「家庭外」で子どもを育む場の確保が急務に
長引くコロナ禍の「ステイホーム」のしわ寄せが、子ども達に向かっている。全国の児童相談所が2020年度に対応した18歳未満の子どもへの虐待件数は、調査開始以来初の20万件を超えた。増加幅は前年より鈍化しており、統計をまとめた厚生労働省は「感染状況との関連性はみられない」としているが、果たしてそうなのか。
「18歳未満人口が減っていく中で虐待件数自体は増加しているのだから、決して楽観は出来ない。虐待件数と同時期に発表されたもう1つの統計からも、新型コロナが家庭や子どもに与える深刻な状況が見てとれる」と全国紙記者は話す。それは「待機児童数」だ。今年4月1日時点で、認可保育所等の利用を希望しながら入れない待機児童は5634人で、統計開始以来最少となった。受け皿整備が進んだ事に加え、「コロナに感染する事を懸念して利用を控える保護者が増えたため」(厚労省)だ。
前出の記者は「小さな子どもを育てる母親はパートやバイト等の短時間の仕事をしている事も多いが、コロナの影響で飲食や接客業は軒並み雇用を減らしている。仕事がなくなり、家で子どもをみる母親が多いのではないか」と分析する。保育園や幼稚園は子どもの社会性を育むだけでなく、母親の子育ての負担を軽減させる役割がある。仕事等で外に出る機会が減り、コロナ禍でママ友同士の交流も控えざるを得ず、感染防止のため親族による子育てや家事の手伝いも難しいとなれば親も子もストレスが溜まるのは避けられない。
加えて「夫が在宅勤務で家にいるのに、家事や育児を手伝わないという妻の不満はよく聞く」と都内の40代主婦。在宅時間が増えた事で家族の不和が深刻化、虐待やドメスティックバイオレンス(DV)に繋がる恐れは高まっている。
こうした時期を1年以上も続けてきた挙句、第5波ではこれまであまりなかった子どもの感染例が増えてしまった。教育現場や医療現場も対応する必要に迫られ大わらわだ。
関東地方の小学校教員は「体調不良の児童の検査を学校で行えるようキットを配布すると言われたが、体調不良の子どもは家に帰せばいいだけ。学校で検査して陽性となった場合、感染が他の子どもに知られ、いじめに繋がる恐れがある。対応した教師は濃厚接触者にならないのか。他の児童はどこまで調べればいいのか。疑問と不安しかない」と話す。
都内の小児科医は「子どもの感染が増えたといっても、第5波は夏休み期間だった事もあり、多くは親から子に感染するケースだった。親も感染しているので、自宅療養となっても子どもの世話や看病が出来ない事が懸念される例があった」と明かす。中には「臨月の女性が感染し帝王切開で出産。子どもは感染していなかったが、女性は病状が悪化して入院が長引き、子どもは病気がないため入院させる理由がないという状況に。夫は在宅療養中で家に帰すわけにもいかず、受け入れ先を見つけるのに苦労した」(病院関係者)。
ある精神科医は「コロナ禍の生活は誰もが日常的に緊張を強いられている。ストレスを発散出来る旅行や趣味を我慢する人も多く、大人でさえ精神状態のコントロールが難しいのに、子どもはなおさら」と危惧する。新学期に入り、子どもの感染により学校や幼稚園が休みになる例も増えている。家庭外で子どもを育む場の確保が急務だ。
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