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未来の会

統一教会にみる信教の自由と政教分離の危うさ

統一教会にみる信教の自由と政教分離の危うさ

宗教の政治利用と政治の宗教利用の二律背反が中立性を毀損する

令和になってからというもの、新型コロナウイルスの流行、電力不足、ロシアによるウクライナ侵攻、それに伴う急激なインフレに続いて、安倍晋三・元総理への銃撃と、思いもよらない出来事が立て続けに発生している。

 危機に直面した時代に政治が果たす役割は大きい。闇に向かっても闇を深めてもならない。宗教が人類の精神的支柱としての役割を果たす事も有るし、心の持ち方が究極的解決を与える事も有る。社会にとって最善の貢献を為す道を教える事も有るだろう。しかしながら、最も国民と密接な関係に有るのが政治であり、宗教よりも遥かに現実的な役割を担っている。政治の使命は、国民の幸福を増進し、自由で豊かで安全で平和な国家を実現する事であると言えるだろう。

 さて、政界の最高実力者と言っても過言ではない安倍元総理(故)を銃撃して殺害に及んだ犯人の動機が政界に大きな波紋を呼んだ。逮捕された山上哲也容疑者は犯行の動機について、「母親が宗教団体にのめり込み、多額の寄付をする等して家庭生活が崩壊した。安倍元総理が宗教団体と近しい関係に有ると思った」と話した。この宗教団体こそが旧統一教会で、現在の世界平和統一家庭連合である。

 安倍元総理と統一教会との関係は紛れもない事実だ。銃撃犯の山上容疑者が、安倍元総理と統一教会が密接な関係に有ると考えた根拠は、統一教会の関連団体が主催するイベントにビデオメッセージを寄せている事からだと言う。

 統一教会と関係を持つ政治家は安倍元総理だけではない。宗教ジャーナリストの鈴木エイト氏が統一教会に関わった政治家のリストを公開している。そのリストによると国会議員は112名に上り、中でも自民党が多く98名もの議員が関係を持っているとされる。第4次安倍内閣に任命された20名の大臣の内、10名が統一教会と関係が有った議員である。如何に統一教会が深く政治に関わり、政権与党に食い込んでいたかを察する事が出来る。その中のトップリーダーであった安倍元総理が宗教上の怨念から銃撃された事は政界に大きな警鐘を鳴らす出来事となった。

「反共」で政治と結び付く統一教会

 統一教会は文鮮明氏によって1954年に韓国で創設されたキリスト教系の新興宗教である。文鮮明氏の教えの1つとして「エバ国家の日本をアダム国家の韓国が植民地にする事」「天皇を自分にひれ伏させる事」というものが有る。明らかに反日的な教義である事が分かる。

 そんな統一教会と日本の政治家が結び付く端緒となったのが統一教会系の反共産主義団体である国際勝共連合との関わりだ。朝鮮半島が南北に分かれ共産主義と資本主義の代理戦争を行っている最中、韓国に本部のある統一教会は反共的な政治活動を積極的に行い、関連団体の国際勝共連合を通じて自由民主党を主とした保守系の政治家と積極的に関わる様になった。統一教会と日本の政治家との関係は東西冷戦の終焉後も続き、その関係が教団の宣伝や広報に利用されて来た。国際勝共連合の月刊誌である『世界思想』の表紙には安倍元総理の写真が複数回使用されている。

 80年代以降、統一教会の霊感商法が大きな社会問題となった。宗教を介して壺・印鑑・多宝塔・朝鮮人参が販売されたが、その価格が法外に高額であった事から社会問題化し、多くの被害者の存在が明らかになった。その被害は判明しているだけでも3万件以上、被害総額は1200億円を超えているという。統一教会の収入の約7割は日本での活動によるものである。霊感商法等の物販だけではなく、信者には高額な寄付も要求している。

 信者の勧誘方法に関しても問題を指摘されている。統一教会の人物である事を隠して人を集め、勧誘活動時には出来るだけ教団の存在を隠した上で入信に至る事が多々有るという。入信後には特定の恐怖の対象を与え、その恐怖の対象から開放する手段として統一教会の教義を段階的に刷り込んで行く手段を執っている。信者には洗脳の段階を追って経典等を高額で購入を迫ったりもする。

 又、食品会社や医療施設、宿泊施設、自動車学校等多くの関連事業会社が存在し教団の収入源になっている。ちなみに日本の教団からアメリカの教団の口座に延べ4700億円の資金が送金されていると言われている。

 教団が結婚相手を決める合同結婚式、信徒の拉致監禁問題など統一教会は色々と物議を醸している。日本では宗教色の強い印象がある統一教会だが、韓国では企業の連合体という認識が強い様で、朝鮮人参の販売等の経済活動や大学運営等の社会事業を行っており統一グループとして認識されている。統一教会は日本で活動を行う上で宗教法人格である事からお布施、奉納金、献金、寄付金等が非課税である事を悪用して来たに過ぎないという声も有る。

 いずれにせよ日本でも韓国でも統一教会は国際勝共連合や関連会社を巧みに使って政治家達と関係を築き、政権から政治的な庇護を受けられる状況を作って来たと見られる。統一教会は、選挙時の集票への協力、現場での人員の提供、政治活動での秘書の派遣等、政治家にとっては有難く、便利で都合の良い存在だったのだろう。

 では、統一教会と政治家との関係は不適切だったのだろうか。政治家の信教の自由は憲法でも保障される権利なので本来は何ら問題無い筈。問題が有るとすれば統一教会に対して政治家が何らかの特別な政治的な配慮を行っていたかどうかだ。統一教会の勧誘やビジネスが社会問題化していたにも拘わらずそれに対する法的な規制はされてはいない。この事を直ちに政治的な配慮が有ったというには早計なのかもしれない。

統一教会を規制する国も有る

統一教会が進出を図った諸外国の対応について調べてみると、やはり統一教会をカルト集団だと認識している国が結構在る事が分かる。

 フランスでは反セクト法によって監視対象となっている。ロシアでも対テロ法の対象になり活動が禁止されている。アメリカや台湾やウクライナではカルト色は強いものの規制をされる事無く布教活動を継続している。つまり、統一教会を法的に規制する国とそうではない国が存在する。

 日本に於いては政治的な配慮が有ったから宗教活動が制限されていないという解釈は一面的過ぎる。統一教会の活動を制限しているフランスの反セクト法では、エホバの証人や創価学会、崇教真光もその対象となっている。日本に於いては宗教関連団体ではオウム真理教以外は公安の監視対象にはなっていない。とは言え、公安には要注意団体としての認識は有ったと思われる。

 現状、旧統一教会は反社会的勢力として定義付けられていない。破壊活動防止法による公安調査庁の監視対象でもない。自民党の工藤彰三・衆議院議員は「反社会的勢力と認定されれば関係を断つが、そうではないのでお付き合いして行くつもり」と発言している。何らかの恩恵を被っているからこその発言ではないのか。工藤議員と同様に考えている議員は多いのもしれない。

 フランスの反セクト法は10の基準からなる。①精神の不安定化を導く行為、②法外な金銭要求、③元の生活からの意図的な引き離し、④身体に対する危害、⑤子供への教えの強要、⑥反社会的な説教、⑦公共の秩序を乱す行為、⑧重大な訴訟問題、⑨通常の経済流通経路からの逸脱(高額な物品販売等)、⑩公権力への浸透の企て。

 日本に於いても宗教とセクトの違いを議論するべきなのかもれしない。宗教に反社会性が有るかどうかは憲法の信教の自由の権利との関連も有り慎重であるべきだが、日本は既にオウム真理教の騒乱を経験している。宗教によって反社会的な行為が行われる可能性が有る事は明白だ。そこをタブー視せず、これを機に宗教に於ける反社会的行為の基準を明確にするべきである。基準を明確にしない限り議論が進展する事は無い。

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