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未来の会

第31回 日本医学会総会2023東京 PICK UPリポート 

第31回 日本医学会総会2023東京 PICK UPリポート 

AIとビッグデータが拓く未来の医療
人生100年時代の医学を考える

第31回日本医学会総会が、2023年4月20〜23日迄「ビッグデータが拓く未来の医学と医療〜豊かな人生100年時代を求めて〜」をメインテーマに東京・有楽町の東京国際フォーラムで開催された。医療現場のデジタル化やAIの活用、地域医療構想、新型コロナウイルス感染症への対応等、幅広いテーマが取り上げられ、活発な議論が交わされた。開会式で春日雅人・第31回日本医学会総会会頭は、「革新的な新技術を医療に実装するには、倫理的、法的、社会的問題について社会との合意が求められる」と指摘。「正しい最先端の知識を共有し、医療情報の非対称性の是正や自分の健康は自分で守るという意識の醸成に繋げたい」等と述べた。

技術革新がもたらす変革をメインテーマに
岸田文雄・首相による来賓祝辞

日本医学会総会は1902年、「第1回日本聯合医学会」と題し16の分科会の集いとして開催されたのが始まりで、第3回以降、4年毎に開催されて来た。現在、日本医学会に加盟している学会は基礎部門15学会、社会部門20学会、臨床部門107学会の計142学会となり、内容も研究発表に留まらず、医療を取り巻く様々な課題を議論し、医学の進歩を広く社会に発信する場となっている。

今回は、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経験すると共に、少子超高齢社会の到来に直面する社会状況を踏まえ、多くの医療関係者が学術集会や学術展示を通じて医学・医療の最先端を学び、豊かな「人生100年時代」を目指す医療について考える場となる事を目指した。特にAIやIoT、ICT、ロボティクス等の技術革新や、ゲノム編集、遺伝子治療、臓器再生など新しい医療技術がもたらす医学・医療の変革やそのスピード感といったテーマを中心に据えた。又、初めて会場とWEB形式のハイブリッドで開催した他、医師向けの学術プログラムの一部を一般市民にも公開。講演やシンポジウム等の内容は後日、オンデマンドでも公開した。

総会の準備に当たっては、初めての試みとして40歳以下の学術委員からなるU-40委員会を発足させ、若い研究者の意見も積極的に取り入れると共に、座長や講演者として女性を積極的に登用。女性の登壇者の割合が過去の総会に比べて2倍以上に増加した。

医学の進歩への期待・課題・展望
天皇陛下がおことばを述べられた

東京国際フォーラムのホールで開かれた21日の開会式には天皇・皇后・両陛下をお招きし、来賓として岸田文雄・内閣総理大臣や簗和生・文部科学副大臣、松本吉郎・日本医師会会長らが出席した。

宮園浩平・日本医学会総会副会頭の開会宣言の後、門田守人・日本医学会会長が開会の辞を述べた。門田氏は、「医学・医療の技術革新の一方で、新技術に伴う倫理的・公的・社会的課題が浮上して来ている。又、新型コロナウイルス感染症を経験する事で、病気を社会全体で捉える医療システムの重要性等が認識される様になった」と指摘した上で、「地球規模の環境問題と相俟って、今こそ未来を見据えた議論が必要となっている」と訴えた。

次に、門脇孝・準備委員長が総会の準備経過を報告。総会の基本構想を元に「ビッグデータがもたらす医学・医療の変革」「革新的医療技術の最前線」「人生100年時代に向けた医学と医療」「持続可能な新しい医療システムと人材育成」「パンデミック・大災害に対抗するイノベーション立国による挑戦」の5つの柱を立て、各プログラムを企画したと会頭特別企画の狙いについて説明した。又、市民への啓発活動についても、昨年4月からオンラインを中心に市民公開講座を開催し、今年4月15日からは丸の内・有楽町エリア一帯で、一般市民向け博覧会「みんなで健康 みんなの医療 みんなが長寿」を開催しており、50万人規模の来場を見込んでいるとした。 これ迄の総会では学術講演の会場と展示会場が離れた場所に有ったが、今回は工夫をして丸の内・有楽町エリアに全てを集約した。

続く春日氏の式辞の後、お言葉を述べられた天皇陛下は、「医学・医療に携わる人々が、進歩に伴う課題とも誠実に向き合いつつ、人々の健康な生活の為に大きな力となる事を期待致します」と医学の進歩に期待を寄せると共に「この3年間、新型コロナウイルス感染症が社会に大きな影響を与えました。その様な中にあって、この感染症の症状や治療法、感染対策等の研究を鋭意進めて来られた医学関係者の皆さん、そして患者さんの命を救う為に多大な尽力を続けて来られた医療従事者の皆さんに、改めて心からの敬意を表します」と、感染症対策に当たった医療関係者の労苦を労われた。

経過報告を行う門脇孝氏

来賓の祝辞では最初に岸田総理が登壇し、総会のメインテーマの1つである医療DXについて触れ、「政府も医療DXを重要な課題と位置付け、昨年10月には医療DX推進本部を立ち上げた」とした上で「医療DXを通じたサービスの効率化や質の向上は、我が国の医療の将来を大きく切り開いて行くものであり、その実現に全力を挙げて行く」と決意を述べた。

続いて祝辞を述べた松本氏は「世界に類を見ない速度で少子高齢社会を迎えている我が国に於いて地域の医療・介護体制を維持し、住民福祉の増進を図る事は医療機関にとっての使命だ。如何なる状況下に於いても子供から高齢者まで安心して医療を享受出来る環境を整備しなければならない」と指摘した上で、「日本医学会総会が、我が国の医学・医療の将来像について医療界のみならず多様な分野の方々も含めて社会全体で対話を深める場となるよう期待している」と述べた。 

社会との対話がより重要な時代に

この他、期間中は幅広いテーマで多くの特別講演が開かれ、堀憲郎・日本歯科医師会会長が口腔の健康と全身の健康の関係を取り上げた他、山中伸弥・京都大学iPS細胞研究所名誉所長がiPS細胞の今後について語り、宇宙航空研究開発機構の津田雄一・宇宙科学研究所教授が小惑星探査機「はやぶさ2」によって得られた知見等について紹介した。

最終日の23日には、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会会長を務める尾身茂・結核予防会理事長が「COVID-19 これまで、そしてこれから」と題して講演。「感染症に強い社会の構築」の為に、多様な職種の人材によるネットワーク構築や、感染症対策に関する政策を立案出来る専門家の育成、新型コロナを踏まえた医療制度の見直し等が重要になると訴えた。

開会式参列者———————————————————————
天皇・皇后・両陛下、岸田文雄・内閣総理大臣、簗和生・文部科学副大臣、加藤勝信・厚生労働大臣(代理・福島靖正・厚生労働省医務技監)、松本吉郎・日本医師会会長、門田守人・日本医学会会長、宮園浩平・日本医学会総会副会頭、新井一・同副会頭、北川昌伸・同副会頭、天谷雅行・同副会頭、栗原敏・同副会頭、尾﨑治夫・同副会頭、門脇孝・同準備委員長、南学正臣・同学術委員長、齊藤延人・同総務委員長、國土典宏・同登録委員長、青木茂樹・同展示委員長、間野博行・同財務委員長、松藤千弥・同記録委員長、大野京子・同ダイバーシティ推進委員長、山内敏正・同幹事長

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