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第166回 浜六郎の臨床副作用ノート ◉ レケンビで脳出血&萎縮:必然

第166回 浜六郎の臨床副作用ノート ◉ レケンビで脳出血&萎縮:必然

アミロイドβに対するモノクローナル抗体レカネマブ(レケンビ®)の12月20日薬価収載と販売開始が決まった。しかし、臨床試験では、レカネマブ群に即時反応や脳浮腫・出血が極端に多く、試験からの脱落者が多く、遮蔽が外れ、認知機能の評価が適切になされていない。そのため、進行が抑制できたという結果は全く信頼できないことを薬のチェック107号1)で述べた。

その後、調べれば調べるほど、レカネマブは薬剤として承認すべきでなかったことを裏付ける事実が集積してきている。薬のチェック110号2)で、脳出血死亡例が3例あること、同111号(2024年1月発行予定3))では脳萎縮が起こることを詳しく取り上げた。同号ではさらに、認知症でアミロイドβが蓄積する原因を文献的に考察した。結論は、アミロイドβ蓄積は、真の原因によりもたらされた結果であり、認知症の原因ではない3)

酸化ストレスで分泌されるアミロイドβの役割

脳の神経前駆細胞は、虚血などにより生じた酸化ストレスが過度でなければ適度のアミロイドβを分泌し、認知機能を高めるとともに、神経幹細胞を刺激して分化を促進し、新たに神経細胞を作る。しかし、過度の酸化ストレスで高濃度のアミロイドβができれば、逆に神経幹細胞の分化を抑制して、新たな神経細胞の産生を抑制する。したがって、アミロイドβの生成はアルツハイマー病の原因ではなく、過剰な酸化ストレスの結果である。アミロイドβを減らしても症状軽減は全く期待できない、と結論できる3)

脳血管細胞もアミロイドβを分泌する

アルツハイマー病の人の脳内では、随所で血管平滑筋が消失してアミロイドβに置き換わっている。いわゆる、脳血管アミロイド症(CAA)である。酸化ストレスを脳血管細胞に加えると、平滑筋細胞や内皮細胞からアミロイドβが分泌される。神経における機序ほどは分かっていないが、神経幹細胞、神経前駆細胞、神経細胞とアミロイドβとの関連を、血管細胞にも応用すると、過度の酸化ストレスが平滑筋細胞から過剰なアミロイドβを分泌し、血管平滑筋前駆細胞から平滑筋細胞への分化を抑制すると考えられる。CAAは、失われた平滑筋の代用としてアミロイドβが置き換わった結果と考えられる。

取り除けば浮腫や出血は必然

抗アミロイドβモノクローナル抗体は、可溶性アミロイドβだけでなく、血管壁に沈着したアミロイドβをも取り除く。免疫複合体を除去するための炎症反応が起こるので浮腫を伴う。さらに、取り除かれると血管壁に間隙ができるので、脳に浮腫や出血を起こすことは必然である。通常、脳出血は1か所に起こるが、レカネマブによる脳出血は多発性であることが特徴である。脳出血で死亡した例では、数えられないほど多発性の脳出血が起こっていた2)

脳出血すれば、その後に脳は萎縮する

脳出血が起これば脳組織が傷害され、その後に脳が萎縮するのも必然である。レカネマブでは第Ⅱ相試験4)で、プラセボ群に比較してベースラインからの縮小量が27%大きく、脳室の拡大量が43%大きかった。つまり、脳萎縮が起こりその分、脳室が拡大したのである3)。そしてこれは、モノクローナル抗体製剤に共通する害作用であり、脳浮腫・脳出血などARIA(アミロイド関連画像異常)と脳室拡大は強い相関が示された5)。当然といえる。

結論

脳を萎縮させる物質が、認知機能を改善する可能性は考え難い。介護の軽減などは全く考慮されていない。高薬価を支払う価値はなく、たとえ安価でも使用してはいけない、と結論する。

参考文献

1)薬のチェック2023:23 (107):56-60.   
2)薬のチェック2023:23 (110):140.   
3)薬のチェック2024:24 (111):予定
4)Swanson CJ et al. Alzheimers Res Ther. 2021;13(1):80. 
5)Alves F et al. Neurology. 2023;100(20):e2114-e2124. 

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