メディアが悩む「あの長尾医師」との距離
新型コロナウイルスの3回目の予防接種が進む中、「HPVワクチンの悲劇を繰り返してはならない」と医療関係者が危惧するのが、新型コロナワクチンの〝副反応〟を声高に叫ぶ医療者の存在である。その1人として最近メディアに多く露出しているのが、兵庫県尼崎市で在宅医療に力を入れる「長尾クリニック」の医師・長尾和宏氏だ。
「癌患者の看取り等最期まで自宅に居たいと望む患者に、長年寄り添って来た医師です。人柄も良く話も上手い。終末期の在宅医療は国が進める政策にも上手くマッチしており、長尾氏はメディアから引っ張りだこでした」と語るのは、長尾氏を取材した経験の有る全国紙記者である。朝日新聞の医療サイト「アピタル」や産経新聞(兵庫版)等、新聞や雑誌で連載も担当して来た。
ところが、その長尾氏を巡り、前出の記者は「最近、困った事になっている」と明かす。
この記者によると、長尾氏は新型コロナが日本で流行し始めた当初から「イベルメクチン」による治療に拘り、新型コロナの特効薬と発言して来たという。製薬企業はイベルメクチンに抗ウイルス効果が有る事は発表しているが、未だコロナ治療薬としては承認されておらず、長尾氏の治療は未承認薬の使用に当たる。
その長尾氏が最近力を入れているのが、反コロナワクチン活動なのだという。「ワクチンの接種後に歩行障害や呼吸困難等の症状を訴える患者を『ワクチン後遺症』と診断し、ワクチン接種を進める国を厳しく批判している。テレビにも出演しワクチン後遺症について解説しているのだが、患者の症状も、検査で異常が出ない事も、実際に患者を診ている現場の医師だからこそ分かると主張している事も、HPVワクチンの時とよく似ている」(前出の記者)
元々言葉に力の有る発信力の高い医師であり、これ迄の取材でマスコミ各社との縁も深い長尾氏。最近の発言には、距離を置くメディア関係者も多いという。
甘利前幹事長の火消しに走る塩野義コロナ治療薬
ようやく国内製薬会社の新型コロナ治療薬が実用化段階に入った。塩野義製薬は2月25日、厚生労働省に新型コロナ感染症の軽症・中等症患者向けの飲み薬の薬事承認を申請した。国内では米メルクと米ファイザーの治療薬が既に承認されており、承認されれば3種類目となる。
ところが申請に先立つ2月4日、自民党の甘利明前幹事長がこの飲み薬についてツイートした内容が、大炎上してしまったのである。ツイート内容はこうだ。
「塩野義製薬が開発中のワクチンと治療薬の治験報告に来ました。日本人対象の治験で副作用は既存薬より極めて少なく効能は他を圧しています。アメリカ政府からも問合せがある様です。ワクチンは5月めど治療薬は2月中にも供給は出来ます。外国承認をアリバイに石橋を叩いても渡らない厚労省を督促中です」
このツイート内容には「情報漏洩だ」と批判が集まったが、「塩野義は治験結果を既に公表しており、情報漏洩との批判には当たらない」(医療担当記者)との見方が大勢だ。
問題は「承認」について、厚労省に圧力を掛けたとも取られかねない後半部分だ。同社は治験が完了する前に実用化出来る「条件付き早期承認制度」の適用を希望しているが、これは患者が少なく治験が難しい希少疾患等を念頭に置いた制度。「もし今回、厚労省がこの制度を使って早期承認をすれば、圧力に屈したとも受け取られかねない。難しい判断に迫られている」と厚労省関係者は明かす。
塩野義製薬の手代木功社長は「非公開のデータを特別に提供したという事実はない。承認審査において、政治など外部の影響を受けることはない」と語ったが、果たして。
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