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第61回 厚労省人事ウォッチング 20年を超えた官民人事交流のメリットは?

第61回 厚労省人事ウォッチング 20年を超えた官民人事交流のメリットは?

 中央省庁と民間企業の間で人材を派遣し合う「官民人事交流」 という制度が有るのはご存じだろうか。一般には馴染みが薄い制度だが、厚生労働省も毎年の様に民間企業に官僚を派遣し、民間企業から人材を受け入れている。今回はこの制度の実態に迫りたい。

 制度は官民人事交流法に基づき、2000年3月に始まった。人事院によると、21年に国から民間企業に派遣された官僚は35人(前年同数)。民間企業から受け入れたのは308人(前年比60人増)に上る。受け入れ数が増えたのは、新型コロナウイルス感染症への対応の為業務が増えたのも一因という。

 21年に厚生労働省から民間企業に派遣されたのは2人。福利厚生代行大手「ベネフィット・ワン」と飲食大手「キリンホールディングス」の2社に派遣され、課長補佐級の職員らが管理職として働く。大手メーカーや金融機関など日本を代表する企業との間で2〜3年、「人材交流」する事が多い様だ。給与は同額を補償される場合が一般的だが、役職等によっては増えるケースも有るという。 

 この制度の意義はどこに在るのだろうか。人事に詳しい厚労省関係者は「民間企業側としては国の制度をより深く理解する官僚を受け入れる事で、企業の取り組みがより良くなる事も有る。国側としても定員外の人員として単純に頭数を増やせるメリットが有る」と明かす。

 更に、この関係者は続ける。「官僚としても民間企業で働く事で、今迄に無い仕事のやり方を覚える等幅が広がる事も有る。当初はパッとしなかったが、民間企業で磨かれて局長にまで出世した↘人も居る。ただ、派遣される年代で省内の期待度は変わる。30代なら優秀な人材を出すが、40代だと本省で処遇するのが難しい人が多い」と話す。

 実際に派遣された人はどう感じているのだろうか。ある厚労官僚は「民間企業は業績が悪くなれば潰れたり、給料が減ったりする場合も有りシビアだ」と民間との違いを語る。一方で、「役人ゆえの強みも有り、物事を進めるのに段取りを組み立て、理屈で固めるという癖は民間には乏しく、↖非常に役に立った」と力説する。

 ただ、このようなケースばかりでは無く、「実際には腰掛けも多い。辞めたいと言うと先ずは民間企業を経験して来いと言わんばかりに派遣される事も有る」(厚労省関係者)と言う。

 民間企業側の受け止め方はどうか。厚労省で働いた経験を持つ民間人の男性は「行政機関は馴染みが有るものの、実際にどういう事をやっているのか分からなかったので、実際に働く事が出来たのは個人の経験として貴重だった。厚労省の人はめちゃくちゃ働くなあ、というのが率直な実感」と感想を述べる。

 ただ、「実際に会社に戻って役に立ったものが有るかは分からない」と苦笑する。この男性によると、厚労省では歴代派遣された民間人だけで集まる会合が有るという。この男性は「朝早く、夜遅い国会対応が大変だったとこぼす人も居た」と明かす。

 20年の歴史を持つ「官民人事交流」だが、双方にメリットをもたらすばかりでは無いようだ。

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