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未来の会

人口減少時代での医療と防災とは
持続可能社会の実現へ構造改革を

人口減少時代での医療と防災とは持続可能社会の実現へ構造改革を
古川 元久(ふるかわ・もとひさ)1965年愛知県生まれ。88年東京大学法学部卒業、大蔵省(現財務省)入省。米・コロンビア大学大学院で国際関係論を学ぶ。94年退官。96年衆院議員に初当選し、これ迄9期連続当選。国家戦略担当相、経済財政政策担当相等を歴任。

今、日本の社会は大きな転換点を迎えている。長く続いた金融緩和の出口が見え始め、経済を取り巻く環境が変わろうとしている。一方で、少子高齢化によって人口が減少していく中、働き手不足が深刻になりつつある。医療界でも「医師の働き方改革」が始まったが、医師不足を解消し、医療サービスの低下を防げるのか、先行きは見通せない。国民民主党の衆院議員、古川元久氏は、民主党政権時代は内閣官房副長官や国家戦略担当大臣等を歴任し、現在は党国会対策委員長の要職にある。医療界や日本社会の課題を議論する「日本の医療の未来を考える会」の国会議員団メンバーでもある古川氏に政治信条や医療界の課題等について話を聞いた。


古川 切っ掛けは30年前、米・コロンビア大学に留学をしていた頃です。当時、日本ではバブルが崩壊して、日本経済の先行きの見通しは暗かった。でも今とは違い円高で、アメリカの生活は日本よりずっと良かった。そこで、もう日本には帰らずにウォール街にでも転職して、このままアメリカに住もうかな、という気持ちに傾いていました。そんな時にふと、留学前にロータリークラブの方達に開いて頂いた壮行会で、建築家の芦原義信先生がご自身の留学時代の話をして下さった事を思い出したのです。その時先生は、「自分が留学をしたのは戦後のアメリカ占領時代。1ドル360円の時代で、何でも高かった。アメリカでは、日本には未だ無かった冷蔵庫が家庭に在り、中には食べ物がふんだんに詰まっていた。ある時、電話ボックスに財布を忘れたが、翌日行ってみるとお金も取られず、そのまま残っていた。当時の日本は食糧難で、治安も悪かった時代。そんな時に豊かで安全なアメリカ社会を見て、いつか日本もこうした社会にしたいと思いながら帰って来て頑張ったんだ」と仰ったのです。その言葉が蘇り、自分が今の様な生活が出来るのは戦後の焼け跡の中から日本を復興させた先人達の努力の賜物と気付きました。そうして築かれて来た豊かな日本を、自分達の世代で食い潰してはいけない、自分達の世代も頑張って、少しでもいい社会を次の世代にバトンタッチしなければならない。その思いが、私の政治の原点に有ります。

——現在は国民民主党に所属されています。

古川 元々無所属で活動していましたが、最初の選挙の直前に旧民主党が結党される事になり、鳩山由紀夫さんに誘われました。「創設メンバーの1人になれば理想の党を作れるのではないか」と思い、結党に参加して初当選。以来、民主党の流れを汲む民進党、希望の党、そして国民民主党に所属して来ました。その後、立憲民主党との合流を巡る協議の中で、両党は一度解党しました。この時点で私が初当選以来所属して来た民主党の流れは断絶しました。従って今の国民民主党は、名前こそ同じですが全く新しい政党です。私にとって今の国民民主党は「第2の創業」とも言っていい存在です。

——旧民主党結党時は二大政党論が盛んでした。

古川 平成時代の政治改革では、選挙制度を変えて二大政党を作ろうとしました。小選挙区になれば二大政党が実現出来るのではないかと考えたのです。しかし、世界中を見ても二大政党の国はアメリカとイギリス位。アメリカは南北戦争以来の政治的な対立が有り、イギリスには階級社会に基づく対立が有る。つまり、この2国は元々二大対立的な社会風土が有って、政治体制や選挙制度が出来ている。それに対して日本にはそういう社会風土が無い。そう考えると、二大政党制は日本の風土には合っていないと思います。当時、小選挙区導入を決めた与野党のトップは細川護熙さんと河野洋平さんでしたが、河野さんは最近、明確に「失敗だった」と仰っています。細川さんも「元々二大政党にするつもりは無く、穏健な多党制を考えていた」と仰っています。無理に二大政党制を作ろうとした事が、寧ろ今の政治不信に繋がっているのではないでしょうか。

人口減少が日本の課題の根本

——国会で災害対策特別委員会に所属されています。

古川 政治の一番の使命は、国民の命と暮らしを守る事です。災害で国民の命や暮らしが脅かされた場合でも、それらを守れる様にする事は政治に求められる重要な役割の1つです。私の地元の名古屋でも、物心付いた頃から「東海大地震が起きる」と言われて来ましたし、いつかは必ず起きるでしょう。災害は何時起こるか分かりませんから、「備え有れば憂いなし」で、しっかりと備える事が大切です。そうする事で被害も最小限に抑えられます。

——災害からの復興には何が大切なのでしょう。

古川 私は、日本社会に於ける根本的な構造問題は、人口減少であると捉えています。災害からの復興を考える際も、被災地を元に戻す事しか考えていないと、逆に人口減少に拍車を掛け兼ねない。被災地の復興は、只単に元に戻すだけではなく、地域の将来的な人口動態を踏まえ、如何に将来的に持続可能かという事を考えなければなりません。元日に大きな地震が起きた能登半島も、人口が減少し高齢化率の高い地域です。こうした地域に、元居た人々を戻すだけでは将来は見えません。例えば復興を機会に、ここに移住する人が増える様な施策が必要です。今国会で2地域居住を推進する法律が成立しました。人口減少対策として2地域居住を進める事も必要でしょう。


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