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遂に日本でも「共同親権」認められるか

遂に日本でも「共同親権」認められるか
医療界からは不安の声

離婚後も父母双方が子供の親権を持つ「共同親権」を巡り、世論が大きく揺れている。法務大臣の諮問機関である法制審議会の家族法制部会は1月末、「共同親権」を導入する民法改正要綱案をまとめ、開催中の国会に法案が提出される予定だ。ところが、このニュースが報じられると、インターネットを中心に反対の声が沸き起こり、医療界や法曹界からも慎重論が出る事態になっている。「共同親権」とはどんな制度で、何故反対の声が上がっているのだろうか。

 「日本ではこれ迄、未成年の子供を持つ男女が↘離婚した場合、親権は父親又は母親の片方にしか認められていなかった。今回、改正が検討されているのは、これ迄の単独親権だけでなく、父母の両方が親権を持つ共同親権も認めようというものだ」と説明するのは、全国紙の司法担当記者だ。

「共同親権」を巡る議論 子供への影響

 そもそも親権とは、子供が成人する迄育て上げる権利と義務を指す。もう少し嚙み砕いて説明すると、子供の世話は勿論、教育を受けさせたり、何処に住むかを決めたり、財産管理等を行う権利と義務の↘事を言う。

 結婚していれば父と母の両方に親権が有るが、未成年の子供を持つ夫婦が離婚する場合は、父と母のどちらが親権を持つかを決めなければならない。法改正がされれば、離婚後も共同親権が認められる事になり、より安心な制度になるように見える。「もちろん法改正後も、これ迄の様な単独親権を選ぶ事も出来る」と前出の記者は言葉を補う。しかし、要綱案がまとまった事が報じられると、一気に反対論が噴き出したのである。

 これ迄は離婚の際に、父と母のどちらも親権を↖主張して譲らず、揉め事が長期化する事も多かった。共同親権が選べる様になれば、こうした争いが避けられそうだが、何故反対論が噴出したのか。

 「そもそも共同で子供を育てられる状況であれば、離婚を選びません。離婚しようという時点で、協力して子供を育てられる環境ではないと言う事ですよ」と吐き捨てるのは、離婚訴訟を手掛ける都内の弁護士だ。共同親権に反対する声を追って行くと、この弁護士の様に「共同で育てる」のは現実的ではないと言う主張が目立つ。

 「共同親権になれば、子供に会いたいと言う相手からの面会交流の要請も断れなくなる。子供の進学や引っ越し等、様々な場面で父と母の同意が必要となるだろう。離婚してようやく〝他人〟になれたのに、共同親権だからと言う理由で連絡を取り続けないといけないのは大きな負担だ」(同弁護士)

 要綱案では、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待等の「子の心身に害悪を及ぼす恐れ」や「父母の一方が他方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受ける恐れ」等が認められた場合には、裁判所は共同親権を適用しないとしている。だが、「離婚訴訟では、離婚を求める側が相手にDVや虐待があったと主張するケースが多いが、事実関係を証明するのが難しい事もある。裁判所がそうした事態を正しく判断出来るのだろうか」(同)と疑問の声は根強い。裁判所がどの様に判断するか分からない中で、共同親権が子供に悪影響を与える事を危惧する当事者や関係者が多いのは当然と言える。

 離婚訴訟等の実務を扱う弁護士有志「共同親権の問題について正しく知ってもらいたい弁護士の会」が反対の声を上げている他、司法書士約2000人が参加する「全国青年司法書士協議会」も反対を表明した。

 医療界からも反対の声が上がる。「日本産科婦人科学会、日本法医学会、日本法医病理学会、日本小児科学会の4学会が昨年、連名で要望書を出している」と解説するのは医療担当記者だ。「4学会の主張は、子供に医療が必要になる場面で父母双方の同意を得なければならないとなれば、必要な医療が受けられなかったり遅延したりする事を懸念している」(同)。その上で、4学会は早急な医療の提供が求められる場面では、子供を普段見ている親(監護者)の同意のみで適切な医療が行える例外的な対応を許容して欲しいと求めている。

 これ程迄に反対の声が大きいのに、何故政府は共同親権を推し進めようとしているのだろうか。実は、日本の様に共同親権を認めていない国は世界では少数なのだ。

 「法務省の2020年の調査では、インドとトルコが単独親権だったが、米国や欧州の多くの国では共同親権が認められていた。その為、国際結婚をした夫婦が離婚した際、単独親権しか認められていない日本の制度との間でトラブルとなる事が予想される。実際に、離婚した日本人の配偶者が子供を連れて日本に帰国し、子供を渡さない『子ども連れ去り』が起きている」と解説するのは、前出の弁護士だ。

 「子ども連れ去り」は、日本も締結している「ハーグ条約」によって禁止されてはいる。同条約で、16歳未満の子供を無断で居住国外へ連れ去った場合、原則として元の居住国へ返還する事が義務付けられているのだ。しかし、ハーグ条約があっても尚子供を居住国に返す例は少ない。「共同親権が認められていれば、海外にいる片親にも面会交流権等が認められる。日本に共同親権の導入を求める声は、欧米等の、言わば外圧によって強まったと言える」(同)。

 では、そうした〝外圧〟に同調するのはどの様な人達なのか。

女性にはDVとも受け取れる父親の親権主張

数年前に離婚した都内の会社員男性(40代)は離婚の際に親権を巡り、元妻と争った。「妻とは性格が合わず一緒には暮らせないと、子供を置いて家を出たので、裁判所では親権は妻に認められた。小学生の子供との関係は良好で当初は時々会って食事をしたりしていたが、学校や稽古事が忙しいと徐々に会えなくなった。毎月、養育費を振り込む際に虚しさが募る」と語る。「子供はもう中学生。友人や学校等が忙しくなる時期だし、子供の意志で会いたくないなら仕方が無いが、元妻から会えないと伝えられるだけだと、子供の気持ちも分からず納得がいかない」。

 この男性にもし共同親権が認められていれば、面会が続けられていた可能性が高い。ただ、両親の離婚を経験した子供の側からは違う景色が見えている事も多い。

 「成長するに従って、自分を育てるのに苦労する母に同情する様になった。自分の前ではいい顔をしていても、母を不幸にした父が許せなくなった」「母から父のDVの話を聞いていたので、父には絶対に会いたくなかった」「親が離婚したとか片親に育てられたと言うと周りから不幸だと思われるが、両親が家にいた時の方が争ってばかりで毎日不幸だった」(前出の弁護士が取材した子供達の声)。

 前出の司法担当記者は言う。「日本では子供が幼い場合、親権は母親の側に認められる事が多い。その為、子育てから弾き出された格好の父親が共同親権を主張する例が目立つ。だが、女性側からはその主張が、離婚しても女性や子供の行動を強要したり縛ろうとする支配欲の現れに映る」。暴力を振るう、生活費を入れない等のDVは診断書や口座の明細等の証拠から裁判所に認められ易いが、精神的なDVは証明が難しいとされる。「世間の声は、離婚しても尚、親権を盾に子供と交流を持とうとする事そのものをDVと受け取っており、議論は嚙み合わない」(同記者)。

 今国会で成立するかは不透明だが、目下、反対の声が目立つ共同親権制度。制度が出来ても、活用例が無いなら作った意味が無くなる。過去に外圧によって変えられた、変わらざるを得なかった多くの事例が有る日本。裁判所の運用が注目される事になるだろう。

COMMENTS & TRACKBACKS

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  1. By 焼きそばパン

    共同親権と面会交流は全く別物です。
    面会したいなら、面会交流調停を申し立てればいいのです。
    そして養育費は子供をもつ親の義務であり、「面会交流のための交流費」では、ないんですが。

    それに、海外におけるハーグ条約…のくだりは、ミスリードがひどい。
    海外における共同親権と共同監護は別物で、オーストラリアではすでに法改正され原則共同親権ではなくなった。
    海外では、日本と違ってDVも調査の上認められる件数が圧倒的に多い。

    なんでも共同親権で解決するような書き方はいかがなものか。
    このような取材不足の内容で記事にしないでほしい。

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