前橋 尚(まえはし・たかし)1966年長野県生まれ。91年に軽井沢建材でガラスの世界に。セントラル硝子(株)の子会社で大型特殊ガラス工事営業を担当後、2006年ガラス工事サービス(有)を設立。業容拡大に伴い日本ガラスウォール(株)を設立し、高い知識と技術で他社を凌駕。
——海外からどのように良質なガラス製品を輸入しているのですか。
前橋 2006年にガラス工事サービス有限会社を設立して、海外で生産した良質なガラスの輸入を始めました。その後、国内に販売会社を2社設立し、国内での販路拡大を図っています。輸入元は中国や韓国、フィリピン、ベトナム、UAE等で、最近はトルコでの生産も始まりました。皆さんは国内製品の方が、品質が良いと思っているかも知れませんが、私達が輸入している製品は決して国産品に引けを取りません。むしろ、国内では製造出来ない高品質の製品も作れる。勿論、海外の方がコストは安いので、国産品と同等の製品が半値程で手に入ります。
——輸入ルートは、どの様に開拓したのですか。
前橋 私達が現地に赴き、技術指導を行いました。しかも、社長や工場長に技術を伝えるのでは無く、現場に入り、日本の製造技術を直接現場で働く人に指導すればジャパンクオリティの製品が出来るという訳です。後は、それを如何に国内で販売するか、販路の問題だけです。
——他社に真似されるという事は?
前橋 話をしたところで、簡単に真似出来ません。私達は10年以上掛けて海外の製造現場の人達と付き合い、信頼関係を築いて来ました。私達の指導を受けた事で、輸出だけで無く国内の売り上げも伸ばして飛躍した会社も多い。そうした海外の工場との関係は私達の強みです。
——国内メーカーに勝てる製品を海外で生産出来るのですね。
前橋 日本人が作る製品は高品質です。決して海外に負けている訳ではありません。ただ値段が高く、海外でクオリティの高い製品を作られると、コスト的に勝てない。それに海外の工場には高性能の最新の機械が導入されていますが、日本は古い設備の工場が多いです。建築現場でガラスは安く買い叩かれてしまい、利益が出難い為、設備投資に資金を回せない。安売り競争が過熱して、大手ガラス会社の中には「もう安価のガラスは売らなくて良い」と言っている会社も在ると聞いています。海外は最新設備ですから、機械を使いこなせば、日本より良い製品が出来るのは当たり前です。これ迄せっかくの設備を十分に使いこなせなかっただけなんです。日本の高い技術を教える事で、良い設備を使ってクオリティの高い製品を作れるようになった。その点で日本は海外製品に負けています。
——差が出るのはどの辺りですか。
前橋 私達はサイズ的にも、厚み的にも、国内メーカーの限界を遥かに超える、倍位のサイズのガラスを製造出来ます。だからと言って、日本板硝子やAGC(旧・旭硝子)といったトップメーカーと競っている訳ではありません。とてもではありませんが生産量では敵いません。そうした大量生産のトップメーカーでは作れない製品を実現する事で、ビジネスにして行こうと思っています。
——具体的にはどの様な分野でしょう。
前橋 例えば環境性能ですね。今、高断熱化や自然エネルギーの活用で大幅な省エネルギーを実現した建物を建てようと、国はZEB(ゼブ)の推進に取り組んでいます。ZEBはネット・ゼロ・エネルギー・ビルの略です。実現には、夏は太陽の熱を遮断し、冬は温めた空気を逃さない高性能なガラスが欠かせません。低放射(Low‐E)ガラスと呼ばれるものですが、今、国内メーカーが作っているLow‐Eガラスは基準値をぎりぎりクリアする位の性能です。それに対し、私達が海外から輸入するガラスは、基準を大きく上回る性能が有ります。今の目標は無暖房・無冷房の家で、大学と研究を進めており、いずれ実現出来ると思います。
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