9月13日に発足した第2次岸田再改造内閣で、厚生労働大臣に武見敬三・参院議員が就任した。武見氏と言えば元日本医師会長の太郎氏を父親に持つ事で知られる。今回が初入閣で手腕は未知数の為、省内は戦々恐々としている。
武見氏は1951年生まれの71歳(執筆時点)。幼稚舎から大学まで一貫して慶應義塾育ちだ。父親の様に医師免許は取得せず、法学部出身で政治を学んだ。ニュースキャスターを経て、95年の参院選の比例区で初当選。日本医師連盟の推薦候補でキャスターとしての知名度を生かした。
旧民主党に追い風が吹いた2007年の参院選で落選。その後繰り上げ当選し、13年の参院選では東京都選挙区から出馬して再選を果たした。現在は当選5回を数え、これ迄厚生労働副大臣や参院自民党政策審議会長等を務めている。党厚労幹部会にも以前から参加しており、所謂「族議員」の一人だ。
ただ、族議員の中心、加藤勝信・前厚労大臣や田村憲久・元厚労大臣と近いというよりは、同じ参院の古川俊治・議員や国際保健繋がりで塩崎恭久・元官房長官と懇意だった。永田町関係者は「元ニュースキャスターだけあってやや評論家じみていて、部会でも大所高所からの発言が多い」と評する。
理念型で選挙に弱く、武見氏に近い関係者も「選挙でも理想ありきで演説する為、地元の人が喜びそうな内容を訴えてくれない」とぼやく。
今回の内閣改造で武見氏の入閣を予想する声は少なかった。武見氏本人はユニバーサル・ヘルス・カバレッジの実現にご執心で国際的な知名度の高さを誇る一方、医療分野以外の厚労行政には詳しくない一面が有ったからだ。
ただ、今や岸田文雄・総理大臣の後見人の1人、麻生太郎・副総裁と親戚筋で、麻生派に所属していた事 も有り、猛烈なプッシュが有ったと見られる。ある筋によれば、首相は一時、加藤前大臣の後任に田村元大臣の起用を検討していたが固辞された為、武見氏にお鉢が回って来たという。
大手紙記者は「田村元大臣や加藤前大臣は厚生も労働も詳しいオールマイティータイプだったが、武見氏は得意分野と不得意分野がはっきりしている。その為、野党の追及が激しく、無難な国会答弁が求められる厚労大臣の就任は意外だったという見方が省内には有る」と解説する。
自民党のある族議員も「間違った事をする訳ではないが、暴走癖が有るからちょっと心配だ。しかも、衆院議員に馴染みが無いから、上手く乗り切れるかどうか」と心配する。
こうした心配をよそに、就任後はまずまずの滑り出しで、大きな波乱も無い様だ。閣議後の記者会見で日医との関係を問われ、「私は医療団体の代弁者ではない」と発言。マスメディアに注目を浴びた事は有ったものの、失言めいたものではなかった。
ただ、10月20日からは臨時国会が始まり 、本会議のみならず厚労委員会でも舌戦が繰り広げられるかも知れない。その後、マイナ保険証等マイナンバーカードを巡るトラブルの検証結果も出さねばならない。少子化財源を巡り、歳出改革の名の下に社会保障費は狙われるかも知れず、年末には診療報酬と介護報酬のダブル改定も控えている。こうした難題を乗り切れるか武見氏は早くも正念場を迎えている。
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