい野菜や果物、観葉植物、花等が手頃な値段で手に入るとして、多くの患者が楽しみにしている。

地域医療を取り巻く環境が厳しさを増す中、病院は2024年に改定した基本理念で「思いやりの心」を掲げた。先進医療の推進と共に、アートで人と人の心の絆を結びながら、地域住民の生命と健康を支えて行く。


日本海総合病院 (山形県酒田市)

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