不可解過ぎるススキノ猟奇殺人事件
札幌の繁華街、ススキノを舞台に、衝撃的な事件が起きた。ラブホテルの部屋の浴室に残されていたのは、首の無い男性の遺体。男性と一緒に部屋に入り、先に出て行った人物は、男性か女性かも分からない……。
謎だらけの事件は、発生から3週間後に急展開する。北海道警は死体損壊・死体領得・死体遺棄の容疑で、札幌市厚別区の精神科医と娘を逮捕。被害者の男性と一緒にホテルに入り、男性の頭部を持ち帰ったのは、医師の娘である29歳の女だったのである。
事件が明るみになったのは、今年7月2日午後3時20分頃だ。札幌市中央区南8条西5丁目のラブホテルで、従業員が客室の浴室で男性が死亡しているのを見付け、消防に通報した。男性の遺体は刃物の様なもので切断され、頭部が無くなっていた。体には刺し傷が有り、死因は失血死。争った跡は無く、ベッドは使用された形跡が無かった。
「頭部を持ち去った意図がよく分からない。事件や身元の発覚を遅らせる目的なら、体ごと運んで隠す方が良い。被害者の顔が分からなくても、指紋やDNAは取れる訳で、身元の発覚が少し遅れる程度でしょう。被害者の生前の姿は周辺の防犯カメラ等に映っているでしょうし」(社会部記者)
実際に、被害者の身元は程無く、北海道恵庭市の62歳の会社員と判明する。「3日夜になり、恵庭市の女性が警察に夫が帰って来ないと行方不明届を出した。指紋や遺体の手術痕等から、被害者が女性の夫と特定されたのです」(同)
被害者は1日夜、札幌市のディスコイベントに参加。終了後に、イベント会場近くの路上で誰かと落ち合い、その人物と一緒に事件現場となったラブホテルに入室した。
ホテルの部屋は、入室すると中から扉が開かない様になっていて、外に出るにはフロントに電話する必要が有る。2日午前2時頃、女性と思われる声で「1人で先に出ます」とフロントに連絡が有った。周辺の防犯カメラにはリュックを背負い、スーツケースを持った人物が映っていた。
娘の犯行を助けた修容疑者の人物像
ただ、この事件が大きく報じられたのは、「被害者の頭部が持ち去られるという犯行形態も勿論、被害者の男性が〝トモちゃん〟と呼ばれる界隈で有名な女装愛好家であった事も大きい」と前出の記者は語る。「犯行は1人で行われたと考えられるが、成人男性を女性が1人で殺害し、頭部を切断して持ち去ったとは考え難い。被害者の趣味も相まって、犯人は女装した男なのではという説も浮かんだ」(同)
しかし、道警が7月24日に逮捕したのは、職業不詳、田村瑠奈容疑者(29歳)とその父親で医師の修容疑者(59歳)。修容疑者はホテルに入らず送迎役を担ったとされ、警察は、犯行は主に娘の瑠奈容疑者によって行われたと見ている。翌日には、母親のパート従業員、浩子容疑者(60歳)も同じ容疑で逮捕された。一人っ子だった瑠奈容疑者は、3階建ての一軒家で両親と3人暮らしをしており、一家全員が逮捕された事になる。
では、娘の犯行を手助けしたと見られる修容疑者とはどの様な人物だったのか。
北海道紋別郡遠軽町出身の修容疑者は、1988年に旭川医科大学を卒業。2008年から、札幌市に在る勤医協中央病院精神科の科長として勤務していた。「近親者の話では、修容疑者は手術が嫌で精神科医になったそうです。温和な性格で患者からの評判も良い先生です」(同)
勤医協中央病院は、共産党が主導して作られた全日本民主医療機関連合会(民医連)系の病院。修容疑者が共産党員だったかどうかは明らかではないが、一部週刊誌の報道では共産党に寄付をしていたと報じられている。
勤務環境の影響も有ったのか、修容疑者は精神科医として、過労自殺の予防等の職場のメンタルヘルスやアルコール依存症治療といった社会課題に熱心に向き合っていた。「海外派遣自衛官と家族の健康を考える会」の北海道・東北支部代表幹事を務め、自衛隊員のメンタルヘルスに取り組んでいた他、「医療九条の会・北海道」が主宰する学習会で講演した事も。ある講演動画では、落ち着いた口調で優しげに聴衆に語り掛ける様子が見て取れる。
趣味は学生時代から続けているギター。本人のフェイスブックでは、ギターを弾いている動画も複数披露されており、平和や反戦について歌っていた。
「一部では〝首狩り〟なんて言われていましたが、首を切って頭部を持ち去るという猟奇的な犯行で、逮捕されたのが医師だった事から、修容疑者がマッドサイエンティストの様な、人体を切り刻んだり死体を好んだりするとんでもない医師だったんじゃないかと疑う声も有った。しかし、取材を進めるとむしろ逆で、血を見るのが苦手だったり、外科手術が嫌いだったり、犯行態様とおよそ縁遠い人物だった事が分かって来ました」と地元記者は明かす。
一方で修容疑者は事件前、瑠奈容疑者と一緒に、札幌市内の量販店でノコギリやスーツケースを購入していた。犯行現場迄の送迎を担ったのも修容疑者で、犯行後にはコンビニエンスストアで大量の氷も購入。事件は突発的なものでなく、計画的だった事が窺える。
「瑠奈容疑者は被害者の頭部をスーツケースに入れ、修容疑者の車で自宅まで持ち帰った。その頭部は自宅2階の浴室から見つかり、手袋をした何者かの手が頭部に触れる様子を映した動画も見つかっている。こうした証拠から、母親の浩子容疑者も、自宅に頭部が在る事を認識していたと判断され、共謀関係が有るとして逮捕された訳です」(社会部記者)
正に家族ぐるみの犯行が疑われている訳だが、事件後には修容疑者の不可解な様子も目撃されている。「自宅の前に車を停め、車内で弁当を食べる様子が近所の住人に目撃されています。住人は、自宅に入れない理由が有るのかと不思議に思っていたそうです」(同)。遺体の頭部が置かれた自宅には帰りたくなかったのだろうか。
残る疑問は解明されるのか
それにしても、娘の犯行を止めるのではなく積極的に関与したと見られる両親。一家は被害者に相当の恨みを募らせていたのだろうか。警察は動機を明らかにはしていないが、修容疑者の親族は、瑠奈容疑者が被害者の男性から暴行を受け、トラブルになっていた旨の話を浩子容疑者から聞いたと証言している。被害者の男性は女装という〝武器〟を使って女性達を安心させ、その後強引に関係を迫ってトラブルを起こしていたと明かす関係者も居る。
「一方の当事者が亡くなっている以上、瑠奈容疑者と被害者にどの様な接点が有り、どの様なトラブルが有ったのか、真相を解明するのは難しい。ただ、娘から被害を聞いた両親が、その復讐に手を貸したとすれば理解は出来る」と前出の地元記者。しかし、復讐した相手の頭部をわざわざ持ち帰り、自宅に保管しておくというのは不可解だ。逮捕後に瑠奈容疑者は、自分が多重人格であるといった供述もしているという。
関東地方の精神科医は「被害者と自身の娘との間にどんなトラブルが有ったかは分からないが、精神科医ならば自身の専門スキルを使って娘の心を治療してあげるべきだった」と同じ精神科医の犯行に胸を痛める。その上で、「家族だからこそ胸の内を明かすのが難しいのはよく分かる。都会と異なり噂が広まりやすい地方では、他の医師に身内の治療をお願いするのも難しかったのだろう。だとしても、他に頼れる場所は無かったのだろうか」と口惜しむ。
自衛隊員の心のケアや過労自殺の防止等、命を守る活動を長年続けて来た修容疑者。その活動に救われた命は幾つも有ったろう。命を奪うという行為に手を貸す前に、何とか思い止まる術は無かったのだろうか。
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