霞が関の中堅官僚と日本を代表する企業のエリートサラリーマンが共に研修する非公式の場が有る事は一般に知られていない。厚生労働省でも将来を期待された官僚がこれら複数の研修先に派遣されているが、その後の官僚人生はどうなって行くのか。今まで公になっていなかった実態を明らかにしたい。
先ず界隈で有名どころとしては「フォーラム21」という組織が有る。ホームページでは、「21世紀の日本、世界を担う新しい指導者を育成する」との目標を掲げ、研修の目的として「様々な分野にわたる幅広いヒューマンネットワークを形成する」「既成概念、固定観念(中略)などをブレークスルーするための集いの場を提供する」と記している。
富士ゼロックス社長だった小林陽太郎氏やユーエスコーポレイション社長を務めた梅津昇一氏、当時日本電信電話の真藤恒社長らが、1987年に設立した。2022年10月迄に1191人が研修を修了。厚労省や財務省、経済産業省など中央官庁が参加する他、ソニーや東京電力、東レ、日本生命、三菱商事、三井不動産など錚々たる大手企業の名が並ぶ。
フォーラム21に参加した事の有る官僚は「中央官庁では課長手前の企画官ポストの40歳前後が参加するケースが多い。民間企業も同年代が多く、課長クラスが多い」と明かす。
厚労省から過去には、村木厚子・元事務次官や香取照幸・元雇用均等・児童家庭局長らが参加していたという。最近では矢田貝泰之・大臣官房参事官(人事担当)や吉田一生・大分県副知事、水谷忠由・医薬産業振興・医療情報企画課長ら、将来を嘱望された人材が連なる。財務省では新川浩嗣・主計局長や大沢元一・主計局総務課長らも嘗て参加した。
研修は仕事の合間を縫って土日に実施される事が多く、それぞれテーマを持って取り組むという。1年間を通して研修が有り、最終段階では「卒論」も発表する。前述の官僚は「今でも同じ期に参加したメンバーと集まって飲み会を開く等交流は続いている。他省庁との繋がりも出来、人脈を広げるのにとても役立った」と振り返る。
派遣する側の意図はどうか。中央官庁で人事課長を経験した元幹部は「将来的に人脈を広げて貰いたいと思う人材を送り出している。結果的に出世しているケースが多いが、派遣イコール出世という訳ではない」と明かす。
こうした組織はフォーラム21だけでなく、「浩志会」という組織も同様の狙いを持って運営されている。現在の会長は松元崇・元内閣府事務次官なので、こちらはやや役所色が強めだ。中央官庁が参加し、三菱地所や富士通、東急、花王など大企業が居並ぶのも同様だ。過去には、伊原和人・保険局長が参加した事が有るという。
前述の人事課長経験者は「昔は大物官僚が呼び掛けて省庁を横断する勉強会が開催されていたが、今はそうしたものは無くなりつつある。官僚として視野を広げるという意味で、この様な研修の場はとても大事だと思う」と評価する。
派遣される官僚は必ずしも全員が出世している訳ではないが、各産業界の有望な人材と交流して揉まれる事で、一回りも二回りも成長するケースが多いという。今後も「出世の登竜門」の様な存在として、こうした研修の場が活用されて行くのだろう。
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