子供を見守る家族に心安らぐ場を
248 榊原記念病院 (東京都府中市)
日本初の心臓外科手術を行い、世界的権威として知られる故・榊原仟(しげる)・東京女子医科大学教授が設立に尽力した榊原記念病院は、1977年の開院以来、大人から子供まで多くの心臓病患者を救って来た。榊原教授は、心臓手術の費用が捻出出来ない為に小さな子供の命が失われる事の無い様にと、「あけみちゃん基金」(産経新聞厚生文化事業団)の創設に尽力した事でも知られる。
その榊原記念病院に2023年12月、入院中の子供に付き添う家族の為の「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム」(以下、ファミリールーム)が開設された。ファミリールームは、病院に隣接する滞在施設を全国12カ所で運営している公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン(DMHC)が運営する。院内に家族向けの休憩施設を設けるのは今回が初めてだ。
新生児や乳幼児の心臓手術は術後の療養期間が長いケースが多く、授乳や母子の愛着形成、又、泣く事による心臓発作のリスクを避ける為にも、家族らの付き添いは欠かせない。その為、家族が少しでも良いコンディションで子供と向き合える様にと、小児病棟やPICU、NICUが在る5階の一角にファミリールームが設けられた。近くには病院が設置した家族用シャワー室やランドリー室も在る。
ファミリールーム内には搾乳・化粧室の他、飲食スペースやミニキッチン、仮眠が可能なマッサージチェアも有る。ミニキッチンには電子レンジ2台、トースター、ケトル、コンロ、コーヒーメーカー等の調理機器に加え、冷蔵・冷凍庫も有り、企業や団体、個人の支援者から寄せられた軽食や冷凍食品、飲料等も無償で提供される。利用出来るのは入院する小児患者に付き添う家族で、運営時間は9時から21時迄。ミニキッチンや搾乳・化粧室は子供を寝かし付けた後に利用出来る様、24時間開放している。
又、小児科では20年にクラウドファンディングで資金を募り、フロアを改装。家具やプレイルームの遊具等を一新し、子供達がより日常に近い空間で成長出来る様にする等、入院患者だけでなく、外来患者やその家族が少しでも不安を和らげられる様、院内環境の整備にも取り組んでいる。
院内の壁面は居住性を意識して木目調を主体にし、内装も落ち着いた雰囲気を心掛けた。院内の各所に「ヒーリングアート」として絵画を飾った他、明るく広い空間を確保した1階外来ロビーや、病棟ラウンジ、デイルームに鉢植えの植物を置き、患者や家族の憩いの場としている。1階のリハビリ室は大きな窓から明るい光が差し込み、中庭もリハビリ庭園として活用されている。
学生ボランティアも活発に活動しており、クリスマス会等のイベントは入院中の子供達の楽しみの1つだ。病院施設は、徹底したIT化とベッドサイドナーシングの追求等で05年に医療福祉建築賞を受賞した。1人でも多くの心臓病患者を救う事に生涯を捧げた榊原の意志は、これからも引き継がれて行く。
248_榊原記念病院 (東京都府中市)
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