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第51回 厚労省人事ウォッチング 初の女性事務次官誕生も秒読み?

第51回 厚労省人事ウォッチング 初の女性事務次官誕生も秒読み?

 今秋の厚生労働省幹部人事で密かに注目されているのは、官房長に渡辺由美子氏(1988年、旧厚生省入省)が抜擢された事だ。女性官房長は定塚由美子氏(84年、旧労働省入省)以来だが、定塚氏は「女性登用」という側面が強かった。「豪腕」と評される渡辺氏の起用は衆目の一致する所で、厚労省で初めての女性事務次官誕生まで秒読みの段階に入ったとも言える。

 千葉県出身の渡辺氏は、東京大学文学部卒業後に旧厚生省に入省。保険局医療課長補佐や政策統括官付社会保障担当参事官室長補佐、老健局計画課認知症対策推進室長、年金局企業年金国民年金基金課長等を歴任。和歌山県企画部企画総務課長や独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)ニューヨーク年金福祉部長の他、内閣総務官室内閣参事官を務めた事もある。保険局と老健局の橋渡しをする初代の「医療介護連携政策課長」を務めた事でも知られる。医療保健担当の大臣官房審議官を経て、同期で一番早く局長級に昇進し、直近は子ども家庭局長を2年務めていた。

 渡辺氏の手腕が広く知れ渡ったのは、保険局総務課長時代(2015年10月〜16年6月)に汗をかいた「診療報酬改定」と、大臣官房会計課長時代(16年6月〜17年6月)に裏方として支えた高額療養費の見直しにおける仕事振りだろう。診療報酬改定は当時、高齢化による社会保障費の伸びを3年間で1・5兆円に抑える事実上の「キャップ」が初めて設定され、診療報酬改定作業も手探りで始まった。財務省の宇波弘貴主計官(現在は首相秘書官)と田村憲久・自民党政調会長代理(現在は自民党社会保障制度調査会長代理)の3人で改定に向けた↖絵を描き、全体ではマイナス改定になるものの、本体部分でのプラスを確保。財源を捻出する一方で医師の人件費を引き下げる方向にはせず、首相官邸や財務省、日本医師会を納得させる改定を実現させた。翌年の高額療養費の見直し作業でも、機能しなかった保険局に成り代わって難渋する与党幹部の説得に奔走し、落とし所を探った。

 厚労省職員が御しがたい根回し先をその胆力で説得出来るという事で付いたあだ名が「猛獣使い」(厚労省幹部)。こうした仕事振りは内外に知られ、今回の人事で厚労省の要となる官房長に就任するのは「既定路線」(大手紙記者)だった。定塚氏の起用は、女性登用が「趣味」だった加藤勝信厚労相(当時)の意向が強く働いたが、渡辺氏の場合は事情が大きく異なる。

 厚労省の別の幹部は「最近の事務次官は現在の吉田学事務次官(84年、旧厚生省)を除き官房長経験者だ。やはり、官房長をやるというのは事務次官になる事で渡辺氏の事務次官就任は『当確』↖だろう」と話す。二川一男氏や蒲原基道氏、樽見英樹氏と直近の事務次官経験者はいずれも官房長を歴任している。現在省内に残っている87年入省の大島一博・政策統括官も官房長経験が有り、大島氏と共に出世街道をひた走るのが渡辺氏だ。

 定塚氏は官房長時代に統計不正問題で足元をすくわれた。危機管理能力が求められる官房長という職種だが、「政策理解力が高く、判断も早い」(中堅職員)との評判の渡辺氏の動向は今後も注目されるのは間違いない。

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