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第154回 浜六郎の臨床副作用ノート ◉ 電撃型アナフィラキシーを救え

第154回 浜六郎の臨床副作用ノート ◉ 電撃型アナフィラキシーを救え

42歳の女性が2022年11月5日、集団ワクチン接種会場で4回目としてオミクロン対応SARS-CoV-2二価ワクチンの接種を受けた。7分後に咳が始まり、急速に呼吸症状が進展し、10分後、呼吸がほとんどできず、会話は単語のみ。12分後ピンク色の泡沫状の血痰を排出したため臥位にしたところ、16分後に心停止。接種から約1時間後に3次救急病院に到着し、ルート確保しアドレナリン静注(合計8アンプル)など処置を受けたが、接種から1時間40分後に死亡確認。

この例を薬のチェック速報版No 2081)(番外編No22))および薬のチェック105号3)で取り上げたので、その概略を紹介する。

電撃型アナフィラキシーである

厚生労働省は、上記アナフィラキシー疑い死亡例の報告を受け、再度アナフィラキシーへの対処の必要性を各自治体衛生部局に要請した。実質的に、アナフィラキシーと判断した対処である。

私もこの例は電撃型アナフィラキシーと判定する。その理由は、

1)SARS-CoV-2ワクチンはアナフィラキシーの頻度が高い(4400人に1人)4)

2)電撃型は皮膚・粘膜症状のないまま、数分〜10分以内に喉頭浮腫により気道が閉塞し、非心原性肺水腫をきたし心肺停止する。

3)肺塞栓症や急性心筋梗塞、解離性大動脈瘤など他の疾患は、症状が合わない。

4)著しい低酸素で非心原性肺水腫が起こるため、肺水腫は左心不全のみの証拠ではなく、アナフィラキシー否定の根拠にならない。

アナフィラキシーと診断しない場合の不都合

この例が電撃型アナフィラキシーと診断されなければ各種不都合が起こる。

ガイドラインの改訂がなされず、医師の認識も変わらず、現場での対処方法も改善せず、より安全な診療に向けての体制づくりがなされない状態が持続する。

そのため、今後も同様の電撃型アナフィラキシーが起こった場合、適切な治療が行われず、救命不可能な事態が持続する。

アナフィラキシー診断への異論の原因

電撃型アナフィラキシーとの診断に異論が続出する最大の原因は、アナフィラキシーガイドライン(GL)5、6)の不備である。従来GL5)のイラストが象徴するように呼吸症状の重篤さを全く伝えていない。改訂版6)でも血圧低下を最重視し、呼吸症状を軽視している。

そのため、3次救急の医師も含め、電撃型アナフィラキシーが気道閉塞で始まること、心不全がなくとも低酸素だけで非心原性の肺水腫を起こす、という知識が欠如している。

電撃型アナフィラキシーもABCの順序重視を

最重篤例は曝露後数分〜10分以内に、

A:Airway気道が喉頭浮腫のために閉塞し、

B:Breath呼吸ができなくなり、低酸素となり、低酸素性非心原性肺水腫を起こす。

C:Circulation循環不全はA、Bの結果だ。

上記A、B、Cを順序も含めて重視する考えは、Resuscitation Council UK 20217)も述べている。

今後、電撃型アナフィラキシーに適切に対処し救命を可能にするためには、ガイドラインの改訂を要する。薬のチェック95号4)で述べた原則を参照してほしい。

参考文献

1)薬のチェック速報版No 208  https://www.npojip.org/
2)薬のチェック番外編No 2  https://medcheckjp.org/
3)薬のチェックNo 105  https://medcheckjp.org/
4)薬のチェックNo 95  https://www.npojip.org/
5)日本アレルギー学会、アナフィラキシーGL2014
6)日本アレルギー学会、アナフィラキシーGL2022
7) Resuscitation Council UK 2021 https://www.resus.org.uk/

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