「イベルメクチンNO!」厚労省が本気?
さすがに目に余ったのだろうか。
新型コロナの自宅療養者に寄生虫治療薬「イベルメクチン」を処方し、その効果を熱く語っていた長尾和宏氏が名誉院長を務める「長尾クリニック」(兵庫県尼崎市)が行政指導を受けたとの情報が1月、急速に広まった。
「発端はクリニックのサイトの『よくあるご質問』にあった一文。イベルメクチンの処方についての質問に、『行政指導に基づき、イベルメクチンは、処方しておりません』と回答していた」(医療担当記者)
これを発見した人のツイッターの呟きが広まり、影響を受けてかクリニックはこの記述を削除。長尾氏は自身のブログで「ネットでデマが広がっているようだが、行政処分は受けたことがない」と主張した。
「行政指導」が「行政処分」としてネットで広まったのだろうか。長尾氏の弁が正しければ、「処分」はされていないのだろうが、何らかの「指導」が有った可能性は残る。
新型コロナ患者への治療薬として期待されたイベルメクチンは、その後の臨床試験で有効性が示せず、治療薬として認められなかった。ところが長尾氏は、新型コロナだけでなくコロナ後遺症やワクチンの後遺症にもイベルメクチンが効くと主張して来た。
「いずれの治療薬としても認められていないので、患者はジェネリック品を個人輸入して服用するなどして来た。個人輸入薬は偽造や品質に問題がある恐れがあり、健康被害が起きても補償は無い。厚生労働省も従来、個人輸入薬に注意を呼び掛けている」(同)
未だブログや動画でイベルメクチンを推している長尾氏。医師には保険適用外の治療や処方が認められているとは言え、健康被害が出てからでは遅い。厚労省の本気度が問われる。
自治体お墨付きで炎上した「線虫がん検査」
こちらも、「怪しげな医療」の話題である。
神奈川県藤沢市が昨年11月、ふるさと納税の返礼品に線虫がん検査キットを加えたところ、「科学リテラシーは大丈夫か」と批判される事態になっている。
線虫がん検査は、がん患者の尿の臭いを好むとされる線虫の特性を生かし、15種類のがんの可能性を判定するという検査。
生物学者の広津崇亮氏が設立した「HIROTSUバイオサイエンス」(東京都千代田区)が2020年10月、「N-NOSE」の商品名で検査キットを発売した。俳優の東山紀之氏が出演するテレビコマーシャルも展開し、「人間ドックやがん健診にハードルが高い人向けの簡易な検査として注目されている」(医療関係者)という。ところが『週刊文春』が一昨年12月、検査手法に問題があると報道。情報提供者によると、線虫の動きは陽性と陰性でくっきり分かれる訳ではなく、殆ど差が出ないという。また、CM等で「精度86%」と謳う表現にも誤解が有るとの指摘が挙がる。
これは「がん患者をがんと判定する確率」、つまりがんが有る人の約86%が「陽性」とされる事を意味し、「陽性」と判断された人の86%にがんが有る訳ではない。
又、がん患者だけの尿検体を同社に提出したところ結果が出鱈目だったという話も有る。これに対し同社は、「検査は健常者に行われるという前提で判定結果を算出している」と説明し、がん患者ばかりの尿を出した事に不満を示したが、本来なら線虫はがん患者の尿に同じ様に動く筈。検体次第で精度が変わるというのは、検査としては未熟である。
しかも検査で陽性とされても、どこのがんかを調べる為には多額の検査費が掛かるのも問題だ。返礼品がヒットして藤沢市の納税額は増えたというが、開発途上の検査に〝お墨付き〟を与えた責任は重い。
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