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少子化で緩やかに貧しくなる日本 若者達の幸せはネットやSNSに

少子化で緩やかに貧しくなる日本 若者達の幸せはネットやSNSに
山田 昌弘(やまだ・まさひろ)1957年東京都生まれ。86年、東京大学博士課程単位取得退学。2006年「格差社会」が流行語大賞に。08年、中央大学文学部教授。専門は家族社会学、感情社会学。内閣府・男女共同参画会議民間議員等も務める。

中高年になっても親と同居し、依存した生活を送る「パラサイト・シングル」の問題が指摘されて久しい。いよいよ依存されて来た親世代が亡くなる時期を迎え、遺された高齢独身者が社会問題となりつつある。パラサイト・シングルという言葉を提唱した中央大学文学部の山田昌弘教授によると、この問題の背景にはアジア的な親子関係と長寿化、日本人特有の意識が有るという。又、昭和の頃から変わらない日本の労働慣行や仕事に対する意識は、様々な歪みを生み、若者達の意識に大きな影響を及ぼしている。危機を目前にしながらも「変わらない」日本で起きている社会の変化について山田教授に聞いた。

——10年前の本誌インタビューで、パラサイト・シングルの高齢化の問題を指摘されていました。

山田 親同居未婚者が中高年となり、日本社会もいよいよ崖っぷちに立たされたという気がします。親が70代で未婚の子供が40代の「7040(ナナマルヨンマル)」、更にその上の「8050」といった世代の世帯の人達が、百万人を超える社会になりました。

——この原因はどこに在るのでしょうか。

山田 日本には結婚する迄は親と同居するという考えが有り、男性も女性も自立意識が乏しい。結婚したら実家を出るつもりが、結婚出来ずそのまま中高年になったという事です。そして、親が介護を必要としたり、亡くなったりしたら生活が困難になる。実際、高齢者虐待に於ける一番の加害者は同居する息子です。今迄親の世話を受けていて、親が倒れたら、どうしたら良いのかが分からなくなる。そうした焦りや苛立ちからの虐待が増えています。今から20〜30年もすると孤立死が急増して、大きな問題となるでしょう。

——現在の状況は経験の無いものですよね。

山田 アジア的な強い親子関係の中で、結婚しない人が増えた事と長寿化が重なった結果です。今後は少子高齢化によって労働力不足が起き、日本人の生活水準は下がって行きます。官僚は頭が良いので、社会保障の水準等を少しずつ切り下げています。大幅な増税はしないと言いながら、社会保険料は少しずつ上げて行き、一方で介護保険や年金の水準は少しずつ下げている。少しずつ進めて行くとあまり文句が出ないからです。「国民が等しく貧しくなれば、それで良いんじゃない」という感じです。最近は海外に行く度に、日本人が貧しくなっている事を実感しますよ。30年前の円高の時は兎に角、海外の物価は安かった。今は完全に逆です。今後は再び逆転する事もなく、もっと貧しくなるでしょうね。

——こうした状況を日本はどうして変えられないのでしょう。

山田 日本人は自分で物事を決められません。例えば、新型出生前診断(NIPT)を受けて診断結果が出ても、日本人はその後を自分で決められない。そうしたものが無かった時代の方が、日本人は幸せだったと思いますよ。初めから知らなければ、生まれた時に何らかの病気が分かっても、それは神様のせいにして、受け入れられますから。もし異常が見付かった時に、物事を自己責任で決めるのは嫌なんです。「リスクは何%です」と言われても、求めているのは100%の保障なので、どうしようも無い。こう考えると、日本人は本当に物事を決められない国民だと思いますね。

SNSや「推し」に幸せを見出す若者達

——若い人達は現状に満足しているのですか。

山田 優秀な人は海外に行きますね。日本は、特に地方では未だに年功序列が残っている。海外で就職した日本人について若者の調査をした事が有ります。ある女性は「パソコンも英語も出来ない中高年の親父が威張っていて、英語で海外とやり取りをしている私の何倍も給料を貰っている」と会社を辞め、海外で就職したところ数年で管理職に就き活躍していました。私のゼミにも、日本企業の内定を断って海外に行った学生が居ます。先日もテレビ番組で、看護師資格を持っている人がオーストラリアで就職したら給料が3倍になったという話が紹介されていました。日本の労働慣行では、どんなに優秀でも新入社員は能力に拘わらず給与は横並びです。今後も優秀な人材の海外流出は続いて行くでしょう。

——一方で無気力な若者が増えていると言われています。

山田 無気力と言うより、リアルな世界に希望が持てないのです。「親ガチャ」とか「実家が太い」等と言いますが、経済力の有る「太い」親の下に生まれれば苦労せずに済む。「細い」親に当たれば、バイトをして、奨学金も借りなければならない。生まれに当たり外れが有るという事ですね。結局、人口が増えず社会が拡大しない為、良い仕事の数も増えないからこうなるのです。今の親の世代は社会が拡大し、医者の数も大学教授の数も増えて行く時代に就職したので、努力すれば親の職業に拘わらず医者や学者になれた。しかし、今は良いポストは減り続け空きが無いので、親が子供の為にポストを確保しようとする。そうなると、親が細ければいくら努力しても希望が叶わない。やる気を失うのは当然です。

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