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第54回「厚労省人事ウォッチング」 機能しない堀内ワクチン担当相

第54回「厚労省人事ウォッチング」 機能しない堀内ワクチン担当相
堀内 詔子氏(首相官邸HPより)

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進まないと批判が集まる中、その「旗振り役」になるべき堀内詔子ワクチン担当相が機能していない。年明けから感染力が強い変異株「オミクロン株」が国内で急拡大していったが、堀内氏が先ず取り組んだのは自身の国会答弁対策だった。前任の河野太郎自民党広報本部長のSNSでの発信にも振り回され、中央官僚からは「何をやっているんだ」と呆れた声が上がる。

 学習院大出身の堀内氏は、大久保利通の直系子孫で、実父は小林喬・元富国生命保険社長、夫・光一郎氏は富士急行の社長と、その出自は「まさに華麗なる一族」。義父で通産大臣も務めた大物議員・光雄氏が政界引退する際、社業に忙しい光一郎氏に代わって衆院選に出馬したという異色の経歴の持ち主だ。

 2012年12月の衆院選に山梨2区から出馬し、初当選を果たした。保守分裂した選挙を戦い抜きながら連続して4回当選し、厚生労働政務官や環境副大臣兼内閣府副大臣等を歴任。昨年10月に発足した岸田文雄内閣で、当選3回ながらワクチン担当相兼五輪相に抜てきされた。自民党関係者は「岸田首相と同じ派閥で女性活躍、中堅・若手登用の一環で起用されたというのが大方の見方だ」と解説する。

 前置きが長くなったが、そんな堀内氏が年始から躍起になって取り組んでいたのが国会対策だ。昨年の臨時国会で自身の答弁能力が政府・与党内から不安視された事を意識したもので、中央合同庁舎8号館の11階にある大臣室で「模擬質疑」による特訓を繰り広げていたという。指南役は同じ派閥の大先輩、根本匠衆院予算委員長と、当選同期の古賀篤厚労副大臣の2人だ。古賀氏が野党議員役に扮して堀内氏を追及すれば、厚労大臣経験の有る根本氏が助言するというもの。堀内氏は河野氏を意識しており、河野氏の国会答弁集を作らせたりもしていたという。ただ、特訓の甲斐無く通常国会でも野党の簡単な質問に答弁が立ち往生する場面も度々あり、政府内から「年末年始から作業に駆り出されたのに……。何の為の特訓だったのか」と呆れた声とも、恨み節とも付かない声が上がる。

 こうした最中、フォロワー数240万人を誇る河野氏が2月初旬、ツイッターで「堀内大臣のことをいろいろ言う人がいるが…私の時と比べてワクチンチームの人数が激減」とつぶやいた事に首相官邸が過敏に反応。急遽、各省から職員をワクチンチームに派遣した事があった。事情を知る政府関係者は「総裁選で争った河野氏のツイッターに首相官邸の中枢が過剰反応した為で、ツイッターが投稿された翌日位に人数を増やせだのと指示が下りて来たようだ。これ迄の堀内氏の不手際もこうした判断に影響したのは間違いなく、政権のアキレス腱と化している」と明かす。

 内閣府に設置されている「東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部」が3月末迄に解散する事に伴い、法律上、大臣が1人減る事が決まっている。このまま行けば浮世離れした堀内氏がその「大臣職」を解かれる事になりそうだ。ワクチン担当の業務をどの大臣が引き継ぐかに焦点が集まっていたが、霞が関から堀内氏の退任を惜しむ声は聞こえて来ない。

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