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第72回 厚労省人事ウォッチング 感染症対策部長に佐々木氏 医政局長交代も 9月人事

第72回 厚労省人事ウォッチング 感染症対策部長に佐々木氏 医政局長交代も 9月人事
榎本 健太郎氏

 厚生労働省で「感染症対策部」が新設された事に伴う9月1日付の幹部人事が発令された。所管的に医師免許を持つ医系技官を中心とした人事となり、初代感染症対策部長には佐々木昌弘・大臣官房生活衛生・食品安全審議官が起用された。一方で、事務系キャリアにも幹部人事の余波が有り、榎本健太郎・医政局長が交代する事となった。幹部人事の背景に在るものとは——。

 感染症対策部は、内閣感染症危機管理統括庁が9月1日に内閣官房に設置される事に合わせ、厚労省内の関連部署を統合して創設された。 平時から統括庁と連携して新たなパンデミックに備える。 

 初代部長となった佐々木氏は1994年に秋田大医学部を卒業し、96年に旧厚生省に入省した。医政局医師確保等地域医療対策室長や健康局がん・疾病対策課長、大臣官房厚生科学課長等を経て、22年6月から大臣官房生活衛生・食品安全審議官を務めていた。 

 佐々木氏を知る大手メディア記者は「医系技官ながら政治家やマスコミへの対応が良く、医療政策全般に明るい。やや気分屋的な所も有るが、将来を期待されている1人だ」と評価する。佐々木氏を抜擢した今回の人事は順当と言えよう。

 今回は佐々木氏の人事ばかりが目立っているが、密かに注目されるのは医政局長人事だ。事務系の榎本氏から医系技官の浅沼一成・大臣官房危機管理・医務技術総括審議官に交代したからだ。

 浅沼氏は91年に慈恵医大を卒業し、旧厚生省に入省。医薬食品局血液対策課長や健康局結核感染症課長、大臣官房厚生科学課長、大臣官房生活衛生・食品安全審議官を歴任した。初代医務技監を務めた 実力者、鈴木康裕・国際医療福祉大学長のお気に入りで、組織改編に伴い役職名が変更された大坪寛子・健康・生活衛生局長が卒業した慈恵医大の先輩として知られている。

 ある大手紙記者は「結核感染症課長時代には感染症情報を発信するコラムを執筆する等、ユニークな取り組みをする事で知られている。コロナ下では昼夜無く働き詰めでもニコニコしながらマスコミ対応をこなしていた」と明かす。

 一方、2025年度の地域医療構想の実現を控え、榎本氏は僅か1年で医政局から離れる事になった。省内の人事に詳しい幹部は「相性も有るのだろうが、加藤勝信・前厚労相からの評価が芳しくなかった。大臣レクでも厳しく詰められていた」と声を潜める。ある若手官僚は榎本氏について「勉強熱心で仕事は丁寧。手堅いが存在は地味と言え、政治家から見ると融通が利かない印象なのかも知れない」と擁護する。

 7月の幹部人事で医政局担当の審議官に事務系キャリアの宮本直樹氏が就任し、医政局のトップツーが事務系キャリアだった事から榎本氏の交代は既定路線とも言えた。老健局長で退官した大西証史氏 に続き、加藤前厚労相の意向が反映された人事となった模様だ。

 また、医薬局長には城克文・医薬・生活衛生局長が横滑りする。 

 初めての女性医療課長として注目された森光敬子・大臣官房審議官は浅沼氏の後任として大臣官房危機管理・医務技術総括審議官に就任する 。大坪氏と同学年の森光氏は局長級に昇進し、肩を並べた形になった。これからの出世レースに省内は興味津々だ。

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