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岸田内閣初の政府予算が執行

岸田内閣初の政府予算が執行

緊縮財政路線の継続、前期補正予算と一体編成

岸田内閣が発足して初めての本予算が執行された。歳入では公債金が前年比大幅減で税収が大幅増となり、前年比0・9%増の約107兆円を歳出する予算となった。岸田文雄・首相は先の自民党の総裁選で新自由主義からの政策転換、金融所得課税の見直しによる成長と分配、所得倍増計画など積極財政による経済政策を唱えていた。ところが、聞くと見るとは大違い、正に朝令暮改な予算になった。

 マスコミの反応は、「政府は22年度予算案を巡り、20日成立した過去最大の21年度補正予算(35・9兆円)と一体で編成した。執行期間から『16カ月予算』と位置づけており、コロナ禍で切れ目ない財政出動を掲げる。だが当初予算の伸びを抑える一方で、各省庁の要求の受け皿として補正予算を膨らませる手法が常態化しており、歳出の膨張に歯止めがかからない。」(2021年12月24日付 日本経済新聞)政府の手法として補正予算と連動するか、補正予算を見込んだ本予算組みが常態化しつつある様に感じる。「国の予算の膨張に歯止めがかからない。本当に必要な予算は何かを精査して効率的な支出に努めなければ、国民の将来不安は増すばかりだ。」(21年12月25日付 読売新聞)国の予算ではなく政府の国家運営に当たる政府予算だ。国家の繁栄を期す為の政府の発展的な予算執行は当たり前であり、予算とは膨張して然りである。逆に政府予算の縮減は国家の繁栄の抑止を意図するものと受け取れるのではないか。財政出動は国民にとって期待をさせる事は有れど不安が増す論調はマスコミ特有の思考だ。「当初予算案としては2年振りに国債の新規発行額を減少させるが、歳出総額の約3割を国債で賄う『借金頼み』の財政運営は変わらない。」(21年12月24日付 毎日新聞)赤字国債の発行に否定的な論調だ。

 経済発展を期す為には国債の発行は有効な手段だ。国債発行をバラマキだと言うのであれば国家の発展は見込めないし、日本と日本円の国際的な競争力の低下を招く結果になり得る。伊藤博文が初代総理大臣に就いた1885年の内閣制度発足時から現政府の国債残高は546倍(実質)になっている。それでも財政破綻は起きていない。自国通貨建ての国債のデフォルトは起き得ない事は財務省自体が認めている。新規国債の発行額は当初予算を下回るが、「歳入全体のうち国債で賄う割合、いわゆる『公債依存度』は34・3%と、依然として国債発行に頼る厳しい財政運営が続いています。慶應義塾大学の土居丈朗教授は、『国債など公債への依存度が新型コロナの感染拡大前の水準に戻ったという意味では正常化が進んだが、依然として3分の1以上を借金でまかなっていて、将来世代に負担を回さないためには依存度をもう1段下げていく必要がある。コロナ対策のためにこれまでに相当多くの借金をしてしまったので、これが今後重くのしかかってくる。光と影の部分が両方ある予算案で、まだ財政健全化の入り口に立ったばかりだ』として、これからが財政再建を進められるか、重要な局面になるという認識を示しました」(21年12月24日付 NHK)期せずして今年度予算案では公債依存度は下がっているが厳しい財政運営だと断じている。緊縮財政派の専門家を通じて、公債の発行は将来世代への負担であるかの様に伝えている。財政健全化だとか財政再建という言葉を用いて財政破綻に対する危惧を煽っている印象を受ける。この様な論調に乗せられて緊縮財政を是とすると、日本の国際競争力は低下し、国民の生活水準の維持すら困難になって行くのではないかと危惧する。当然、安全保障上の問題にも影響を及ぼす。全てのマスコミが一様に財政危機を煽る様な報道を行っている。マスコミがその様な論調に終始するのは財務省のレクチャーをそのまま報道しているからだ。

財務省が煽る財政危機の正体

 財務省は意図して国民へ財政危機を煽るようなデータグラフを作成している。一般会計歳出と一般会計歳入ではなく一般会計税収を利用し、歳出が歳入を大きく上回って借金が日増しに膨らんで行っている印象を与える様なものである。一般会計歳出には国債関連費が含まれている。一方、一般会計税収には国債は含まれていない。決算上は歳入と歳出はイコールになる。因みに、20年はコロナ対策の為に巨額の国債を発行しているが、その結果、税収も過去最高を記録している。積極的な財政出動によってコロナ禍の厳しい経済環境であっても税収は突出した伸びを示すという事が証明された事になる。

 主要国の債務残高についても、財務省は日本の国債残高が他の主要国と比較して対GDP比で膨れ上がっている様なグラフを作成している。しかしここで注意すべき点は、自国通貨建て国債ではない国はギリシャの様にデフォルトが起きないという保証は無い点だ。しかし、それは事実ではない。アメリカやイギリス、カナダは中央銀行(通貨の発行権を持った銀行)と連結した債務残高が計上されている。日本の国債残高の内、日本銀行が48%を保有している事から他国同様に日本銀行の国債保有残高を連結すると約129%になり、GDP比でイタリアやアメリカ以下の数値になるのだ。決して日本の国債残高が世界で突出して多い事はない。これは財務省が恣意的にその様に国民の危機感を煽っているのだろう。

 又、日本の長期金利はゼロ金利からマイナス金利のまま推移している。直近のインフレ率もほぼゼロだ。マネタリーベースが600兆円以上であっても金利の高騰も無ければハイパーインフレも起こっていない。15年から20年の物価上昇は2・3%に留まっている。何も変わらないのは経済発展も無いと言う事だ。財政出動がむしろ足りないのではないだろうか。

日本国債のデフォルトは有り得ない

財務省はこの様に公式見解を発表している。「日・米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」「日本は変動相場制の下で、強固な対外バランスもあって国内金融政策の自由度ははるかに大きい。更に、ハイパーインフレの懸念はゼロに等しい」

 国民に対して財政破綻の危機感を煽るのも財務省なら、日本政府の国債のデフォルトの可能性が皆無である事を表明するのも財務省だ。要するに財務省は二枚舌を使い分けている事になる。

 そもそも税とは国家運営の財源ではない。税の役割は景気の調整弁だ。市場が過熱し過ぎると税を以て冷却を図る。市場が冷え込むと積極的な財政出動と共に税の軽減で景気を喚起する。税収を主とした歳入によって政府予算が組成される訳では無いのだ。支出に適った財源を税等の歳入で充てると言う発想は管理通貨制度には必要ない。歳出に必要な概念はインフレリスクの調整である。

政府は日本銀行に国債に応じた利息の支払いを行っている。

 しかし、日本銀行は決算後に、受け取った利息分を国庫に返納している。併せて、政府は日本銀行に国債の元本の償還を行っているが、償還と同時に同額の借り換えも行っている。実質的に利払いも元金の償還もしていない状況だ。それにも拘わらず財政破綻論者が唱えるようなハイパーインフレも金利上昇の兆しも窺えない。何も起こっていないのだ。

 岸田首相は新自由主義からの転換を主張していた事から緊縮財政から積極財政に転ずるものと多くの国民が期待した。しかし、政府案は残念な事にこれ迄の緊縮財政を踏襲する形になっている。日本の経済成長率(19年)は0・9%。中国は6・1%、インドも6・1%、ユーロ圏は1・2%、アメリカは2・4%。岸田政権には積極的な財政出動で世界の経済成長に追い付いて行かなければならない。GDP世界第3位も束の間、このままでは主要先進国から置き去りにされ兼ねない。

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