岸田文雄・首相が突如、「異次元の少子化対策」を掲げた事から、俄かに注目が集まっている組織が在る。内閣官房に設置された全世代型社会保障構築本部(全社本部) だ。その組織でキーマンとなる事務局長を務めるのが、山崎史郎 ・元厚生労働省社会・援護局長だ。全国民が注目する異次元の少子化対策の行方を左右するのは、山崎氏の動向かも知れない。
山崎氏は、山口県立下関西高校、東京大法学部を経て、1978年に旧厚生省に入省した。2000年の介護保険制度の成立から実施、改正に携わった事から「ミスター介護保険」と呼ばれた。 名字のアルファベットから、香取照幸・元雇用均等・児童家庭局長や唐澤剛・元保険局長と共に「YKK」とも称され、厚労省内外で名の知れた官僚の1人だ。
山崎氏と言えば、10年に菅直人政権下で厚労省として初めて首相秘書官を務めた。12年末の自民党への政権交代後、この時の印象が影響してか、事務次官まで昇任出来ず、最後は内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局の地方創生総括官で退官した。厚労省のみならず内閣府や内閣官房等での勤務も長く、永田町や霞が関等を奔走し、社会保障制度の改善に尽力して来た。退職後は18〜21年迄リトアニア日本国特命全権大使を務めた。退官後は半ば「余生」を送っていた山崎氏だったが、全社本部の事務局長という重要なポストに白羽の矢が立ったのは、岸田政権が発足して全社本部を動かすと決まってからだ。山崎氏を事務局長に推薦したのは、経済産業省出身の嶋田隆・首相秘書官と言われている。 嶋田氏は与謝野馨元財務相からの信望が厚く、菅直人政権下で与謝野経済財政政策担当相の秘書官を務めており、2人の縁は深いとされる。
山崎氏は少子化対策をまとめた『人口戦略法案』(日本経済新聞出版)という書籍を出したばかりで、事務局長への就任を一度は固辞したとされるが、最終的に引き受けている。
岸田首相が年明け早々、「異次元の少子化対策」を打ち出した為、全社本部がどの様に関わるか注目されている。しかし、その前途は多難だ。山崎氏には首相官邸から事前相談は無かったとされ、茂木敏充・自民党幹事長が国会で政府に児童手当の所得制限の撤廃を求める等、やや蚊帳の外だ。財源についても首相官邸は消費増税で賄う事を「封印」しているが、財務省は消費増税を虎視眈々と狙っている。
消費増税は厚労省内でも理解を示す向きが有る事から、首相官邸の事情をよく知る政府関係者の1人は「消費増税を求める意見が多数を占める可能性がある事から、首相官邸は全社本部で少子化対策の議論を進めるのに消極的だ」と指摘する。
とは言え、少子化対策は全社本部で議論するのが筋だ。名物官僚の山崎氏が再び永田町・霞が関 に返り咲き、社会保障畑の人達にはその手腕を期待する声が在る。出生数の80万人割れが確実で未曾有の少子化に直面する中、山崎氏がその力量を発揮出来るのか注目されている。
LEAVE A REPLY