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第182回 厚労省ウォッチング 広がる年金悲観論も、政府は外国人頼み?

第182回 厚労省ウォッチング 広がる年金悲観論も、政府は外国人頼み?

4月末に厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が公表した将来推計人口は、2059年に出生数が50万人を割り込み、70年の総人口は今の3割減、8700万人まで落ち込むという衝撃的な内容だった。同省は5年に1度の人口推計を基に将来の年金財政を見通す「年金財政検証」を実施している。広がる年金への悲観論に対し、同省は「従来の見通しが大きく変わる事は無い」と否定に躍起だが……。

前回の年金財政検証は19年に公表された。経済前提や女性の労働参加等が程々に進む「中間的なケース」の場合、モデル世帯(共に65歳の会社員の夫と専業主婦の妻)の厚生年金の所得代替率(現役世代の平均的手取り額に対する年金額の割合)は47年度で50・8%になる、としていた。

04年の年金改革で政府は「所得代替率50%維持」を公約し、関連法の付則にも明記している。この為19年の財政検証で50%台を維持出来た事に厚労省は胸を撫で下ろしていた。

ただその頃既に、出生率の低下等を踏まえて来夏の公表を予定する次の年金財政検証では「50%割れが必至」との指摘が相次いでいた。そこで厚労省は23年公表の人口推計値の悪化を見越し、国民年金保険料の納付期間を5年延長する案を示す等、50%維持に向けて年金を手厚くする手立てをあれこれ繰り出していた。

19年の年金財政検証で所得代替率50%維持を可能とした大きな支えは、17年の人口推計で合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子供の数に相当)が1・44(65年時点)になると見ていた事だ。ところが今回の人口推計で同出生率は1・36(70年時点)へと下方修正された。近年の実績値が1・3台で低迷している事を反映している。更に70年の平均寿命も男性85・89歳、女性91・94歳と前回推計より男女とも4歳程度伸びると予測する等、23年人口推計に年金財政を圧迫する原因は事欠かない。にも拘わらず、厚労省年金局は「今回の人口推計は年金にとってマイナス要素ばかりではなく、所得代替率50%は維持出来る可能性が有る」と言い張っている。からくりは23年の人口推計に有る、日本の総人口に含める「3カ月超日本に滞在する外国人」が増えるとの予測だ。

今回の人口推計では日本人こそ大幅に減ると見る一方、外国人は40年まで年間約16万4000人ずつ増えると言い、約6万9000人増とした17年推計を大幅に見直した。新型コロナウイルス流行前の技能実習生らの増加振りを考慮した。これにより70年の外国人の割合は10・8%と20年の2・2%を大きく上回る結果となった。

要するに、厚労省の言い分は「出生率の見通しは下がったが、その分年金を支える外国人が増えるので、年金財政への影響は差し引きゼロ」というものだ。

しかし、外国人の公的年金加入がどこ迄進むかは不透明。更に国は外国人の動向が年金財政に与える影響を検証した事は無い。政府は技能実習制度の廃止など新たな外国人労働者受け入れ策による外国人の日本定着を模索しているものの、近年国力の低下が目立つ日本が外国人に選ばれる職場であり続ける保証は無い。

「外国人頼みは無理筋だろう。別途国民に負担増を求めない限り、所得代替率の50%維持は難しいのでは」。厚労省OBは、年金財政の先行きを厳しく見立てている。

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