塩崎彰久・厚生労働大臣政務官に対する省内の評判が上々だ。厚労大臣を務めた父・恭久氏に振り回された厚労官僚は「父親と違ってリーズナブル。我々の立場や状況をよく理解してくれている」と明かす。47歳と若く、将来が期待されている彰久氏は、厚労行政に今後どの様な影響を及ぼすのか。
祖父から続く政治家一家に育った彰久氏の元々の出自は弁護士だ。松山市内にある進学校、愛光中・高校を経て、東京大法学部を卒業。司法試験に合格し、米・スタンフォード大にも留学した。帰国後、大手法律事務所に入所し、危機管理やコンプライアンス分野、スタートアップ企業の支援を中心に手腕を発揮した。周辺によれば、「弁護士報酬は相当な額に上っていた」という。
恭久氏が官房長官に就任した際、官房長官秘書官を経験したが、政治家に転身したのは2021年10月の衆院選。愛媛1区から出馬して初当選を果たしたが、直接の切っ掛けはその年の10月に恭久氏が政界を引退した事だ。菅義偉政権から岸田文雄政権に交代し、内閣支持率も比較的高い中、追い風に乗って選挙を勝ち抜いた。
当選後は実務能力の高さを見せ付け、様々なプロジェクトの事務方で責任者を任された。特に、自民党デジタル社会推進本部web3プロジェクトチーム事務局長等、デジタル分野に関心が高い。党内での下働きを経て、昨年9月に当選1回生ながら厚労大臣政務官に抜擢された。
医療政策分野を担当し、自身の得意分野を生かして、「ヘルスケアスタートアップ等の振興・支援策検討プロジェクトチーム」を立ち上げる等、新米の政務官らしくない働きを見せる。新型コロナ対策を検討する「アドバイザリーボード」が3月末で廃止されるのが決まると、尾身茂氏ら手弁当で政策提言↘して来た専門家への感謝状贈呈を武見敬三・厚労相に進言する等、細やかな気配りにも心を砕く。自民党の或る秘書は「比較的穏やかで腰も低い。地元でも評判は悪くないらしい」と評す。
運も引き寄せる。派閥は清和会に所属し、政治資金パーティーの裏金問題に巻き込まれそうになった。当初、政権から厚労大臣政務官を辞任するよう促されていたが、よくよく調べたところキックバックが全く無い事が判明。政務官を続投した。↖
本省の或る課長は「政策の理解度が高く、我々が出来るところと出来ないところをきちんと心得てくれている」と絶賛。「父の恭久氏はとにかく猪突猛進に突き進み、我々としても手を焼いた部分が多かったが、彰久氏はその様な無茶振りはして来ない」と付け加える。一方で、省内からは「あまり目立っておらず、よく分からない」(別の課長級職員)という声も有る。
派閥でもその経歴や手腕を買われ、清和会の解散手続き業務等を取り仕切る彰久氏。厚労大臣政務官は次の内閣改造等で交代だろうが、万能型の政治家として各分野で活躍する可能性は高い。ただ、ヘルスケア分野を始め、社会保障制度の持続性等にも関心を寄せる彰久氏は今後も厚労行政に関わって行くと見られる。
恭久氏を反面教師にしているかの様な立ち居振る舞いの彰久氏だが、大手紙記者は「今後はバランスの良さを発揮しつつも、大きく羽ばたいて行くには恭久氏の様な『豪腕』も時には必要だろう」と指摘する。「是々非々」の政治家を目指して欲しいものだ。
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