B型肝炎訴訟横領で医療界から吹き出す弁護士不信
集団予防接種での注射器の連続使用により、40万人以上が感染したとされるB型肝炎ウイルス。ウイルスに持続感染した人等に国が責任を認めて和解金を支払う「B型肝炎訴訟」が全国で起こされているが、これを手掛ける弁護団でとんでもない不祥事が発覚した。
「不祥事が発覚したのは、九州の熊本弁護団。今年1月、団長を務めていた弁護士の内川寛氏が、弁護団の口座から約1億4000万円もの大金を着服していた事が分かったのです」(地元紙記者)。
弁護団の口座には国から和解金が振り込まれる事になっていて、そこから原告への和解金と弁護団の報酬等が分配されている。原告への和解金はきちんと原告に振り込まれていたが、弁護団の他の弁護士への報酬が少なかった事から調べたところ、口座に殆ど預金が無い事が発覚した。「内川氏はこの内かなりの部分を事務所の経費や自宅のローン返済などに私的流用していた様で、熊本弁護士会等は会見して謝罪すると共に、業務上横領の疑いで刑事告訴する方針を示している」(同)。
ウイルス感染した上にB型肝炎や肝がん等に苦しむ原告への金銭的被害が無かったのは、せめてもの救いではある。だが、これほどまでの大金を預かる口座なのに、2011年の弁護団発足以降、監査や会計報告が一度も行われていなかったというから驚きだ。
全国B型肝炎訴訟弁護団のサイトによると、昨年10月11日現在で提訴したのは全国の3万5634人(内3万2640人で和解が成立)。熊本地裁に提訴した原告は546人で、451人の和解が成立している。地裁ベースの統計の為熊本弁護団が扱った人数とイコールかは分からないが、それほど多くの原告がいるエリアではない事は確かだ。
この統計を見て溜息をつくのは、都内の勤務医の男性だ。「451人の和解金総額がいくらで、その内弁護士報酬がどの位かは分からないが、少なくとも約1億4000万円を横領出来たという事は相当な和解金を得ている証左だ。弁護士事務所が派手にテレビCMを流している理由が分かった」。
確かにテレビでは、「国から最大3600万円の給付金が受けられます」と案内するB型肝炎訴訟を手掛ける弁護士事務所のCMをよく目にする。健康被害を受けながら救済される事を知らない患者への啓発になっているのは事実だが、今回の不祥事で「訴訟ビジネス」を疑う医療界からは、こんな恨み節も聞かれる。
「同じ患者を助ける仕事をしているのに、こちらは法律や診療報酬に縛られてきゅうきゅうとしている。弁護士はいいですね」
医療過誤事件等を巡っても対立しがちな医療界と法曹界。今回の不祥事により、医療界の弁護士不信は益々高まりそうだ。
妊婦に接種 RSワクチンは普及するか
妊婦に接種する事で生まれて来る子供を守る「母子免疫ワクチン」として、米ファイザーが開発した「RSウイルスワクチン」の製造販売が1月、承認された。
「妊婦が接種すると母体のRSウイルスに対する中和抗体価が上がり、胎盤を通じてそれが胎児に移行する事で、生まれて来る赤ちゃんのRSウイルス感染や重症化を防ぐ事が出来るとされている」(都内の小児科医)。
RSウイルスは2歳頃迄に殆どの子供が感染するとされるが、生後半年以内に感染すると肺炎等を起こして重症化し易い。「この時期の赤ちゃんを守れる画期的なワクチンとして、小児科医の間では大きな期待が寄せられている」(同)という。
ただ、何かと健康状態に気を使う妊娠中に接種する事で不安の声が有るのも事実だ。
「コロナ禍では、重症化し易い妊婦のワクチン接種が優先して呼び掛けられたが、新しいワクチンという事で接種を躊躇う女性も多かった」と前出の小児科医は振り返る。今後、この新しいワクチンを広めるには丁寧な説明が必要だ。
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