映像やデザインで子供に癒やしを
247 東京医科歯科大学病院 (東京都文京区)
江戸時代に学問所が置かれ、日本の近代教育発祥の地とされる東京・湯島に建つ東京医科歯科大学病院は、約100年前から献身的な医療の提供と先進的な医学研究に取り組んで来た。大学が2024年10月に東京工業大学と統合するのに伴い、病院名も「東京科学大学病院」と改まる。
同病院がホスピタルアートを取り入れた歴史は長く、1994年、周産・女性診療科が最初だった。ユネスコの提唱で「Arts in Hospital国際会議」が発足したのを機に、デザイナーのアナグリウス ・ケイ子氏に外来や病棟のアート・デザインを依頼。不安を抱える患者や家族に明るく前向きな気持ちを持って貰おうと、壁等に花のデザインをあしらったり、作品を飾ったりしたのが始まりだ。そうしたアートによる環境作りの伝統は続き、2022年にはアフラック等の協力で小児科病棟の廊下の壁に花をモチーフにしたデザインが描かれた。絵の中には数字や世界各国の言葉が隠されていて、子供達が遊び感覚でアートに触れ合える工夫も有る。
その前年の21年、小児科ではコロナ禍で病気と闘う子供に笑顔になって貰おうとプロジェクションマッピングを常設する取り組みも行った。小児科病棟の5カ所に大小5つの映像を投影する計画で、費用はクラウドファンディングで集められた。9月に協力を呼び掛けると、僅か5日で目標の300万円を突破。この為、クリスマス限定のイベントや外来スペースへの投影機の設置も計画し目標を500万円に引き上げた結果、10月末には目標を達成し、支援者は計405人、寄付金の総額は529万7000円にもなった。
病院では、その年のクリスマスに合わせて小児科病棟に投影機を設置。映像のデザインは、映像/メディアアート作家の上平晃代氏や東京藝術大学大学院映像研究科のデザイナーらが制作した。クリスマス当日には、よじ登るネズミや眠るシロクマ等の映像を病棟内の壁や扉に投影した他、中庭では病院の外壁に大きなクリスマスツリー等を映し出した。又、子供が楽しめる様に「遊び」の要素も取り入れようと、子供の動きを真似るネズミの映像や、ポンプ式の手指消毒器の前に手をかざすと手の平に映像が映し出される仕掛け等も取り入れた。その後、小児科外来にも投影機を常設。扉や壁に映し出されたシロクマやオコジョ等のイラストが来院する子供達の目を楽しませている。
このプロジェクションマッピング制作を契機に、東京医科歯科大学と東京藝術大学は23年8月10日、医療と芸術の融合によるイノベーション等を目指して包括連携協定を結んだ。既に東京藝術大学とは、同年6月から理想の病院作りを目指す「GEIDAI×TMDU わたしたちの病院づくりProject」を進めている。今後は芸術家を対象とした医学研究や医療に関する研究も進めて行く予定だ。東京工業大学との統合で医学と理工学の融合によるハイレベルな医療を目指す病院は、芸術の力も取り入れながら癒やしの有る医療を目指して行く。
アート協力:アフラック、NPO法人アーツプロジェクト、東京藝術大学大学院
247_東京医科歯科大学病院 (東京都文京区)
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