SHUCHU PUBLISHING

病院経営者のための会員制情報紙/集中出版株式会社

未来の会

236 京都桂病院 (京都府京都市)

236 京都桂病院 (京都府京都市)

患者を癒やすアートを地域の支援で実現
236 京都桂病院 (京都府京都市)

昭和初期に開設された結核療養所を前身とする京都桂病院は、戦後に総合病院として規模を拡大し、京都市西部や乙訓地域等の地域医療の中心的な役割を担って来た。病院を運営する社会福祉法人京都社会事業財団は児童や病気の人ら社会的弱者への支援と自立支援を目的として大正時代に創設。京都桂病院は財団の高齢者福祉施設や児童厚生施設等と共に竹林に囲まれた丘陵地に在る。病棟から京都市内が一望出来る見晴らしの良さが自慢だ。

病院は高度急性期・急性期医療への対応力を高める為、23年1月に救急処置室や集中治療室が入る新たな病棟をオープンした。これ迄ERがレントゲンやCT等の放射線部門から遠いのが難点だったが、新病棟では隣接する事になり、より迅速な蘇生措置など重症患者への対応の充実が期待出来る。ERも開胸開腹措置だけでなく、そのままIVRも可能な重症蘇生室を備えた。病状に応じてオペ台とストレッチャーの入れ替えも可能な設計で、どの様な重症患者も受け入れられる。

こうした新しい病棟は外来棟の隣に建てられたが、患者や家族は約30mの長い廊下を歩く事になる。新病棟工事中のある日、窓も無く真っ白な壁に囲まれたこの廊下を見たスタッフの1人が言った。「不安を抱えている入院患者や家族の為に、この廊下を患者や家族に笑顔や癒やしを届けられる場所に出来ないか」。

病気や治療、その後の生活等への不安を抱きながら無機質な長い廊下を歩く事は、患者や家族の気持ちを更に落ち込ませ、心身への大きな負担となるかも知れない。距離を変える事は出来ないが、患者や家族の心を支える事は出来る。そうした訴えに、多くのスタッフが賛同し、廊下の壁や天井いっぱいにアートを描く事になった。

同じ西京区内に在る京都市立芸術大学に相談すると、大学も「地域の為に是非貢献したい」と協力を快諾。大学院生を中心に、廊下の壁や天井に地元でよく見られる草木や花、野鳥等の自然を描く事になった。資金の調達にはクラウドファンディングを活用し、約1カ月半の期間に目標の500万円を超える637万円余りの支援が寄せられた。こうして病棟を繋ぐ廊下には、多くの葉を茂らせた樹木の絵が何本も描かれた。デザインには「病院に居ながら、いつもの日常を感じ、安心してもらいたい」という願いが込められているという。

又、この廊下は入院棟1階の病院ギャラリーとも繋がっている。このギャラリーも外来棟と入院病棟を繋ぐ廊下に設けられ、地域住民の絵画や写真等の作品約20点を展示。ギャラリーは、病院を支えてくれる地域住民の想いの象徴であり、地域と共に医療の質向上を図る信念の表れでもある。新病棟の増設で懸案だった救急体制の充実を図った京都桂病院は、今後も地域医療の充実に向け地域住民と共に「治療を受けたい病院」を目指して行く。


236_京都桂病院

LEAVE A REPLY

*
*
* (公開されません)

COMMENT ON FACEBOOK

Return Top