日本では、プレガバリン(リリカ®など)は神経障害性疼痛・線維筋痛症に伴う疼痛に対して適応が認められ、ガバペンチン(ガバペン®)は他の抗てんかん剤で効果が認められない「てんかん」の部分発作に認可されている。
プレガバリンとガバペンチンの作用は類似しており、これら薬剤は、GABA作動剤としての作用とともにカルシウム拮抗剤としての作用を有する。そのために、ニューロンやシナプスなどの神経系、免疫細胞を含む他の血球系細胞、ホルモン系細胞、末梢平滑筋、心筋など、ほぼあらゆる細胞のカルシウムチャネルに影響があると考えられる。
平滑筋のカルシウムチャネルを妨害し、弛緩させると末梢血管が拡張するため、その結果、浮腫を引き起こす。心不全も多数報告されている。
プレガバリンもしくはガバペンチンが処方され、末梢浮腫が起こっても、薬剤によると認識されれば原因薬剤のプレガバリンなどが中止され解決する。しかし、そのような認識がなければ、浮腫に対して利尿剤が追加処方されることになる。
薬のチェック107号1)で、Prescrire誌2)を引用し、プレガバリンなどの処方と利尿剤処方との関係を調査したカナダのチームの研究3)を扱ったので、少し補足もしつつ、概要を紹介する。
利尿剤が1.4倍処方されている
日本でもカナダでも「腰痛」への使用は適応外である、プレガバリンやガバペンチンが「適応外」で腰痛に使用された後、どの程度利尿剤が処方されたのかが調査された3)。
健康保険のデータベースを用い、2011年から19年の間に新たに腰痛と診断された66歳以上の患者約26万人のデータが調査対象とされた。調査対象から次の人は除かれている:心不全や腎不全、肝不全またはてんかんの既往歴がある人、以前にプレガバリンやガバペンチン、利尿剤を処方されたことがある人、(浮腫の原因として知られる)非ステロイド抗炎症剤を使用している人など。このうち、腰痛の診断を受けてから1週間以内にプレガバリンまたはガバペンチンが調剤された患者が7867人いた。年齢の中央値は74歳であった。
腰痛の診断後90日間に利尿剤が調剤されたのは、プレガバリンまたはガバペンチンを処方された患者のほうが、処方されていない患者よりも多かった(2%対1.3%)。リスク比は約1.4(95%信頼区間1.2-1.7)であった。使用された利尿剤は、主にフロセミド(49%)とヒドロクロロチアジド(37%)であった。プレガバリンまたはガバペンチンが調剤されてから利尿剤が調剤されるまでの日数の中央値は36日であった。
この報告の著者らは、プレガバリンなどによる浮腫の害について触れているが、その治療に用いられた「利尿剤」の害反応については触れていない。利尿剤の害反応には、尿量増加により脱水が起き、血圧が下がり、起立時にふらつきや眩暈が起きやすく、特に高齢者では夜間に排尿のため起床し転倒のおそれがある。そのほか電解質異常や高尿酸血症、痛風もある。
原因薬剤の中止〜減量が原則
薬剤使用後に重大な不都合が生じた場合には、その薬剤が原因である可能性を考え、最低限添付文書を確認してその薬剤による可能性がある場合には、原因薬剤を中止または減量するのが原則である。薬剤の害反応と認識されない場合には、その症状を緩和するために別の薬剤が処方され、追加された薬剤による害が起こることになり危険だからである。
プレガバリンもしくはガバペンチンの使用で浮腫が起こった場合、一時的に利尿剤を追加するとしても、基本的には、浮腫の原因となった薬剤を中止し、心不全に進展するのを防止すべきである。
参考文献
1)薬のチェック2023:23 (107):64-65
https://medcheckjp.org/issue/107/
2)Prescrire International 2022 Vol.31 No.229 p190
3)Read SH et al. J Am Geriatr Soc 2021; 69 (10): 2842-50+ suppl
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